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遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.9 旅に出よう(奈良編)
今日もアートの話をしよう

遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.9 旅に出よう(奈良編)

五感を刺激する旅。アートも食も人とのつながりも楽しむ旅。奈良編

「Soup Stock Tokyo」を立ち上げた、実業家の遠山正道氏と、美術ジャーナリスト・編集者であり、長年雑誌「BRUTUS」で副編集長を務め「フクヘン。」の愛称をもつ鈴木芳雄氏が、アートや旅、本や生活について語る「今日もアートの話をしよう」。9回目となる今回は、京都、奈良へと旅に出ました。◀京都編はこちら

Text by Fumi Itose
Photo by Yoshiya Taguchi

MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS

遠山:奈良に到着してからまず、今回お世話になるホテル「MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS」へ。こちらも株式会社リビタさんがトータルプロデュースし展開する「THE SHARE HOTELS」の9店舗目で、2021年9月にオープンしたばかりです。

鈴木:奈良公園南端に位置する荒池の畔で、興福寺五重塔や春日山原始林を臨むことのできる素晴らしい立地。「MIROKU」というホテル名は、「釈迦の死後56億7千万年後の世に降りてきて釈迦に代わって人々を救う未来仏」である弥勒菩薩に由来しているのかな、と思ったら、それもあるけれども、奈良県の美しい山麓や鹿を臨む場所「美+鹿」、「美+麓」という意味も込められているそうです。

写真提供:MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS
写真提供:MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS

遠山:運が良ければ、ホテルのテラスでゆっくりしながら、テラス横にある小さな丘にやってくる鹿を見ることができるそうですよ。こちらのホテルのインテリアデザインは二人の建築家を迎えて、2つの異なる趣の空間がつくられています。それが「正直なデザイン」と表したデザインを手がける芦沢啓治建築設計事務所と、奈良県出身で数寄屋大工としての経験を活かし、美術家としても活躍する佐野文彦氏率いるFumihiko Sano Studioです。

鈴木:それぞれまったく違うデザインですよね。カフェやテラスは芦沢さんのデザイン。芦沢さんはご自身も関わっていらっしゃる家具ブランド「Karimoku Case Study」や「石巻工房」の家具をホテルに取り入れています。また屋内カフェは、吉野杉の大テーブルや宇陀紙の照明など奈良の素材を活かした空間に。してエントランスと地下は佐野さんらしいデザイン。地下のゲスト専用ラウンジは、吉野杉や飛鳥石など奈良の素材を用いて、石庭を模しているそうです。

遠山:一階の明るい場所から降りてくると、本当に同じ建物の中なのかと思うほど、印象が違いました。

鈴木:部屋も二人それぞれがデザインしていて、一つのホテルの中で、違うパターンの宿泊ができるわけです。

遠山:本当にまったく違う思考、デザイン。芦沢さんの部屋からは、隣接する荒池や興福寺を臨むことができます。佐野さんは、室内にも吉野杉の大木を配置。これありきでデザインされたそうです。そしてお部屋の窓から見える先には、吉野の山肌を再現。どちらも両方を一回に堪能することはできないし、お部屋も二人それぞれ何パターンものつくりがありますから、何回も泊まりにこなければ全部は堪能できませんね。

法相宗大本山 興福寺

鈴木:ホテルに着いて一休みしてから、ホテルからすぐの「興福寺」へとやってきました。

遠山:興福寺というのはどういうお寺ですか?

