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遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.15-2 瀬戸内を旅する②
今日もアートの話をしよう

遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.15-2 瀬戸内を旅する②

香川を旅する–瀬戸内のアートと食を楽しむ旅

「Soup Stock Tokyo」を立ち上げた、実業家の遠山正道氏と、美術ジャーナリスト・編集者であり、長年雑誌「BRUTUS」で副編集長を務め「フクヘン。」の愛称をもつ鈴木芳雄氏が、アートや旅、本や生活について語る「今日もアートの話をしよう」。15回目は、四国・香川県へと出かけ、いつでも楽しめる瀬戸内のアートや食を旅した。後半では、直島を旅し、新旧さまざまなアートや施設を堪能した。

Text by Fumi Itose
Photo by Eikoh Tanaka

直島―直島銭湯「I♥湯」

鈴木:後半では直島へとやってきました。直島は瀬戸内のアート、そして近年の現代アートを語る上で一番重要な場所かもしれません。

遠山:直島はいまや現代アートの聖地とも言われていますが、もとは製錬所のある街として発展。現在も三菱マテリアルの直島製錬所があり、島の経済を支えています。

鈴木:直島は紹介すべき場所がたくさんありますが、まずは大竹伸朗さんの《直島銭湯「I♥湯(アイラブユ)」》。作品自体は2009年に制作され、現在も大人気施設です。作品タイトルのとおり、ここは銭湯です。

遠山:実際に入浴することができますが、13:00〜15:50までは浴室見学会の時間なので、行く前に要チェックです。

鈴木:この銭湯は、もともと国内外から訪れる観光客と、直島島民の交流の場となればということでつくられました。

遠山:どこをどう見渡しても、内外ともに大竹ワールド全開な建物です。

鈴木:檸檬ホテルもですが、作品ってどうしても触っちゃいけないものってイメージがあるじゃないですか。それをやすやすと飛び越えてくるのがこの銭湯。

遠山:まさか作品に入浴できるなんて。いつも思うのが、建築家がつくった銭湯やホテルと何が違うのかということ。建築家にとっても建物は作品だけど、棲み分けが全然違うんですよね。建築家はお風呂をつくっても、それに入ってもらうことが前提。そこの差を考えるのもおもしろいなと思います。

鈴木:そうですよね。普通だったら作品と呼ばれるものに入浴するなんてと思います。まあこの施設も銭湯としてつくったので、入ることが前提ではあるけれども、それでもなんだか不思議な感じがします。

写真:井上義和

遠山:普通の銭湯にもアートは実はある。国内では3人しかいないといわれているペンキ絵師が描いた富士山とかの壁画。あれももちろんアートだけど、ここの壁画はタイルに描いて焼き付けた壁画。題材も海女さんで、これまでになかった「銭湯タイル絵」がここに誕生しました。

遠山:それに普通だったらありえない、象のオブジェ「定子(さだこ)」が展示されていますからね。

鈴木:また建物自体、大竹さんの手法の一つである「コラージュ」が多用されています。日本各地から集められたさまざまなオブジェがコラージュされているのですが、その中でひときわ目立つのがこの象。この象はもともと北海道の定山渓の秘宝館に展示されていたもので、銭湯プロジェクトがはじまる10年以上も前から大竹さんが目をつけていたとか。そしてタイミングよく銭湯へとお嫁入したわけです。

遠山:ただ疲れをとるためだけの銭湯じゃないのが、この施設。象も壁画も建物も、はたまた番台から脱衣所まで。随所に大竹さんの作品がちりばめられています。見学するだけでもいいですが、ぜひ島民の方と肩を並べて銭湯を楽しみたいですね。

直島―《瀬戸内「   」資料館》

鈴木:直島の中でもぜひ皆さんに行ってほしいのが、《瀬戸内「   」資料館》。ここはアーティストの下道基行(したみち もとゆき)さんが館長をつとめる資料館です。瀬戸内、特に直島の風景や人々の暮らしの中から毎回何かしらのテーマを決めて、それについて徹底的に調査してアーカイブし、発表するプロジェクトです。今回は下道さんにも来ていただき、お話をうかがいました。

