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カーサミア河口湖で出合う、本当の豊かさを育てる住まい
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カーサミア河口湖で出合う、本当の豊かさを育てる住まい

日本のライフスタイルに合わせて育て直した、イタリアの暮らしの知恵

富士山麓・標高1030mの森の中にある「カーサミア河口湖」。日本のモダンファニチャーのトップブランド、アルフレックスが1987年に建設し、38年の時を経て昨年リニューアルオープンした。異なるコンセプトを持つ3棟のモデルハウスを巡りながら、“真の人間らしい生活”について再考した。

Text by Hiroe Nakajima
Photographs by Takuya Furusue

イタリアでの経験が端緒を開いた「カーサミア河口湖」

4500坪もの敷地を有する「カーサミア河口湖」は、アルフレックス ジャパンが、豊かな暮らしのあり方を提案するために設立した施設だ。カーサミアとは、“私の家”を意味するイタリア語だが、そこには創業者の保科 正氏の思いが込められている。

豊かな緑に囲まれた「カーサミア河口湖」。アルフレックスのものづくりを紹介する展示スペースがある「サテライト棟」もある。

大量生産、大量消費の高度経済成長の渦に取り込まれていた1960年代初頭、「本当の豊かさとは何か」という疑問を抱いた保科氏は、当時働いていたアパレルブランド・VAN JACKET(ヴァンヂャケット)の宣伝部を辞め、イタリアへ渡った。ミラノで偶然アルフレックスのショップに出合い、そのクリエイティビティに未来を感じて家具づくりを学ぶことに。家具へのこだわりはもちろん、イタリアの人々が心から暮らしを楽しむ姿を目にし、日本にもこのライフスタイルを届けたいという強い思いが湧く。その熱意がアルフレックス社を動かし、世界で唯一の輸入販売権を得て、オリジナル家具の開発・製造・販売権も託されることになった。そして1969年にアルフレックス ジャパンを設立し、四谷の小さな作業場から事業をスタートした。

当初、アルフレックスの家具はサイズ感も価値観も日本では受け入れられなかった。しかし、日本人の暮らしを変える新しい住まいの必要性を信じ、保科氏は提案を継続する。1970年代に入ると徐々に人々のライフスタイルが変化し、家族がくつろぐリビングでは、大きなソファが求められるように。コンパクトな住宅のためのアイテムなども独自で生み出し、徐々に同社の真価が発揮されることになる。 

1980年代、日本がバブル経済に沸くなかでもアルフレックスの思いは変わらず、「心から暮らしを楽しみ、住まいを大切にし、人と人が豊かに関わり合うこと」を理念の中心に据えた。保科氏が持ち帰ったのは家具そのものではなく、「暮らしを楽しむ」というイタリアの価値観だった。アルフレックス ジャパンは、その思想を日本の住環境や感性に合わせて解釈し、日本で育て続けてきたのである。

その本質を表現するには、都会の小さなショールームだけではなく、生きた空間のなかで暮らしの風景を丸ごと体感できる家が必要だった。たどり着いたのは、富士山麓の山梨県鳴沢村。かつて保科氏が訪れたミラノの北部・コモ湖周辺に広がるブリアンツァという田舎町とこの地が重なった。そして1987年、五感で暮らしを体験でき、理想のライフスタイルを提示するための場所として、「カーサミア河口湖」が完成した。

時間帯ごとに心地よい自然光が差し込む、コミュニケーションが生まれる住まい

「カーサミア河口湖」には「A棟Sunlight House」「B棟Heritage House」「C棟Terraced House」という3棟のモデルハウスがある。すべて実際に水回りも機能し、生活が営める空間となっている。昨年のリニューアルでは、そんな生きたモデルハウスという前提はそのままに、“継承していきたいもの”と“手を加えたほうがよいもの”を慎重に見極め、丁寧な工事を行ったという。

3棟のなかで最も変化したA棟は、時間帯ごとに気持ちのよい自然光が室内に差し込むよう、間取りや角度が計算された住宅だ。

外壁のペールグリーンのタイルが周囲の自然と溶け込み、家の内と外がつながっているような感覚がある。

1987年当時の設計を担当したのは、海外で活動していた建築家の榎本純子氏。ヨーロッパの住宅感覚がある人を、というのが起用の前提にあったという。

1階は扉や仕切りのないオープンな構成ながら、床の高低差や角度に変化をつけたことで、目線や気分の移り変わりを楽しむことができる。また、日本の従来の習慣のように”ただ南に窓をつくる“というのではなく、時間帯ごとに気持ちのいい自然光が建物に入り豊かな緑を室内からも楽しめるよう、開口部を広く設計するなどの工夫がなされている。