鈴木:興福寺は法相宗(ほっそうしゅう)の大本山です。その前身は「山階寺」で、669年に藤原鎌足が重病を患った際に、夫人の鏡女王が夫の回復を祈願し、釈迦三尊や四天王などの諸仏を安置するために造営したものと言われています。もともと山階寺は山城国山階(京都市山科区大宅)に創建されたころの名称でした。そして672年の壬申の乱の後、飛鳥の地に都が戻ったときに山階寺も移されて、さらに710年、平城遷都の際に藤原不比等の計画によって移され、「興福寺」と名付けられたそうです。

遠山:前身から考えて、もう1300年以上の歴史があるお寺ということですね。

鈴木:その長い歴史を伝えるお寺の宝、いわゆる「寺宝」も素晴らしいものがたくさんあります。例えば今年と来年の2回に分けて期間限定で公開されている国宝・五重塔(次回公開:2022年3月1日〜31日)。この五重塔は730年に藤原不比等の娘・光明皇后が発願して建立されましたが、その後5回もの焼失と再建を経ています。現在の塔は、1426年に建てられたもので、当初は現在より5メートルほど低かったそう。初層部分には、創建当初、四天柱の各方向、東に薬師浄土変、南に釈迦浄土変、西に阿弥陀浄土変、北に弥勒浄土変が据えられていたと言われ、現在は室町時代に制作された、東方/薬師三尊像、南方/釈迦三尊像、西方/阿弥陀三尊像、北方/弥勒三尊像が安置されています。

遠山:建物の外と中を拝見しましたが、私はこれまであまりお寺の建物や仏像というものを見てきませんでした。今回この五重塔を拝見して、木の反り具合の美しさに驚かされましたね。日本の建築の技、職人の手業というものを見せつけられた気がします。また仏像にはいろんな地位があるということを今回ちゃんと知ることができました。

鈴木:仏像と一括りに呼ばれても、実は大きく四つに分かれているんですよね。位の高さから言うと、「如来」「菩薩」「明王」「天」という順番になります。

遠山:五重塔に安置されているのは、「如来」とその脇侍と呼ばれる「菩薩」なんですね。

鈴木:そうです。各如来は必ず脇侍を従えていて、菩薩は如来の補佐という感じでしょうか。例えば釈迦如来を中心に、右側に白象に乗った普賢菩薩、左側に獅子に乗った文殊菩薩を従えています。

鈴木:興福寺には、僧侶が食事をする建物「食堂(じきどう)」があった場所に建てられた「国宝館」があります。館内には、旧食堂本尊の千手観音菩薩像(国宝)を中心に、興福寺の歴史を伝えるさまざまな寺宝や資料が展示されています。

遠山:一つのお寺の中に、ものすごくたくさんの国宝や重要文化財が保管されていることに驚かされましたね。しかもそれを間近で観ることができる。とんでもなく大きな仏像や、仏頭などもあって、迫力満点でした。

鈴木:この国宝館では、仏像の中でもダントツで人気の国宝「阿修羅像」が展示され、ケースなしで間近でその姿を観ることができます。

遠山:この「阿修羅像」というのは、どういった立ち位置の仏像なのでしょうか?

鈴木:「阿修羅像」は、「八部衆」という仏像の中の一体で、少年にも近いような肉体に、少し幼さの残る3つの顔と6本の腕を持つ像です。もともとインドにおいて、仏教の守護神の一人である帝釈天と戦う悪い戦闘の神でした。

遠山:え? 悪者なの?

鈴木:最初はそうでしたが、仏教に帰依してからは、釈迦を守護する神と説かれるようになったんです。3つの顔はそれぞれ微妙に異なる表情で、悟りを開いていく様子を表していると言われています。

遠山:「八部衆」という仏像チームの一人だったんですね。ではみんな悪者?

鈴木:みんながみんな悪者だったわけではありません。しかし8人とも仏教の教えに基づいた神ではないので、その生い立ちや性格、姿、かたちはさまざまに伝えられ、複雑で不明な部分が多くあるんです。

遠山:全員けっこう険しい顔をしているんですよね。仏像というと、アルカイックスマイルとか、無表情とか、でもどこか守ってくれるような、安らぎの象徴であると思っていたのですが、彼らからはそういったものをあまり感じませんでした。

鈴木:基本的に彼らは守護神なので、険しい顔になっているのかもしれませんね。それに阿修羅は、「懺悔」という仏教でも重要な宗教行為が反映されているとも言われているので、確かに安らぎは感じられないかもしれないです。