下道:この資料館は、もともと島民の娯楽の場であった「パチンコ999」を改装した「宮浦ギャラリー六区」で2019年から展開している資料館です。資料館というと、通常は市や県や国が中心になって行うものですが、僕はこの直島の地で、作家として、一島民として、捨てられてしまっているモノや記憶をアーカイブする必要性があると思い、この場所をつくりました。

遠山:以前からそういった勉強をしてきたんですか?

下道:僕は武蔵野美術大学の油画出身ですが、幼い頃から考古学が好きで、さらに大学で民俗学や考現学に興味を持ちました。卒業後は旅ばかりしていました。そこでいろんなものを見て回っていた中で、明治時代から第二次世界大戦終結まで、東アジア各地に多くの神社/鳥居が建てられたことを知り、調査するように。調査するうちに、戦争が終わったあと、コンクリートでつくられた鳥居はどうなったの、と。そうすると、南の島のジャングルの中に残されたり、台湾でベンチになっていたりするわけです。シリーズ『torii』では、鳥居が時代を経て人々の暮らしの中でこんなにも変容するのかと、とてもおもしろく感じて制作しました。

遠山:作品にしようと思いながら、調査していたんですか?

下道:シリーズ『torii』は写真作品を目指しましたが、根本では美術にしようという意識ではなく自分で調べて知っていく楽しさが強いですね。はじめは日本の古い地図を読んでいたときに、砲台の跡とかが描かれていたのが気になったのがきっかけだと思います。それをGoogleマップでいまと重ね合わせて、まだ残ってるなと見に行くと、花壇や猿山になっていたり。僕がやっているのは、考古学と考現学のはざまかも。いまの風景の表面に出てきている歴史の層のようなものに着目し、現在を見るといった感じでしょうか。

鈴木:そういうのが組み合わさって、「資料館」といういままでにない作品ができたわけですね。展示タイトルはそのときどきのテーマによって、《瀬戸内「   」資料館》の「」の中にタイトルが入ります。例えば直近だと終了してしまいましたが、春会期中には「鍰造景」という展示が開催されていました。これについても少し教えてください。

下道:2020年3月に直島に移住してすぐに、島の街並みの中に黒く鈍く光る煉瓦があることに気づき調べてみると、「鍰(からみ)」と呼ばれる素材だと知りました。存在は有名で島の誰でも知ってる。ただ、島の人に聞いても、戦前からいまに至るまで稼働する三菱の製錬所でかつてつくられたということはわかったものの、詳しいことはいまいちわからなかったんです。それぐらい人々にとっては当たり前に目にするものだということ。そこで直島の島民2名とともに「直島鍰風景研究室」をつくり、日々、鍰の風景を見つけるたびに記録し、マッピングするようになりました。そこでわかったのが、「鍰」というのは、いわゆる製錬所で出される廃棄物/不純物であるスラグであるということ。当初は製錬所から出た鍰は海や山に捨てられていたのですが、鋳型に流し込んで煉瓦にするという技術が考案され、1950年代のみ大量につくられた。そしてそれらは建築資材として使われるようになり、風景の一部として残ることに。でも、その後水砕鍰として砂状に加工できるようになると、鍰煉瓦は姿を消してしまいます。

下道:約1年間ひたすら調査と収集を繰り返しました。それで収集した写真や情報をもとに、2021年に「直島鍰風景地図」を出版。さらに、この資料館で調査結果を発表しているというわけです。

鈴木:展示は今回で3回目。その前に《瀬戸内「緑川洋一」資料館》《瀬戸内「百年観光」資料館》と二回展示があり、都度、膨大な量の資料が集まるわけですよね。

下道:そうですね。島民もですが、ちょっと島に遊びにきた人の、地方の図書館や美術館であったり、ちょっと足を止めてふらっと入って、その地のことを知ることができる学びの場にもなってほしいと思います。

