お問合せ

03-6756-0100

営業時間 10:00〜18:00(火水祝定休)

  1. R100 TOKYO
  2. Curiosity
  3. 人生を愉しむ
  4. 日本の原風景を感じて、暮らすように旅をする――「里山十帖 THE HOUSE SEN」を訪ねて
Curiosity| 人生を豊かにするモノやコトを紹介するウェブマガジン。
日本の原風景を感じて、暮らすように旅をする――「里山十帖 THE HOUSE SEN」を訪ねて
Inspiration from Travel

日本の原風景を感じて、暮らすように旅をする――「里山十帖 THE HOUSE SEN」を訪ねて

新潟の里山で村人の暮らしに溶け込む旅を

昨今、海外国内問わず旅の目的が変化してきている。名所旧跡をめぐり、名物を食べてアクティブに観光する“昭和な”旅ではなく、昔から変わらない暮らしと自然に触れられる場所で、自分のペースで過ごせる旅が人気を集めているのだ。2023年2月にオープンした「里山十帖 THE HOUSE SEN」は、まさにそんな体験ができる新しい宿泊施設。消滅の危機を迎えている貴重な新潟の古民家を後世にも受け継ぎたいという志から生まれた、一軒家の宿で過ごす非日常の滞在を味わいに旅に出た。

Text by Misa Yamaji
Photographs by Satoshi Nagare
昭和元年に建てられた古民家をリノベーションした「里山十帖THE HOUSE SEN」。

昭和元年に建てられた古民家で、暮らすように旅をする

東京駅から上越新幹線「とき」に乗って越後湯沢まで1時間30分。その後“ほくほく線”に乗り換えて30分ほど走ると、新潟県・十日町駅に到着する。取材時は3月初旬。一両しかないローカル線の車窓一面に広がるのは真っ白い雪原だ。揺られながらのんびりと眺めていると、このあたりが日本有数の豪雪地帯だということを実感する。

十日町の駅に辿り着いてからはタクシーで宿に向かう。雪が1m以上積もった田んぼの間を20分ほど走ると、民家が立ち並ぶ村落に入る。しばらくするとタクシーは黒い板壁の大きな家に止まった。ここが今回滞在する「里山十帖 THE HOUSE SEN」だという。車を降りて少々拍子抜けした。なぜなら、その家が立つ場所は村人たちが暮らす村落の一角だったのだ。

この「里山十帖 THE HOUSE SEN」は、南魚沼の人気温泉宿「里山十帖」を運営する企業・自遊人が2023年2月に古民家を再生して作った一棟貸の宿だ。ちなみに、「里山十帖」は、2014年に南魚沼郡の大沢山温泉に古民家を移築して誕生した温泉宿。四季折々の移ろいを感じる自然に囲まれ、遠くに山並みを見る絶景の露天風呂、デザイナーズ家具が配されたモダンな部屋、細かな季節ごとに命を育む地の食材を活かした料理で国内外のファンも多い。雑誌も発行している自遊人らしく、宿を“体験するメディア”としてとらえ、里山ならではの体験と発見こそが真のラグジュアリーというコンセプトを掲げている。

私もその空気感といいお湯、いい料理の大ファン。何度か訪れているため、勝手に同じような大自然に建つ“ぽつんと一軒家”を想像してしまっていたのだ。

ダイニングはキッチンと一体型。ここで料理をするのも楽しそう。

この日、取材のために自遊人の代表取締役社長の岩佐十良さんが宿の前で迎えてくれた。案内され、元々は昭和元年に建てられたという建物の重厚な扉から玄関へと入る。

そこでさらに驚いた。目の前に飛びこんできたのは、重厚な梁や柱はそのまま活かしたシックでモダンなインテリア。目の前の大きなダイニングテーブルのその先には、雪が積もった広い庭と、信濃川沿いに広がる田んぼ。そしてその奥には綿々と続く山並み。最初に目にした村落の一角という雰囲気とはまったく違う、美しい風景が広がっていたのだ。まるで先ほどくぐった扉が、別世界へ繋がる秘密の入り口だったと言われても信じてしまうくらいのギャップがそこにはあった。