遠山:私、自分の部下や上司が八部衆たちのような険しかったり懺悔だったりと、あまりハッピーじゃない顔だったら、一緒に仕事したくないなって思ってしまった(笑)。でも仏像にはそれぞれの役割、使命、立場というものがある。それは人間も同じことだな、とも思いました。

鈴木:実は神さまや仏さまと私たち人間は表裏一体なのかもしれませんね。

奈良国立博物館/奈良公園

遠山:奈良といえば「鹿」ですよね。どこにでも鹿がいて、ちょっとびっくりしてしまいます。

鈴木:まさかと思うようなところにいますもんね。そんな鹿が多い場所で知られているのが、奈良公園です。そしてその一角に位置するのが「奈良国立博物館」です。

鈴木:日本国内には、4つの国立博物館がありますが、その中でも仏教美術を中心とした文化財の収集、保管、研究、展示等を行っているのが奈良国立博物館です。上の写真の建物が、1894年に「帝国奈良博物館本館」として完成した、奈良で最初の本格的洋風建築。設計は、旧東宮御所(現・迎賓館赤坂離宮)や、東京国立博物館の表慶館や京都国立博物館の「旧本館(明治古都館)」など、数多くの国宝や重要文化財に指定されている建物を設計した、建築家の片山東熊です。

遠山:現在も展示会場として使われているんですか?

鈴木:2010年に「なら仏像館」と名前を変えて、仏像彫刻専門の施設になりました。そして2016年には、内装などを大幅に改装してリニューアルオープンしています。写真側は西側正面で昔の姿そのものですが、反対の入口側はモダンな黒を基調とした建物になっています。

遠山:本当に奈良は仏像を観にくる、という感じが興福寺に続いてしています。

鈴木:この建物でも常時100体近い仏像が展示されているそうですから、本当に仏教美術に特化した博物館であることがわかりますよね。

鈴木:また、奈良国立博物館といえば、毎年開催される「正倉院展」が有名。正倉院は奈良時代に建立された東大寺の倉庫。聖武天皇の遺愛の品を中心とする約9000点もの宝物が伝わります。

遠山:いつも思うのですが、仏像は欠けていたり塗装というのかな、昔は煌びやかな装飾や色が使われていたけど、もう木肌のみになっていたりと、本来の姿ではない姿で今に至っていますよね。でも正倉院の宝物はとても鮮やかな色をしているのがどうしてかと思っています。

鈴木:それは保管のされ方の違いでしょうね。仏像は一般公開がほとんどされない秘仏を除いては、基本的にお寺の中で本堂に安置され、外気に触れ、時には護摩焚きの煙に燻されと、けっこう過酷な状況が多いんです。美として崇めるというのもあるけれどもそもそも信仰の対象ですから。それに過去の戦や地震などにより破損してしまうこともありました。でも正倉院の宝物は、倉庫からほとんど出ることなく、大事に保管されている。しかも中国では土の中から発掘されるようなお宝がずっと大切に倉庫の中で眠っていたわけです。正倉院展に出品されるのもその中のごく一部、毎年違うものが出るので、その質の高さは日本の美術品の中でも随一でしょう。

中川政七商店/鹿猿狐ビルヂング

撮影:SATOSHI ASAKAWA
撮影:SATOSHI ASAKAWA
撮影:SATOSHI ASAKAWA

遠山:そしてホテルから5分ほどにある、「鹿猿狐ビルヂング」。ここは1716年創業の奈良の老舗・中川政七商店がつくる、新しい奈良の観光拠点です。昔ながらの街並みが広がり、路地が入り組んだ奈良の迷路のような路地に、街並みに合わせた瓦屋根とガラス張りのモダンな建築が現れます。