下道:目の前にすでに書かれて当たり前のようになっている”歴史”は常に誰かの視点で書かれていて、常に象徴的です。僕はそういう”歴史”や象徴性のあるものの傍で営まれる、人々の普通の生活の積み重ねに興味があるのかもしれないです。わかりやすく言うと、鳥居が倒されてベンチになっている状態もそう。すでに歴史や意味を与えられた存在が、いつの間にか人々の生活がそれを超えて、自分たちの生活の一部にし、意味が変容してしまっています。だから直島の僕の作品のベースには、自分の作品を作らないようにという気持ちもある。なぜなら島のアート作品は作家の象徴性を持ったモニュメントです。だから、古いものを集めて野良研究をしている郷土史家のような立ち位置で”アートらしき”存在を作らないように気をつけています。でも、これはプロジェクト作品であるジレンマを抱えています。それはちょっと反芸術祭的な気持ちもあるのかもしれなくて、今の芸術祭や観光の波がおさまったあとに、どのくらい島の環境が変わってしまい、何が島に残っていくのか、それを芸術家方向から見せることに意味があるんじゃないかと思います。その必要性を感じながら制作しています。

遠山:その考えは重要。アートによって人々の生活は大きく変わり、いろんなことをもたらしてくれたけど、反対に失うものもあったはず。そしてもし芸術祭が何かのきっかけで終わってしまったときに、いまあるものはどうなっていくのか。

鈴木:「鍰」と同じように、なんとなくあるけど誰もそれがどうしてあるのかわからない、なんてことになりかねない。いまは情報なんていくらでも調べられる時代だけど、土地の歴史と土地の記憶と土地の人々の目っていうのは、一般に流れてくる情報とは違うから。それを土着的なところからしっかりとアーカイブするのは、ジャーナリズムにおいても必要なことだと僕も思いました。

下道:ただ、これはちゃんと言っておかなければと思うのですが、僕はただただ批判したいなんて気持ちはないんです。僕は巨大なアートの傍らで忘れられ変化していっている、島の人々の生活の積層の面白さをシンプルに見せることに楽しさや意味を感じているんです。

中村由信「郵便屋さん」(昭和 35 年 直島群島)

鈴木:今後はどういった展示を予定しているんですか?

下道:次回は、《瀬戸内「中村由信とどんぐりクラブ」資料館》というタイトルで、直島出身の写真家 中村由信とかつて三菱マテリアルに実在した「どんぐりクラブ」という写真クラブを取り上げます。製錬所にはたくさんの部活動があったんですが、その中でも写真クラブはこの資料館で一番はじめに取り上げた緑川洋一が教えにきたりと、かなり本格的だったそうです。中村由信は直島出身の写真家。昭和20年代から写真を撮り始め、自身を含む直島の仲間たちと直島を中心とした瀬戸内の島々の風景や暮らしを撮影しました。第4回目となる夏・秋会期の展示では彼の代表作「瀬戸うちの人びと」(1965)から戦後間もない直島や瀬戸内の風景をとらえた写真作品を中心に、どんぐりクラブの仲間たちの作品も一部展示します。

直島―護王神社

鈴木:直島には、この連載でもゲストとして来てくださった、杉本博司さんの作品もたくさん展示されています。まずは家プロジェクトのひとつである「護王神社」。僕はいったい何度来たことか、というぐらい来ていますが、いつ来ても気が引き締まる場所です。

