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ウッドヴィル麻布 新コンセプトルーム インタビュー<br>第1回 建築家・芦沢啓治氏
ウッドヴィル麻布コンセプトルームに迫る

ウッドヴィル麻布 新コンセプトルーム インタビュー
第1回 建築家・芦沢啓治氏

「主張しすぎることなく暮らしに寄り添う住まい。野暮ったくないけれどとんがりすぎない、その匙加減が大切だと改めて感じました」

一棟リノベーションで現在も徐々に生まれ変わりつつある西麻布のヴィンテージマンション「ウッドヴィル麻布」。今年の年末に竣工予定の新たなコンセプトルームでは、建築家・芦沢啓治氏が内装からオリジナル家具、アート、スタイリングまでトータルで提案。そのコンセプトルームに込められた思いやこだわりを、全4回にわたり紹介していきます。第1回は真に上質な住まいを仕立てるその「上質」の意味を、芦沢氏とともに考えます。

Text by Asuka Kobata
Photographs by Takuya Furusue

風格ある既存建物とリンクさせ、本質的な豊かさを描く

西麻布の緑豊かな高台に位置する重厚なヴィンテージマンション。庵治石が印象的に配されたゲートから日本庭園を思わせるアプローチを進むと、組子が美しいモダンなエントランスドアが迎えてくれる。1988年に外国人向けの高級賃貸住宅として誕生し、最上級のステータスを保ってきたオーセンティックなマンションが、歴史と風格を受け継ぎながらも新たな魅力を備え「ウッドヴィル麻布」として生まれ変わった。2017年に共用部が竣工し、その後、各部屋も整いつつあるなかで、新たなコンセプトルームの企画・デザインを担当したのが建築家の芦沢啓治氏だ。設計・インテリアデザインだけでなく、オリジナル家具のデザインやアートのセレクト、スタイリングまでも手掛け、このマンションにふさわしい住空間をトータルで提案している。

「今回のリノベーションは、我々がベースのプランをつくり、デンマークの建築・デザインスタジオ、NORM ARCHITECTSに監修してもらうかたちで設計を進めました。彼らとは、リビタさんが手掛ける「リアージュ砧テラス」で以前も協働し、心地良く住まうための一つのかたちを提案しました。そしてそれが、日本とスカンジナビアが融合した「ジャパンディ」スタイルの住まいとして、驚くほどに注目を集めたのです。今回は以前にも増して話し合いを重ね、マンションそのものが持つ価値や約240㎡のゆとりある面積といった条件と向き合いながら、見た目だけで上質感を出すのではなく、本質的なところで快適に感じられる住まいを追求しました」

玄関扉を開けるとまず広がるのが、落ち着いたトーンでまとめられたエントランスホールだ。マンションとは思えないほどにゆったりと確保されたホールが、この住まいの豊かさを象徴している。

 

「ウッドヴィル麻布は共用部分も各部屋も面積がゆったりと確保された贅沢な造りで、約30年前ならではの豊かさや、時代を経ても変わらない品の良さが感じられました。それにふさわしくキリッとしつらえられたアプローチを抜け、明るさを抑えたムードのある共用廊下を経て部屋へとアクセスする。その連続性を大切にしようと考えて設けたのがエントランスホールで、我々は「エントリースペース」と呼んでいます。通常、玄関とリビングやダイニングをつなぐ役割を果たすのは廊下になることが多いですが、廊下はあくまでも廊下です。そうではなく、パブリックなアプローチがぶつかる場所、そしてパブリックとプライベートを中和する場所として、気持ちを整えるイメージで「スペース」を確保しました」

特別なことをしない、本当の意味での上質感

さらに共用部との連続性を意識したのが、内装に使用している素材や色のトーンだという。共用部に合わせて全体的にトーンを暗めに抑えることにより、マンション全体がひとつの建築であり、自分の住まいであることを自然と感じられるようにしている。今回のコンセプトルームは三面が外部に面するため自然光がどの部屋にも回り込み、インテリアのトーンを抑えても暗くなりすぎず落ち着いた印象になると考えた。