鈴木:「鹿猿狐ビルヂング」は“ 路地を巡り出会う、触れ、学び、味わう奈良。”をコンセプトに、中川政七商店だけではなく、奈良初出店のスペシャルティコーヒー店猿田彦珈琲、ミシュラン一つ星を獲得した人気店sio(シオ)によるすき焼きレストランの㐂つね(きつね)などが入った複合商業施設。中川政七商店のトレードマーク「鹿」、猿田彦珈琲の「猿」、㐂つねの「狐」、3匹が集うことから、「鹿猿狐ビルヂング」と名付けられたそうです。

遠山:実はここには新しいビルだけではなく、歴史ある建物群も同敷地内にあります。

遠山:例えば「旧 遊中川 本店」は、創業地に建つ原点となる直営店。築130年の町家の佇まいを活かした内装とともに、中川政七商店の原点や歴史を感じることができる空間づくりになっています。それを象徴するのが電話ボックス。もともとここは中川家の住居兼商いの場だったのですが、そこで実際に使われていた電話ボックスです。現在は試着室として活用されています。

鈴木:ボックスには当時の電話番号「貮貮貮貮番」の文字が。このあたりで二番目に電話番号を取得したそうで、時代にあわせ新しいものを積極的に取り入れようとする中川政七商店の姿勢が垣間見られます。

撮影:SATOSHI ASAKAWA

遠山:中川政七商店はもともと麻織物「奈良晒(ならさらし)」の問屋として創業。その歴史を体感できるギャラリースペースが2つ公開されています。それが「布蔵(ぬのぐら)」と「時蔵(ときぐら)」。「布蔵」には祖業である麻に関する道具や機織り機を展示。週末は実際に手績み(てうみ)手織りの麻を織る作業を体験できるそうです(要予約)。

鈴木:「時蔵」は、300年の歴史を紡いできた中川政七商店の歴史を体感でき、さらにはこれからの未来について想いを馳せることができるギャラリーです。江戸時代から現在まで続いてきた同社には、膨大な資料が残されてきました。しかしその資料や貴重な品はあまりちゃんとまとまっておらず、煩雑としていたそうです。そこでこれから先の未来、中川政七商店の歴史を紡いでいく後輩たちが歴史を紐解いていく際に、快適にその歴史を知り、調査できるように、そして毎年の成果物を資料として保存できるようにと、これから先の未来を含めて、1716年から421年分の桐箱の引き出しがずらりと並んでいます。

遠山:2階には、工芸のビジネスモデルを描いた屏風も展示。中川政七商店が商いとする「工芸」そのものが石器時代ぐらいからどう生まれ、商売がどう動いてきたのか、がわかりやすく、ユーモアに描かれています。これは編集者の松岡正剛さんと中川政七商店で、制作されたそうです。

鈴木:また同社はアートとも縁深く、「時蔵」の2階には、奈良の伝統工芸の技術をあわせた鹿と、それを3Dスキャンし、名和晃平さん率いるSANDWICHにつくってもらった鹿が展示されています。これは創業300周年の際に制作されたそうです。

遠山:新旧の鹿がシンクロして、まるでこの鹿猿狐ビルヂングのようですよね。古くから続くものづくりの歴史と、いまの暮らしに溶け込む空間が、共存しています。

撮影:SATOSHI ASAKAWA

遠山:さらに新店舗側のビル一階エレベーターホールには、鹿の背中に猿が乗り、2匹を見上げる様に狐がそばにたたずんでいるという、「鹿猿狐ビルヂング」を象徴する3匹の動物たちのオブジェが。これはイギリスの作陶家、ステファニー・クエールの作品。もともとこの店舗ではなく中川政七商店 表参道店に展示されていました。トレードマークの鹿だけを購入したはずなんですが、届いたらなぜか猿が背中に乗っていたそう(笑)。それでこの施設開業にあたり、新しく「狐」が入るということで、改めて「狐」をつくってもらって。

鈴木:でも最終的にはこの鹿と猿が暗示するかのようにこのビルができあがった。偶然なのか必然なのか、本当に不思議です。しかしなんで猿が乗ってきちゃったんだろう(笑)。ステファニーさんの遊び心でしょうか。

