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遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.50  TOKYOROOMS展〜40の部屋、40通りの生き方〜――町野 健さん
今日もアートの話をしよう

遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.50  TOKYOROOMS展〜40の部屋、40通りの生き方〜――町野 健さん

40の「こだわり」から見える、東京のリアルな部屋づくりと住まいの本質

実業家でアートコレクターの遠山正道と、美術ジャーナリストの鈴木芳雄が、アートや旅、本や生活をテーマに対話する連載。第50 回は、日本初の「家具をサブスクする」会社、ソーシャルインテリア代表である町野 健さん。現在開催中の「TOKYOROOMS展〜40の部屋、40通りの生き方〜」を企画・主催した町野さんに、インテリアが暮らしに与える豊かさについてお話を伺った。

Text by Yoshio Suzuki
Photographs by Yuya Hasegawa

インテリア業界の「アナログな無駄」をハックする

遠山:さまざまな分野で活躍するクリエイターたちが、6畳の空間でそれぞれの世界観を表現する「TOKYOROOMS展〜40の部屋、40通りの生き方〜」が開催されています。僕もその一人として参加させてもらいましたが、高層ビルの一角に部屋をつくるという経験がとてもおもしろかったし、ほかのつくり手の部屋からもいろいろな刺激を受けました。

鈴木:本当に40人40色でしたね。

遠山:今回は、この展覧会の総合プロデューサーである町野 健さんにゲストとして来ていただきました。まず、町野さんのご活動について教えていただけますか。

町野: 僕は今、「インテリアで世界を変える」をミッションに掲げて活動しています。というのも、インテリア業界って外から見る華やかさとは裏腹に、驚くほどアナログで非効率な部分が多く残っていますし、いろいろな課題も抱えていると思うんです。

遠山:具体的にはどういった部分に課題を感じているのでしょうか。

町野:例えば、インテリアデザイナーや設計会社の方々の業務実態です。彼らのクリエイティブな時間は、実は受発注などの事務作業に8割近く奪われているという実情があります。弊社が契約している1300余のブランドについても、1社1社と契約を結び、カタログをめくって発注をかける……。この「無駄」をテクノロジーで解決したいと考え、ネット上で横断的に検索・発注できるシステムを構築しました。

株式会社ソーシャルインテリア代表取締役・町野 健さん。

鈴木:1300ブランドをワンストップで、というのは画期的ですね。

町野:ありがとうございます。一方で、ユーザー側の課題も深刻です。今の日本では「引っ越すときに家具を捨てて、新しい安価なものを買う」という消費サイクルが定着してしまっています。そこに危機感を抱き、よい家具に触れるハードルを下げるために、サブスクリプション事業も展開しています。

40の「箱」でひも解く、住み手の偏愛

鈴木:今回の「TOKYOROOMS展」は、まさにそうした町野さんの「よい家具や空間に触れてほしい」という思いの集大成ですよね。実際に40もの「部屋」を並べてみて、どう感じられましたか?

町野:正直、形にするまで各部屋の「奥深さ」がこれほどのレベルに達するとは思っていませんでした。部屋によって感じるものが本当に違うのです。企画段階では「同じ6畳の箱」という制約を設けましたが、蓋を開けてみたら、部屋によって感じる温度感や質感がまったく異なりました。形にすることで初めて、住み手の「個」がこれほどまでにあふれ出すのかと圧倒されましたね。

Room No:15「FLUID」花岡郁哉さんの部屋。
Room No:04「Inside Head」佐藤大樹 (EXILE/FANTASTICS)さんの部屋。
Room No:11「集いし渦間」くっきー!さんの部屋。
Room No:37「推しと生きる未来」Brave groupさんの部屋。

遠山:僕が一番印象に残ったのは、ベッドのすぐ横に巨大なドライビングシミュレーターがある、建築家の方の部屋かな。

町野:寶田 陵さんの部屋(Room No:23)ですね。あれはすごかった。

遠山:「起きたら1秒でサーキット」みたいな世界(笑)。普通、建築家がつくる部屋って、どこか「正解」を求めたオシャレな空間になりがちじゃないですか。でも、彼は「俺はこれが好きなんだ」という欲望に忠実で、ベッドと趣味のサーキットマシンしかない。あそこまで振り切れると、もはや清々しい。

Room No:23「サーキット徒歩1秒の部屋」寶田 陵さんの部屋。

鈴木:部屋って、ある種の「暴露」ですよね。隠しておきたい自分や、社会的な役割とは別の顔が出てしまう。都築響一さんの写真集『TOKYO STYLE』や、洋服にお金を使いすぎて生活が破綻寸前みたいな姿を描いた『着倒れ方丈記』の世界観に近い。

町野:まさにそうです。どこかバランスは悪いのですが、そこには圧倒的なセンスや愛がある。

遠山:「見せたい自分」と「隠しておきたい秘密」のせめぎ合いが、部屋という空間をおもしろくするんでしょうね。

遠山さんの「部屋」Room No:08「私のhutte(虎ノ門仮営業所)」で語り合う。

家具選びの「正解」は、価格ではなく「密度」

鈴木:町野さんはプロの視点から、今の日本の「部屋づくり」をどう見ていますか?