 

「西麻布という立地で約240㎡もの面積があれば、もちろんそれなりの価格になります。それに見合う価値をきちんと感じられる空間にしなければと考えました。入った瞬間に、この住まいの価値がメッセージとして伝わるようなプランや素材、照明などを探りました。しかし、特別なことをしたわけではありません。むしろ、余計なことをしないようにしました。素直に美しい材料を選び、正しいディテールで納め、適切な照明を配置する。そうすることで必然的に、心から快適だと感じられる本当の意味で上質な空間が生まれると思っています」

 

たとえば素材でいうと、触れると気持ちが良く美しい自然の材料を基本に選んでいる。木材や石材、天然石と石灰だけを使った左官材、ウールやリネンといったテキスタイルなどだ。

「この空間に対する作法として、本物の自然の材料をふんだんに取り入れました。よく、建物が立派なのに安っぽいパネル看板が置かれている公共建築を見かけますが、ちぐはぐで気持ち悪さを感じるんです。そこには空間へのリスペクトがないし、もったいないことをしている。そういった「ちぐはぐ感」が出ないように、素直に本物の美しい素材を一つひとつ丁寧に選んでいます」

 

住宅の場合は、あっと驚かせるような仕掛け、「これでどうだ」と主張するような空間をつくる必要はまったくないと話す芦沢さん。もちろんリノベーションのため、思わぬところで壁が取り除けなかったり、どうしても小さなスペースが生まれてしまったりすることがあるが、本来、気持ちがいいと感じられる空間、こうあるべきだと素直に思える空間をつくろうと心がけたという。それが、本質的なところで快適に感じられるファクターとなっていくのだろう。

どんな人が使っても暮らしやすい、理にかなった空間

エントランスホールの先にはダイニングキッチンがつながり、その先にはリビングが続く。既存のプランではリビングのほうが手前に配されていたが、位置を入れ替えることにした。

 

「暮らしのさまざまなシーンを一つひとつリアルに思い描きました。帰ってきたらまず、買い物をしたものをキッチンに仕舞うだろうなとか、ダイニングキッチンのようなアクティブなスペースが寝室と接続しているとうるさいだろうなとか。住まいのなかで、パブリックからプライベートへの自然な流れを考えて配置しています」

 

加えて、これまでにリビングを気合いを入れてつくっても意外とゲストが来た時もキッチンで過ごしたり、ダイニングテーブルがうまく使われていなかったりというケースを目の当たりにしてきた芦沢さん。ここよりもさらに面積にゆとりがあれば特別なときだけに使う部屋があってもいいが、200㎡台であればどの空間も日常的にうまく使ってほしい。どういう配置や流れにすれば、どの空間も気持ち良く使ってもらえるかを考えるため、模型やCGを駆使して何度も検討したという。

この部屋のためのオリジナル家具をデザイン

今回のリノベーションで芦沢さんが頭を悩ませたことの一つに「天井の高さ」がある。思うように確保できず、ともすれば圧迫感を感じさせてしまうことになる。そこで、家具の高さやペンダントライトの位置を、通常よりも少し低めに設定することに。それによってさまざまな人の行為を低い位置に誘導し、天井の高さが気にならないようカモフラージュした。

 

そんなことが可能になったのは、オリジナル家具の提案を含めて芦沢さんがコーディネートしているからだ。家具のデザイン・制作スタジオに在籍していた経歴も持つ芦沢さんは、以前から「家具もインテリアのなかの重要なエレメント」と考えてきた。「リアージュ砧テラス」を設計する際、NORM ARCHITECTSおよび老舗の木製家具メーカー、カリモク家具とともに新たな家具ブランド「KARIMOKU CASE STUDY」を立ち上げ、空間から考える家具を提案。今回も同チームでこの部屋に合わせたオリジナルの家具を制作することにした。