遠山:先日、江之浦測候所にもお邪魔しましたが、この場所があったからこそ、江之浦測候所が出来上がった部分もあると杉本さんもお話しされていましたね。

鈴木:この神社は家プロジェクトの一つとして、2002年に公開されました。もう20年にもなることにびっくりですが、本殿と拝殿、また拝殿の地下の石室が杉本さんによって設計されています。本殿と石室は光学ガラスの階段で結ばれ、地下と地上がつながり、一つの世界をつくりました。杉本さんはこの神社を、最も古くから存在する神社の一つである伊勢神宮よりもさらに古い形式の神社があったならば、という発想のもとつくったそうです。古墳時代があり、そのあとに神さまを祀るようになるけれども、その時代は重なることがないんです。でももし重なっていたとしたらという、杉本さん独自の歴史解釈があり、拝殿の地下に古墳の石室を設けたんです。

遠山:もしかしたらあったかもしれないという空想の神社なんですね。でもそういった古代の人といまの人とのつながりというのかな、杉本さんのコンセプトや作品の根底にはいつもそういったものがありますね。

鈴木:そうですね、「海景」シリーズも自分が見た風景と古代の人が見た風景と同じものはあるだろうかと考えて制作されていますから。人や風景、建物は変わっても、海は変わらずにあるものと。

遠山:そんな杉本さんの新しいギャラリーがこの3月、ベネッセアートサイト直島にオープンしました。

直島―ヴァレーギャラリー

写真:宮脇慎太郎

鈴木:その前にご紹介したいのが、同じく新しくベネッセハウスの敷地内にできた「ヴァレーギャラリー」です。ベネッセハウスから少し離れた、その名前のとおりヴァレー(山間)につくられたギャラリーです。

Yayoi Kusama, Narcissus Garden, Stainless steel spheres, Installation View at The Glass House (New York), 2016 Copyright of Yayoi Kusama, courtesy of Ota Fine Arts
写真:宮脇慎太郎

遠山:安藤忠雄さんによる、祠をイメージした小さな半屋外建築と、周囲の屋外エリアで構成されたこのギャラリーには、池や建築の内外に無数の銀色の球が点在する草間彌生さんの《ナルシスの庭》(1966/2022年)と、小沢剛さんの《スラグブッダ88 -豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏》(2006/2022年)が展示されています。

鈴木:草間さんの作品は、1966年にヴェネツィア・ビエンナーレで展示した作品。今回は池や庭やギャラリーの中に、約1700の球が置かれました。池に浮かぶ球は風によって動き、球同士がぶつかる音が谷間に響きます。葉の音、鳥の声、虫の声、そこに人工的な金属のぶつかる音が混じるんだけど、違和感がないんですよね。

遠山:球も全部が全部同じ方向に動くわけじゃないのがまたおもしろい。どうしてかわからないけど、頑なに動かない球もいたりして。球それぞれに意識があるのかというぐらいです。

豊島(土庄町)の産業廃棄物処理の過程でできたスラグでつくられた88体の仏像が屋外に展示される。
ヴァレーギャラリーでの積石(小沢剛 2022年) 撮影:森山雅智

鈴木:小沢さんの作品はもともと2006年から展示されていたんだけど、一部改変されて再展示されています。直島にはあちらこちらの祠に収められた石の仏像があり、「直島八十八ケ所」として伝えられています。それらの仏像を木で模刻して、その型の中にスラグを流し込みつくられたもの。スラグは銅の精錬時に出る不純物。その塊というだけあって、その成分はさまざまなものが混ざり合っていろんな成分が入っています。だから焼成された仏像の色はバラバラ。

遠山:一見すると朽ちかけた古い仏像が並べられているのかと思ってしまうけど、この小さな仏像の中には、産業廃棄物といった、触れづらい島の歴史や記憶が詰め込まれているわけです。

鈴木:下道さんのお話にもありましたが、そういったことを忘れないように、語り継ぐ意味も込めて小沢さんは制作したといいます。

遠山:歴史を語り継ぐためのアートというのも、これから先必要になってくると改めて思わされました。

直島―杉本博司ギャラリー 時の回廊

鈴木:最後に紹介するのが、杉本博司さんの新しいギャラリー「杉本博司ギャラリー 時の回廊」です。もともとベネッセハウスには杉本さんの作品が展示されていたのですが、宿泊者だけが見られるものでした。今回、作品空間を拡大・整備し、誰でも訪れた人が見られる展示へと様変わりしました。