遠山:そしてもちろんお買い物も楽しめるのが、この「鹿猿狐ビルヂング」。約126坪の敷地面積に建てられた3階建ての施設と築130年の町家と合わせて、かなりの面積が売り場として使用されています。ここでは全国各地800を超えるつくり手と生み出す約3000点の商品が並びます。

鈴木:また3階には共に働き、共に学ぶ場として誕生したワークスペース「JIRIN」も。

遠山:中川政七商店のすべてがここで堪能できますよね。しかもただのお店としてだけでなく、観光産業であり、産業観光というのかな、観光や買い物を楽しみながら、奈良の歴史や同社の歴史を学べる場だなと感じました。

遠山:この日の夕食は、「㐂つね」さんでいただきました。すき焼きをメインに、コース料理も単品も楽しめるレストラン。私と芳雄さんは「すき焼きちらし重」をいただきましたが、これはちらし寿司とすき焼きのコラボ。こういった感じに、これまでのすき焼きをアップデートというか、再構築された料理を提供してくれます。

なら歴史芸術文化村

写真提供:なら歴史芸術文化村整備推進室

遠山:そして奈良県は2022年3月21日に、新しい歴史芸術文化活動の拠点となる「なら歴史芸術文化村」を開村するそうですよ。

写真提供:なら歴史芸術文化村整備推進室

鈴木:場所は奈良市内ではなく、天理市杣之内町(そまのうちちょう)。同施設は「文化財修復・展示棟」、「芸術文化体験棟」、「交流にぎわい棟」、「情報発信棟」、「屋外体験ゾーン」、さらに宿泊施設も併設。宿泊施設は、「道の駅」に直結し、地域の魅力を体感しながら自由にニッポンを渡り歩く“未知なるニッポンをクエストしよう”をコンセプトの全く新しい体験型の旅のスタイルを提案するプロジェクトだそうです。

写真提供:なら歴史芸術文化村整備推進室

遠山:「文化財修復・展示棟」では、仏像等彫刻、絵画・書跡等、歴史的建造物、考古遺物の四分野の文化財修復作業現場を通年公開・解説。四分野すべての修復を一ヶ所で行い、さらには公開するのは全国初のことだそうです。

鈴木:保存修復という作業や工程があることは知っていても、それを身近で見る機会というのは普通はありません。貴重な文化財を修復している現場を見ることができる。文化財をもっと深く知る一助にもなります。

写真提供:なら歴史芸術文化村整備推進室

遠山:ほかには国内外から招いたアーティストの制作活動の公開や作品展示、そして乳幼児から気軽に体験できるアートプログラムなどを実施する「芸術文化体験棟」、レストランや奈良県内の農産物や伝統工芸品の販売、料理教室に伝統工芸を体験できる「交流にぎわい棟」、奈良県の歴史・文化・観光の情報を発信する「情報発信棟」が。また「屋外体験ゾーン」にはアート作品を配置する予定だとか。

鈴木:奈良県全土でそうですが、この施設の周りにも多くの古墳が点在しています。それもこの施設から臨むことができ、まさに過去と未来をつなぐ場所。現代を生きる我々と未来をつないでいく子どもたち、そして過去の素晴らしい文化財。それがこの場所で交わり、新しい文化の拠点となるでしょう。

遠山:出来上がってから私たちも足をぜひ運んでみたいですよね。奈良にこれだけ新しい文化や産業の拠点が出来上がってきていて、奈良がどんどんと面白くなっている気がします。

奈良の夜の街を楽しむ/LIGHT

鈴木:実は今回、奈良の夜の街も我々は堪能したんですよね(笑)

遠山:この取材担当の写真家の田口くんが知り合いから聞いたという「LIGHT」というバーにお邪魔しました。ここがめちゃくちゃ最高だった(笑)

鈴木:久々に外で楽しくお酒を飲みました(笑)。奈良はあまり夜の文化が盛んな地域ではなく、スナックなども全国で一番少ないそうで、確かに22時を過ぎると路地の多くのお店は閉まってしまいます。