キッチンの隣は、広いリビングにベルギー製のペレットストーブが暖かな炎をゆらめかせている。その奥には琉球畳の部屋もあり、三方向に窓があって開放的だ。2階にはベッドルームに、文机が置いてある畳スペースなどがあり大人6人でもゆったり過ごせる広さがある。ダイニングの椅子はセブンチェア、リビングにはピエロ・リッソーニデザインのソファ“ALPHABET SOFA PL-240-4 ”にアルネ・ヤコブセンのスワンチェア、コーヒーテーブルはイサム・ノグチなど、里山十帖と同様、名作家具がしっくりと古民家の佇まいに馴染んでいる。

吹き抜けにした2階から1階を見下ろす。名作家具が配されたリビング。
2階の琉球畳の部屋。広い窓から眺望も楽しむことができる。
2階の寝室の壁の柱や天井梁はもとの古民家のまま。

美しい眺めに、趣味の良いインテリア。とても素敵な宿だけれど、どうしてこの地に古民家の宿を作ったのだろうか?

岩佐さんにこの宿をつくった理由を聞いてみる。

「『里山十帖』は、取り壊される寸前の築150年の古民家を活かせないかという相談を受けたことがきっかけで誕生しました。新潟に古くから残る古民家は、豪雪地帯の暮らしを今に伝える重要な文化です。しかし、維持保存には労力がかかり、消滅の危機にさらされています。貴重な古民家を後世に受け継ぎたい、そんな思いから2014年「さとやまから始まる十の物語」をコンセプトに「真に豊かな暮らし」を提案し、「体験するメディア」として『里山十帖』を開業しました。『里山十帖 THE HOUSE 』はそのプロジェクトから続く新しい体験の提案です」と、経緯を教えてくれた。

岩佐さんの元には、こうした古民家の保存についての相談が度々舞い込んでくるという。今回のこの古民家との縁は、里山十帖でいつもお米を買っている米農家の羽鳥寛平さんが繋いでくれた。「家の隣の古民家が、近々取り壊しが決まっているが持ち主の方が大切に管理をし、非常にきれいなので取り壊すのはもったいない。なにかできないだろうか」と岩佐さんに相談を持ちかけた。そこで現地を見ると、話の古民家は地域の中でもシンボルとなるような立派な家だった。そこでこの古民家を「里山十帖」とは違う“体験できる一棟型の宿泊施設”にしよう、そう思い譲り受けることを決めたそうだ。

吹き抜けを見上げれば、約100年前の堂々とした梁が古民家を支えている。

再生するにあたり、極力使える部分、古くて良い部分を残し、現代の暮らしやすさや快適性を追求した、と岩佐さんは話す。

たとえば古民家の良さの一つに、立派な梁や柱が長い年月の間に、囲炉裏の煤などにさらされてつくられたなんともいえない黒い風合いが挙げられる。一方、寒さを防ぐために開口部がそれほど大きくない昔の建物は、その黒い壁ゆえに室内が暗いというデメリットもあった。そこで骨組みは変えずに、古民家らしい風合いを生かし、梁や柱と同じトーンの色で壁や床をリノベーションしつつも、壁だったところを打ち抜いて窓ガラスにし開放的な空間にしたという。さらに、家の中から先に広がる景色を楽しめるように庭を増設。旅人がこの家で滞在を楽しめるようにと、サウナ小屋も新設された。

こうしてこの地に97年間建ち続けてきた古民家に、新しい命が吹き込まれ、時代に合わせた楽しさも兼ね備えた宿として生まれ変わったのだ。

「この宿は、自分の家のように過ごしてほしいのでスタッフは最初の案内だけです。あとはゲストが思い思いに過ごしていただければ。庭のサウナは最高なので、絶対に入ってくださいね」そう言い残して帰っていく岩佐さんのおすすめ通り、一息ついてから、まずはサウナを楽しんでみることにした。

庭に新しく建てられたサウナ小屋は大人の秘密基地。

雪を踏みしめながら到着したサウナ小屋の横には、湧水を汲み上げた美しいヒノキの水風呂と外気浴用のデッキがある。そして、木立の向こう側には雪に覆われた平原と山が望める。まるでどこかのプライベート温泉のような雰囲気だ。サウナー上級者であれば、温まった体をヒノキの香りがする水風呂に浸して極上の“ととのう”体験ができるだろう。