Hiroshi Sugimoto, Kegon Waterfall, 1977, gelatin silver print, 119.4 x 149.2 cm (c) Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
Hiroshi Sugimoto, Hyena-Jackal-Vulture, 1976, gelatin silver print, 119.4 x 149.2 cm (c) Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

遠山:一気に杉本ワールドになりましたよね。それに展示作品も幅広く、最初期から最新作までを見ることができます。

鈴木:そう、ここでは杉本さんのアーティストとしての歴史を見ることができます。

遠山:来てみて思ったんですが、杉本さんの作品をこれだけ見られる場所ってないですよね。江之浦測候所にもギャラリーはありますが、基本的には「海景」シリーズが展示されています。でもここは《松林図》や《観念の形 003オンデュロイド:平均曲率が0でない定数となる回転面》を筆頭に、「海景」や「劇場」などの代表的なシリーズはもちろん、デザインや彫刻などを継続的に見られます。

杉本博司ギャラリー 時の回廊 ラウンジ風景、2022年 撮影:森山雅智
杉本博司ギャラリー 時の回廊 ラウンジ風景、2022年 撮影:森山雅智

鈴木:そうですね、これほどまでに杉本さんの作品を一挙に見られるのはここだけです。展示替えはあるものの、常設で見ることができますから。しかもラウンジも一新され、こちらも杉本さんと建築家の榊田倫之さんが主宰する新素材研究所のデザイン。杉本さんらしく屋久杉などの巨木がテーブルの土台として使われています。

鈴木:唐突ですが、遠山さんは杉本作品だとどれが好きですか?

遠山:「ジオラマ」シリーズですね。その発想力には脱帽しました。あるいは蝋人形。

鈴木:蝋人形もジオラマの延長にあるシリーズですね。生命のないものをあたかも生命が宿っているかのように撮影しています。

遠山:誰でももしかしたらできるかもしれないけど、それをあそこまで作品として昇華できるのはさすがだなと。アーティストの気づきにあふれている人だなと、改めて思わされました。

鈴木:あそこまで突き詰めて撮影している人はいないですよね。ミニチュアを本物のように、本物をミニチュアのように撮影することは多いけど、それはちょっと特撮的なところもあって。でも杉本さんは対象物を(写真で撮るように)片目で見たことでリアリティが増す、色を放棄してモノクロにすることでリアリティが増す、そういったことを追求している。人間の視覚や感覚、記憶というものと、写真の特性を知り尽くした上でやっているのがすごいところです。

遠山:でも、芳雄さんってすごいよね。杉本さんの「海景」とか「劇場」を見て、いつ撮影のどの海かほとんどわかる(笑)

鈴木:それだけ頻繁にしかもたくさん見てますから(笑)

遠山:もう杉本さんを追いかけはじめて40年ぐらい経ってます?

鈴木:35年ぐらいですね。ジオラマシリーズは1988年にはじめて見て、すごい衝撃を受けました。

鈴木:杉本さんにとって直島は、江之浦測候所が生まれるきっかけのひとつです。もちろん少年時代の記憶や、杉本さんと江之浦との出会いなど、さまざまな要因はありますが、この場所も江之浦測候所とは切っても切り離せない場所です。

遠山:「夏至光遥拝100メートルギャラリー」は、瀬戸内海の島で100mのプールをつくりたいと思ったことからはじまっているともおっしゃっていました。それに同じ海を望む場所。杉本さんにとってこの場所は江之浦と似たものと感じているのでしょうか。

Hiroshi Sugimoto, Glass Tea House ” Mondrian” , 2014(c) Sugimoto Studio The work originally created for LE STANZE DEL VETRO, Venice by Pentagram Stiftung The work originally created for LE STANZE DEL VETRO,Venice by Pentagram Stiftung