遠山:その路地の中で一際光っていたのが、「LIGHT」でした。店員さんはまだ20代の若者たち。お酒だけでなくアパレルの販売や、コラボイベント、ギャラリーとして展示もしたりと、かなり精力的に活動している印象。

鈴木:建物は元時計屋さん(のちにパン屋さん)と、僕も奈良に来たら通っていた焼肉の「璃衛」(別の場所で営業中)の二つを使用。ネオンの感じといい、どこか懐かしさを感じつつも、若者のパワーに溢れているなと。こういった若者たちが奈良で新しい夜の文化をつくっているのだな、と目の当たりにしました。しかもオーナーは遠山さんもご存知の方で、まさかのつながりに驚かされるばかり(笑)

遠山:どこでつながるかわからないですよね(笑)。しかし最高の夜を過ごさせてもらいました!

鈴木:そして奈良最後の食事は、写真家の田口くんがまた紹介してくれたカフェで。それが中川政七商店のほぼ目の前に位置する「ROKKAN ROOM」。築100年以上の元置屋を、アートディレクターのROKKANさんが全面プロデュースしてカフェとしてオープン。このROKKANさんはPASS THE BATONに商品を出品したり、京都編で紹介したブランド「YEAH RIGHT!!」のアートディレクションをしていたりと、また遠山さんとつながりのある方でした。

遠山:まさか奈良にもこんなに自分とつながる人たちがいたとは。新しい発見でしたね。

鈴木:今、奈良は古き良き文化と新しい未来を向いた文化が生まれ、さらには融合し、新しい一歩を踏み出しているのではないかと思いました。

遠山:未来を見据えて新しいチャレンジをしていくという印象が大きかったですね。正直これまで奈良は私にとっては遠い場所でした。ほとんど来たことがなかった奈良が、どのように進んでいくのか、これから注目していきたいと思います。

今回訪れたお店など

Information

MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS
奈良県奈良市高畑町1116-6
Tel. 0 742-93-8021
https://www.thesharehotels.com/miroku/

法相宗大本山 興福寺
奈良県奈良市登大路町48番地
拝観時間:9:00~17:00(入堂、16:45まで)
※拝観時間は時期により変わることがございます。詳細はホームページでご確認ください
https://www.kohfukuji.com

奈良国立博物館
奈良県奈良市登大路町50番地
Tel. 050-5542-8600
※開館時間、展覧会についてはホームページをご確認ください
https://www.narahaku.go.jp

鹿猿狐ビルヂング/中川政七商店 奈良本店
奈良県奈良市元林院町22番
中川政七商店:10:00~19:00
猿田彦珈琲:9:00~19:30
きつね:11:00~15:00(LO 14:00)
    17:00~21:00(単品ご注文の場合 LO 20:00/コースご注文の場合 19:00)
茶論:10:00~19:00(LO 18:30)
JIRIN:9:00~21:00(ドロップインは10:00受付開始、19:00最終受付)
※各店舗の営業状況や各店舗お問い合わせ先につきましては、ホームページでご確認ください。
https://nakagawa-masashichi.jp/shikasarukitsune

なら歴史芸術文化村
奈良県天理市杣之内町437-3
※休館日・開館時間等の詳細はホームページでご確認ください。
https://www3.pref.nara.jp/bunkamura/

LIGHT
奈良県奈良市椿井町48-4
Tel. 0742-93-8004
営業時間:火曜日〜土曜日16:00~23:00
     日曜日15:00~23:00
定休日:月曜日
https://www.instagram.com/light_nara/

ROKKAN ROOM
奈良県奈良市元林院町8
Tel. 050-1112-7867
営業時間:11:00~18:00
※金曜日・土曜日は不定期に22:00まで
定休日:日曜日・月曜日
http://www.rokkanroom.com

profile

遠山正道

1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。

▶︎http://www.smiles.co.jp/
▶︎http://toyama.smiles.co.jp

profile

鈴木芳雄

1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

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