大きな窓から緑を望むダイニングルーム。木々の色とリンクするように緑色のアートを壁に設置している。

この家に住まう人のイメージは、40代夫婦と子ども1人のファミリー。両親から受け継いだ家をリノベーションしたという想定で、大きく変えたのはキッチン。家族の中心にキッチンがあることにこだわり、独立型だったキッチンをオープン型に変更。友人や両親を招いてみんなで食事と会話を楽しめるよう、キッチン、リビングダイニング、テラスに、季節や用途ごとに使い分けられる3つのテーブルやカウンターを配置している。

家族の中心にあるキッチン。料理をする人、食事をする人が同じ空間で時間を共有できる。
室内とテラスに同じ床材を使うことで、空間のつながりを演出している。
独立型キッチンがあった場所は、ランドリーに隣接する作業スペースに生まれ変わった。

2階は天窓から光が注ぐサンルームを中心に、子ども部屋、書斎、夫婦の寝室とバスルームがあり、どの部屋も窓から木々を望むことができる。夫婦の寝室にあるバルコニーにあるチェアとスツール&テーブルは、イタリアのアウトドア家具ブランド「FAST(ファスト)」のもの。光と影が織りなす表情豊かなデザインで、彫刻的な存在感をもたらしてくれる。

階段を上がると現れるサンルーム。天井から自然光が差し込む、くつろぎの空間だ。
子どもが成長しても使えるように、家具はあえてシンプルなデザインを設置。
書斎にはレザー張りのデスクを置き、落ち着きのある空間に。
南向きに大きな窓がある夫婦の寝室。バルコニーでもくつろげる、眠るだけではない空間。

この心地よい空間に置かれたアルフレックスの家具は、カスタムメイドのデスクや収納もあるが、定期的に新しい自社プロダクトに置き換えられる。取材時はウォルナットやオークなど素材の風合いをを活かしたナチュラルな仕上げでまとめられており、心落ち着く室内が演出されていた。

おもてなしとプライベートが共存した洗練の空間

B棟はセミリタイアした60代夫婦の2人暮らしを想定したモデルハウスだ。重厚感のある建築と経年変化の味わいを生かしながら、内装はイタリアモダンの洗練されたスタイルにリノベーションされた。

ヨーロッパの典型的なスクエア型住宅を再現したB棟。

1階は多くのゲストを招くことができる社交スペース。リビングルームを中心に、キッチンやダイニングがつながる回遊性のある間取りだ。内装材や建具には自然素材が多用され、経年変化が楽しめる。

B棟に設置されている家具はすべて「モルテーニ」のもの。モルテーニのVMDチームによる完全監修のもと、インテリアをイタリアモダンにアップデートした。都会的な雰囲気の家具とクラシカルな建築が融合した、成熟した大人のための空間だ。
ゲストをもてなすダイニングはリビングやキッチンと空間を仕切ることなくゾーニングを分けるだけで、隠れ家レストランのような雰囲気に。
ゲストをもてなすダイニングの隣に位置するキッチンと、夫婦2人で食事をするための空間。木製の窓枠が額縁のように風景を切り取る。

7m近くある吹き抜けのエントランスは圧倒的な開放感。ドアや窓などの建具は1987年の建設当時にイタリアから輸入したものを、そのままメンテナンスして使っている。壁はイタリアの職人が手掛けたヴェネチアンスタッコ仕上げ。独特のツヤとムラ感のあるテクスチャーが間接照明の光を受け、空間に奥行きを与えている。エントランスの大理石やヘリンボーンの床も建設当時からのもので、経年によって味わいが深まり、優化していることが分かる。

玄関を開けると広がる、贅沢な空間のエントランス。
エントランス上部にあるガラス窓には乳白色の希少なヴェネチアンガラスを使用している。

2階は夫婦でくつろぐラウンジ、主寝室、ゲストルーム。各所に「ヘリテージ」をテーマにセレクトされたイタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの復刻家具やアイコニックなチェア、テーブルなどの名作家具が置かれている。階段からゲストルームはカーペット敷きにしてエリア分けをするなど、プライベートもゆったりと時を過ごせる住まいとして、各所に細やかな配慮がなされている。

寝室の脇にあるラウンジは、夜眠る前のひとときなどに夫婦でゆったり過ごすスペース。
寝室の窓側にジオ・ポンティのデスクやチェストを配し、書斎スペースに。
ジオ・ポンティの復刻作品のアームチェアやテーブルをゲストルームにも配置。