鈴木:スタディや実験の場所として、杉本さんにとっても、直島は大事な場所であることは間違いありません。ヴェネツィア、ヴェルサイユ、京都で展示されてきた硝子の茶室《聞鳥庵》もここに恒久展示となったご縁もあるんですね。

遠山:本当に杉本さんの歴史そのものですね。

鈴木:江之浦測候所も杉本さんの歴史です。しかし見どころや見方、展示の仕方は江之浦測候所と直島では全然違います。江之浦測候所は山そのものや、建物と自然の調和、庭などを回遊しながら楽しむ場所ですが、こちらは杉本さんの主に平面作品を回遊しながら楽しむ場所。楽しみ方もそれぞれですが、共通するのは「回遊」かもしれません。

遠山:自然の中を回遊したり、建物の中を回遊したり。それは杉本さんが思いを馳せる「時間」や「記憶」にも結びついている気がします。

鈴木:それは瀬戸内で作品を展示している人みんなにも言えることかもしれませんね。作品を展示するには、独りよがりではダメです。風土を知り、人を知り、時間を知ること。特に杉本さんや下道さん、小沢さんはそれを自分の中にちゃんと落とし込み、そこから作品を生み出しているなと思わされた旅でした。

遠山:ただ芸術祭に足を運ぶのではなく、その土地と作品がどう共鳴し、アーティストがどう考えているのか、そういったことにも思いを馳せながら、瀬戸内を旅してほしいと思います。

Information

ベネッセアートサイト直島
公式サイト
https://benesse-artsite.jp

直島銭湯「I♥湯」
開館時間: 13:00〜21:00(最終受付20:30)
※13:00 ~15:50は浴室見学会のみとなります。
休館日:月曜日
※ただし、祝日の場合開館、翌日休館
※メンテナンス期間は臨時休館します
鑑賞料金:660円
※15歳以下310円(3歳未満は無料)
※直島島民は320円(15歳以下は210円、3歳未満は無料)
電話番号:087-892-2626(NPO法人 直島町観光協会 受付時間 8:30〜18:00)

宮浦ギャラリー六区《瀬戸内「   」資料館》
開催期間:瀬戸内国際芸術祭2022
夏会期 2022年8月5日(金)~9月4日(日)
秋会期 2022年9月29日(木)~11月6日(日)
休館日::月曜日(月曜が祝日の場合は開館。翌日休館)
開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30)
鑑賞料金:520円
※15歳以下無料

家プロジェクト《護王神社》
開館時間: 10:00~16:30
休館日:月曜日
※ただし、祝日の場合開館、翌日休館
鑑賞料金:共通チケット(「きんざ」を除く6軒を鑑賞)1,050円、ワンサイトチケット(「きんざ」を除く1軒のみを鑑賞)420円
※15歳以下は無料
※「きんざ」は完全予約制
チケット販売所:本村ラウンジ&アーカイブ

ベネッセハウス ミュージアム《ヴァレーギャラリー》
開館時間:8:00〜21:00(最終入館20:00)
休館日:年中無休
鑑賞料金:1,300円
※15歳以下の方とベネッセハウスにご宿泊のお客様は無料
チケット:ベネッセハウス ミュージアムおよびヴァレーギャラリーにて販売

杉本博司ギャラリー 時の回廊
開館時間:11:00-15:00(最終入館14:00)
休館日:年中無休
鑑賞料金:1,500円(呈茶(お茶とお菓子)付き)
※15歳以下の方とベネッセハウスにご宿泊のお客様は鑑賞無料。呈茶(別途有料)をご希望の場合は開館中にラウンジにてお尋ねください。
※一般のお客さまは要予約
https://www.e-tix.jp/sugimoto-gallery/
※ベネッセハウスにご宿泊のお客様は予約不要

profile

遠山正道

1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。

▶︎http://www.smiles.co.jp/
▶︎http://toyama.smiles.co.jp

profile

鈴木芳雄

1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

▶︎https://twitter.com/fukuhen

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