屋外のフィンランドサウナ。定員は6名。
屋外サウナの水風呂。ヒノキと周りの木々の香りに包まれてととのう。

しかし私は、まだ“整う”ことに目覚めきれていないサウナ初心者。水風呂は無理かもしれないけれど絶景のサウナは気持ちよさそうだ。そこで、同じくサウナ初心者の友人とともにサウナポンチョをかぶって、小さなくぐり戸をくぐってサウナへ入ってみた。

熱気とともにフワッとヒノキの清々しい香りに包まれる。実は普通のサウナは長時間入っていられないのだが、ここは格別。座った目線の先には、どこまでも広がる雪が見せてくれる白い世界。真ん中に熱せられているサウナストーンにアロマ水をかけるロウリュウをしながら室温を上げて80度くらいに保つが、絶景効果もあるのかまったく苦しくならない。二人で端っこに陣取り、それぞれ寝そべりながら汗をじっくりかいていく。暑くなったら外に出て外気浴。それを繰り返していたら”ととのう“気持ちがわかったような気がした。

この日の気温は3度。雪景色の中水風呂に入る勇気はなかったけれど、目の前に見える樹木が緑に染まる頃にまた訪れたころなら水風呂もきっと気持ちいいに違いない。早速再訪を心に誓う。

地元のお母さんたちと交流する食事

さて、サウナで整ったらお腹が空いてきた。こちらに宿泊したらゲストは好きに食事をプランニングできる。近くのマルシェで野菜や肉を買って自分たちで料理をすることもできるし、十日町の日本料理店へケータリングをお願いすることも可能だ。今回は宿のプランの一つである、地元のお母さんが準備してくれる『里山十帖特製鍋』プランをお願いしてみた。

夕食を宿にお願いすると、近隣のお母さんたちが協力してゲストのお世話をしてくれる。地元の人と自然と交流できるのが楽しい。
里山十帖と同じ方法で炊き上げるご飯。お茶碗などの器は近隣の蔵に眠っていたものなどが使われている。

時間になると割烹着を着たお母さんが一人訪ねてきた。「夕飯をご用意しますね」と手際よくキッチンに土鍋をセッティングし、鍋の準備と、炊き立ての土鍋ご飯の用意をしてくれる。「お母さんは近所の方ですか?」と聞くと、ほんの少し行った先に住んでいるという。美しい雪景色に感動したと伝えると、「今年は本当に雪が少なくて。いつもなら3メートルは積もっているかな。今年はあったかいですよ」と教えてくれた。

そんなふうにおしゃべりをしているうちに、すっかり夕食の支度が整った。華やかな食卓に思わず歓声を上げる。料理を引き立てるクラシックな染付の器は、近隣の蔵から出てきたものだそうだ。味噌漬けチーズやテリーヌなどをつまみながら、お酒を飲んでいると、誰かの家におじゃましているような懐かしい気持ちになる。

この日のメニューは猪と鹿のテリーヌほか「伊友集落のお母さんのおつまみ3種」、里山十帖で作る、からしなます、車麩などの「取り回し鉢」、白菜や雪国舞茸、アスパラ葉、越後もち豚などが入る「常夜鍋」。

卓上に並ぶ素朴なお惣菜や鍋も魅力的だが、何よりのご馳走は、日本一の米どころの炊き立てのご飯。お米はもちろんお隣の羽鳥さんのもの。鍋を始める前に炊き上がったというので、最初の一口をよそっていただくことにした。土鍋を開けると、清らかな水を吸い込み、ふっくらと炊き上がったコシヒカリが白く輝く。しゃもじでほぐすと立ち上る湯気の香りにうっとり。ひと口食べれば言葉を失うほどのおいしさだ。

気心の知れた友人との常夜鍋を囲みながらの夕食は、ドレスアップして訪れるファインダイニングとはまったく違う魅力がある。温かな料理と空気に話も弾み、あっという間に時間も過ぎていく。

日没前のマジックアワーに染まる「里山十帖 THE HOUSE SEN」。もともと立派な古民家だったことがわかる。

滞在中に十日町のアートと自然に触れてみる

この日の朝食。いわしの生姜煮、ひじきの煮物、切り干し大根、牛のしぐれ煮などのお重、自分で作る煮干しと昆布の味噌汁、十日町の村山さんが育てた新鮮な卵、羽鳥さんのご飯。