時間に合わせた光の演出で生まれる、温かい雰囲気のテラスハウス

C棟は集合住宅を提案するための2棟で、そのうちの1棟は、50代夫婦と子ども2人の家族の暮らしをイメージ。平日は都心で忙しく過ごしながら、週末は自然に囲まれた環境で時間を過ごすウィークエンドハウスとして設計されている。

C棟は集合住宅を提案する2棟のモデルハウス。周囲の自然となじむレンガ積みの外観。

外階段を上がり2階に足を踏み入れると、床は素焼きのテラコッタが敷かれている。インテリアは独自の審美眼でセレクトした民芸品とモダンアートのミックス。キッチンはアイランド型にリフォームされ、料理、食事、片付けまでをスムーズに行えるダイニングとの一体型になっている。

この家で実に特徴的なのが照明の使い方だ。天井にダウンライトはなく、置き照明やウォールライトなど必要最小限の照明で構成されている。日中は大きな窓から光を取り入れ、夜は過ごす場所や過ごし方に応じて光の強弱を調整しながら、就寝までの時間をリラックスして過ごす。テラコッタの床に、天然木のテーブルやフレームチェア、ラグやアートをアクセントにすれば、温かみのある空間が生まれ、自ずと心が緩む。

昼はリビングとダイニング両方の窓から自然光がたっぷり差し込む。夜は照明を落とし、キャンドルをともせば、心が安らぐ空間に。冬は暖炉に火を入れて薪火(まきび)の音を楽しむことも。
夜のダイニングは、料理を照らすペンダントライトとキャンドルでも十分だ。

2階には、家族やゲストとのコミュニケーションスペースにもなるライブラリーのほか、夫婦の寝室含め3つの寝室があり、週末をゆったり過ごすイメージが膨らむ。いずれも室内にはダウンライトがなく、ブラケットライトとデスクライトの間接光で設計されている。

オープン棚のあるライブラリーには、アルフレックスのシグネチャーソファ「GABBIANO(ガビアーノ)」が置かれている。「GABBIANO」は1974年から17年間販売され製造終了となるも、当時の設計思想はそのままに今年復刻した(EC先行発売中)。
寝室にもダウンライトはなく、フロアライトやデスクライトの明かりでリラックスした空間を演出。

豊かさを形づくるのは、暮らしに寄り添うインテリアと穏やかな住空間

創業者・保科 正氏がおよそ60年前に学んだ、イタリアに暮らす人たちが大切にしている「豊かな暮らしの継承」「家族と共に食や対話を大切にする文化」「空間と光へのこだわり」。アルフレックス ジャパンは、これらを日本の暮らしに根づかせるため、「日本の住環境に寄り添うサイズ感」「日本独自の改良・改善の精神」「何年後でも対応できるメンテナンス」という物差しを片手に、創造と工夫を繰り返してきた。この2つの文化の統合が、同社がアイデンティティとして掲げる「イタリア生まれ、日本育ち」という合言葉となり、対となって発展しながら独自のポリフォニー(多声音楽)をつくりあげてきたことが分かる。

2025年に生まれ変わった「カーサミア河口湖」には、そんなアルフレックスの哲学が凝縮された、“生きた家”を体験できる場だ。建築やインテリア、アートなど、さまざまな総合提案がなされているだけではない。部屋の窓から望むみずみずしい緑や、テラスで鳥の鳴き声を耳にしながら食事を楽しむ時間など、美しい自然と共生しながら豊かな時間をつくりあげていく喜びも教えてくれる。自分自身がどのような環境に心地よさを感じ、どのようなものに惹かれるのか、そうした反応を楽しみつつ、各自が思い描く「豊かな暮らし」の造形が浮かびあがってくるのではないだろうか。

今回、3棟3様のモデルハウスを巡り、真の人間らしい生活には、自分を取り巻く家族や友人との豊かな時間、それを可能にする穏やかな住空間とそこに寄り添う愛着の持てるインテリアが不可欠であることに改めて気づかされた。事前予約制でモデルハウスを体感できるので、ぜひ足を運び、豊かな暮らしの本質について思いを巡らせてみてはいかがだろう。

アルフレックス ジャパン
▶︎https://www.arflex.co.jp/

カーサミア河口湖
▶︎https://www.arflex.co.jp/casamia-kawaguchi-ko/
モデルハウスを実際に体感できる、事前予約制の見学会「オープンデー」を不定期で開催中。

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