町野:皆さん「センスがないから」と及び腰になりがちですが、実はもっとシンプルでいいと思うんです。例えば家具選びにおいて、高い家具を置くことは必ずしも重要ではなくて、アイテム数(家具や雑貨の数)が多いことが大切だと思っています。

鈴木:アイテム数、ですか。

町野:はい。家具や雑貨の「密度」が上がれば、部屋の「質感」が劇的に向上するからです。それからもう一つ、椅子やデスク、ソファなど、体に接するものは自分の体形に合うものを徹底的に吟味すること。ここさえ外さなければ、あとは自分の好きな色で「つながり」をつくっていくだけで、部屋のレベルは格段に上がります。

遠山:なるほど。機能性と密度のバランスですね。

町野:結局、僕がこの展示を通して伝えたかったのは、「部屋づくりって、理屈抜きに楽しいよね」ということです。同じ広さでも、住む人によって感じる広さも空気も変わるので、ご来場いただいた方々にはそれを体感してほしいですね。

匿名性の高い「東京の部屋」に魂を吹き込む

遠山:展示を見ていて感じたのは、今の東京の住まいは「匿名性」が強すぎるということかな。どこに行っても同じような白い壁、同じような間取り。そこに住み手がどうやって自分の「魂」を吹き込むか。

遠山氏が北軽井沢で経営する貸別荘「私のhutte」にある、都築響一さん撮影の和室を“増築”(左壁)。好きなものに囲まれて「一番ほっとする部屋」と遠山氏は語る。

鈴木:僕は以前、日曜画家みたいな人たちが描いた花の油絵ばかりをネットオークションで集めて、壁一面に飾るという部屋のアイデアを考えたことがあって。その部屋に入るとバラのアトマイザーの香りが漂ってくるような。

遠山:それはおもしろいですね! ぜひ見てみたい。

鈴木:それぞれが持っている「偏り」こそが、東京のリアルな文化だと思うんです。他人から見れば「なんであんなものに、あんな車に、あんな部屋に」と思われるような執着。でも、それがあるからこそ、その部屋はその人の「居場所」になる。そしてそういうことができたり、許されたりするのが東京の素敵なところでしょう。

町野:効率化やシステム化も重要ですが、最終的にはその「偏愛」をどうサポートできるかというのが、僕らの重要な使命だと思っています。

遠山:今回の展示は大きな反響がありましたが、次回の構想はあるんですか?

町野:もし次回があるなら、同じフォーマットではやらないつもりです。外国人のクリエイターにも声をかけたいですし、今回の「TOKYOROOMS」という概念をさらにアップデートした、まったく新しい企画を練りたいと思います。

Room No:28-29「Vision Room」株式会社環境計画研究所さんの部屋。
「Vision Room」はリアルな空間にデジタルを融合し、すべて映像でつくり出した部屋。
「Vision Room」は天井以外の3面がモニターになっており、さまざまな映像が映し出される。

鈴木:クリエイターの選び方も含めて、次はもっと「秘密」や「狂気」のようなものが見える部屋が増えるとおもしろいですね(笑)。

町野:ぜひ楽しみにしていてください。自分はこれが好き、という感覚を大切に、自分の部屋をどういじろうか考えること自体が楽しい。そんな感覚を、より多くの人に持ち続けてもらいたい。そのためのプラットフォームをこれからもつくっていきたいと思います。

Room No:35「瞑酌〜Meishaku〜」SAWAさんの部屋。「一杯の酒を、五感で味わう。香りを吸い、温度を感じ、余韻に沈む。“酔うため”ではなく、“整うため”の部屋」というコメントが。部屋には香ばしさが漂う。
39部屋目の大きな空間は、Room No:39「即今叢:計算機自然の蒸留と発酵」 落合陽一さんの部屋。
2025年大阪・関西万博のパビリオン「null²(ヌルヌル)」と「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」(いずれも落合氏の手になる)が融合した空間。

鈴木:大きな質問になりますが、住まいとはインテリアとはどのようなものだと思いますか。私たち日本人に必要な観点はどのようなところでしょうか。

町野:アクティブな人、インドアな人によって異なりますが、部屋は非常に長い時間を共にする場です。私たち日本人はもっと部屋に投資をしてもいいのではないかと考えます。単に高級なものを置けばいいという意味ではありません。自分の個性を解放して、自分の好きなものを美しい形でひとつひとつ配置していく。その文化をもっと広め、部屋を自分らしく装飾すること。「衣食住」の衣・食には皆さん力が入っていると思いますが、「住」においても同様に、「衣食に並ぶ人のたしなみ」になるような文化に昇華させていく観点を提案していきたいと思っています。

遠山:本日はありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。

「TOKYOROOMS展〜40の部屋、40通りの生き方〜」

40部屋を巡る展覧会。アーティスト、デザイナー、建築家、華道家、エンターテイナー、インテリアブランドなど、さまざまな分野で活躍する実力派たちが6畳の空間に世界観を表現。
期間:2026.4.18 (Sat) - 2026.5.17 (Sun)
会場:虎ノ門ヒルズTOKYO NODE(GALLERY A/B/C)
▶︎https://www.tokyonode.jp/events/tokyorooms/index.html

profile

町野 建

1974年生まれ。上智大学大学院修了。日本ヒューレット・パッカードでコンサルタント、マクロミルにて経営企画、海外事業立ち上げを経験。2012年、キュレーションマガジン「Antenna」立ち上げのため、株式会社グライダーアソシエイツを創業。2016年、株式会社ソーシャルインテリアを設立し、代表取締役に就任。2018年、日本初の家具サブスクリプションサービスを開始。取り扱う家具は1300ブランド 12万種以上の取扱国内最大級のサービス。2026年4月、「TOKYOROOMS展〜40の部屋、40通りの生き方〜」を企画し開催。

profile

遠山正道

1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。

▶︎http://www.smiles.co.jp/
▶︎https://t-c-m.art/

profile

鈴木芳雄

1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

▶︎https://twitter.com/fukuhen

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