翌朝は、野鳥の楽しそうなさえずりで自然と目がさめた。外に出てみると田んぼがあった場所に雲海が広がりなんとも幻想的な景色だ。

昨日とはまた違う風景を見ながら、朝ごはんまでゆっくりと過ごす。朝ごはんも、近所に住むお母さんが運んできてくれる。約束の8時になると、昨夜とはまた別のお母さんがやってきた。夜と同じように土鍋でご飯を炊いてくれて、里山十帖特製のごはんのおともを準備してくれる。おいしい白いご飯をおかずや、味噌汁などと頬張れば、素朴ながら体に沁みる味わいに日本人に生まれてよかったと思える。

さて、この日は朝食後にクルマで15分ほどの「光の館」を訪れてみることにした。実は十日町は2000年から開催されている「大地の芸術祭」のメイン会場となっている場所。通年訪れることができる常設の展示も多く、なかでも、ジェームズ・タレルの「光の館」は2000年に作られて以降国内外からここを目的に訪れるファンがいるほど人気のアートだ。

「光の館」、12.5畳の和室「アウトサイド イン」。外来ゲストはこのほかに、浴室など内観の見学が可能。

豪雪地帯の地域伝統様式に則って建てられた「光の館」は “光のアーティスト”と言われるジェームズ・タレルが、『陰翳礼讃』からインスピレーションを受けたもの。15時以降は、「光の館」の宿泊者だけしか建物に入ることは許されないが、11時から14時までは外来のゲストも訪問可能。実際に和室の屋根の部分が開閉する「アウトサイド イン」を見ることができる(雨天時は不可)。

この日は幸運にもゲストは私たちだけだった。早速畳敷きの室内に寝転び、屋根をスライドさせて現れる天井に四角く切り取られた空を見る。タレルが“障子、床の間など日本人にとって親密な語彙を用いながら、自然光と人工光を調和させ、「陰翳の美」を創り出した”という空間での体験は、目の前に見えている世界が現実か幻なのか、わからなくなるような不思議なものだった。詳しくは割愛するが、訪れなければ感じられない体験が待っているので、ぜひ訪ねてほしい。

ぶなの木の原生林が美しい、「美人林」。雪景色の冬もいいが、緑が溢れる夏もおすすめだ。

さて、チェックアウトの準備をしようと「光の館」から宿に戻ると、思わず“ただいま”と声を出すほどにこの建物に親しみを持っている自分に気がついた。1泊2日の間、ほとんど観光をせずこの古民家で過ごし、時間の移ろいごとに見せる景色を眺めながらサウナに入ったりご飯を食べたりしただけなのにまったく時間が足りない。もう帰らなければいけないと寂しささえ感じる。それはきっと村の一部となっている古民家で、村人たちと触れ合いながら暮らすような体験をしたからだろう。

「里山十帖 THE HOUSE SEN」を訪れるなら最低2泊以上してほしい。近隣には魅力的な温泉も多くあるし、ここのゲストは里山十帖のお風呂も入ることができる。二日目の夜は住人になった気分で買い物をして料理をしてもいい。昼間時間があればクルマで30分ほどの樹齢100年のブナ林の原生林の散策もおすすめだ。

この宿には「煌びやかなもの」は何一つない。けれどまごうことなき自然の美しさと、歳月が紡いできた歴史と、暖かな人との交流がある。そして、それらに囲まれて滞在することで本当の豊かさとは何か、改めて感じることができるだろう。

Spot information

里山十帖THE HOSUE SEN
新潟県十日町市伊勢平治13-1
▶︎https://satoyama-jujo.com/thehouse/sen/

光の館
▶︎https://www.hikarinoyakata.com/

美人林
▶︎https://www.tokamachishikankou.jp/spot/bijinbayashi/

R100 TOKYO THE CLUBに会員登録
THE CLUB

R100 TOKYO THE CLUB

厳選された情報を会員様のみに配信

THE CLUB(入会費・年会費無料)

自社分譲物件をはじめ厳選された100㎡超の物件情報や、先行案内会、イベントご招待など、会員様限定でお届けします。

人生を豊かにするモノやコトを紹介するウェブマガジン。