 

「もちろん、既製品を組み合わせるのがベストのケースもあります。オリジナルで家具を作るのは、建築家としてはかなり踏み込んだ難しいことです。しかし今回はこれまでのバックグランドがすでにあり、この空間のために家具がデザインされているということでも価値を提供できると考えました。家具作りがうまくいけば空間の質をさらに上げることができるはずで、実際にその空間に身を置いたときに大きな差が出てくると思います。大変なところもありますが、だからこそとても面白いのです」

住み手自身がつくるリアルな暮らし

さらに、この部屋のデザインを注意深く見てみると、ひとつ特徴的なことがある。壁面にくぼみをつくった「ニッチ」が至るところに用意されているのだ。

 

「もともと、ニッチはNORM ARCHITECTSが好んで使用するエレメントです。それを今回は我々が独自に解釈して積極的に取り入れようと考えました。ニッチはディスプレイスペースであり、建築的につくることができるパーソナルな空間です。昔の日本の住まいには床の間があり、掛け軸や花を飾って四季の移り変わりを感じてきましたが、最近の住まいには「ものを飾る場所」がなくなっています。今回は、ものを飾る、つまり、住み手がパーソナリティを表現できる場所をきちんと設けたいと考えたのです。住まいにゲストを招く可能性もあるだろうし、そんなときは飾るものを選ぶことでシーンにふさわしいしつらえをつくることができます。プロに花の生け込みを依頼するのもいいかもしれません。ここに住む人には、自分自身で好きな空間を作り上げてほしい、暮らしを楽しんでほしいと考え、その仕掛けとしてたくさんのニッチをつくりました」

 

そして、今回の提案では、このニッチに飾るものを含めてアートやスタイリングまで全てをトータルでコーディネートするという。アートは、芦沢さんがこの住まいに合うものを自ら探し、広島を拠点に活躍する素描家・shunshunさんに依頼。内装デザインからイメージしてもらい、3枚を描き下ろしてもらう予定だ。NORM ARCHITECTSが中心となって提案するスタイリングは、デコレーションするのではなく住空間として成立させる意識で、空間にあう良いものを丁寧に選んでいく。住み手が好きな空間を自分で作り上げるきっかけやイメージをつくるためのスタイリングだという。プランや内装デザインに留まらず、オリジナル家具のデザインやアート、スタイリングまでも含めた芦沢さんの提案は、もはや設計というよりは「心地よく暮らすためのキュレーション」といえる。

 

「何よりも大切にしているのは、リアルな暮らしがきちんと成立しているか、ということです。ハイクラスの分譲マンションとなると、とにかく無個性であったり、華やかな非日常のシーンばかりが強調されたりしますが、富裕層であっても大切なのはリアルな暮らしだと思うんです。ここでは、生活に寄り添った「巣」をつくろうと考え、落ち着いて気持ちよく暮らすためのひとつのかたちを提案しています。だからこそ、どこにいてもある種のすがすがしさ、気持ち良さが感じられるはずです」

R100 TOKYOが大切にしている空間への考え方を軸にこの建物の文脈を読み解き、「真に上質な住空間」として仕立てられた新コンセプトルーム。主張しすぎることなく住み手の暮らしに寄り添う余白を備えながらも、絶妙な匙加減で洗練された個性を放つ。そこには、誰もが「ここに住みたい」と感じるような揺るぎない心地よさが存在するはずだ。第2回はカリモク家具を訪れ、この部屋のために作られたオリジナル家具の制作ストーリーを追う。

※今回の取材では芦沢氏が手掛ける家具ブランド「石巻工房」のアトリエ兼ショールームを訪れた。
※今回の取材では芦沢氏が手掛ける家具ブランド「石巻工房」のアトリエ兼ショールームを訪れた。
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