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ウッドヴィル麻布 新コンセプトルーム インタビュー<br>第4回 Norm Architects
ウッドヴィル麻布コンセプトルームに迫る

ウッドヴィル麻布 新コンセプトルーム インタビュー
第4回 Norm Architects

素材やディテールの一つひとつを大切にして丁寧に作られた住まい。
日本と北欧が掛け合わさることで、真に上質な空間として昇華される。

西麻布の緑豊かな高台に位置する「ウッドヴィル麻布」。新たなコンセプトルームのプランや内装、家具、アートと、これまで3回にわたって制作ストーリーを追ってきましたが、最終回となる今回は、設計監修や家具デザインを手掛けたデンマークの建築・デザインスタジオ、Norm Architectsと共に実際に出来上がった空間を紹介。日本と北欧が融合することで生み出された上質な住まいの魅力に迫ります。

Text by Asuka Kobata
Photographs by Tomooki Kengaku

「アメリカのモダニズムインテリア」と「陰翳礼讃」をイメージ

Norm Architectsはデンマーク・コペンハーゲンを拠点とし、プロダクト、インテリア、建築、ランドスケープ、グラフィック、写真など多岐にわたる分野で活躍する建築・デザインスタジオだ。「ソフトミニマリズム」をフィロソフィーとしながら、自然素材や職人技が生きた普遍的なもの、伝統的なものを大切にし、控えめながらも洗練されたデザインを生み出している。今回はNorm Architectsの創立メンバーの一人、建築家・Jonas Bjerre-Poulsen(ヨナス・ビエール・ポールセン)と、パートナーの一人であるデザイナー・Frederik Alexander Werner(フレデリック・ウェルナー)と共に、完成したコンセプトルームを訪れた。

室内に足を踏み入れると、ダークで落ち着いた印象や自然素材をふんだんに用いた柔らかな雰囲気から居心地の良さが感じられる。このコンセプトルームは、建築家・芦沢啓治さんが設計とともに全体のディレクションを手掛け、それらをNorm Architectsが監修。家具に関しては共通するコンセプトのもと、アイテムごとに芦沢さんとNorm Architectsがそれぞれにデザインをしたという。そんななかでNorm Architectsが目指した空間は、どのようなものだったのだろうか。

「ケイジ(芦沢さん)とコラボレーションして一つの住空間をつくるとなったとき、日本と北欧の文化が融合することで提案できる空間や暮らしのあり方を追求したいと考えました。そのなかでも大切にしたのは、シンプルでタイムレスであることです。一方で、もともとこのマンションが持っている良さをどのように伝えていくかも鍵になると考えました。場所に寄り添ったデザインでウッドヴィル麻布らしさを出しながら、極力シンプルに仕上げる。そのバランスを見つけることに注力したのです」

実際に芦沢さんとイメージを共有するために、具体的なインスピレーションの源になったものが二つある。

「一つはアメリカのミッドセンチュリー期にあったようなモダニズムのインテリアです。とてもシンプルで、全体がダークなトーンに統一されています。本物の上質な素材を使い、なかでもテキスタイルをふんだんに用いています。僕たちはちょうどこのプロジェクトが始まる少し前に、友人の建築家であるStudio MK27のMarcio Kogan(マルシオ・コーガン)を訪ねてブラジルのサンパウロに行きました。彼のつくる空間にもアメリカのモダニズムの影響が感じられるのですが、実際に訪れてみるととても心地よく、それがすごく印象に残っていたのです。そして、そのイメージがウッドヴィル麻布とリンクしました」

「もう一つのインスピレーションはケイジが見せてくれた本から得ました。「陰翳礼讃」をテーマに、さまざまな美しい写真が載っている本です。それを見て、日本の住まいは暖かくてくつろいだ雰囲気があり、内側に向かっているような印象のインテリアが多いことに気がつきました。そして、北欧との違いに驚いたのです。たとえば北欧は、天井が低い場合は真っ白に塗って空間が広く見えるようにします。しかし日本には低い天井をあえて暗くし、暗いところでどのように光を楽しむかという考え方があることを知りました。そこがとても新鮮で、この部屋のインスピレーションになっています」

確かに完成したコンセプトルームには、光の美しさに心を奪われるような瞬間がある。白よりも少し明るさを抑えた壁や天井の左官材は独特のムラが美しく、質感のあるホワイトベージュのキッチンカウンターや、少し褪せたようなグレーに近いブラウンのフローリングなど、色は変えているものの色数を絞り込みトーンを統一。そこに光が差し、白から墨色へと柔らかなグラデーションを作り出している。それらの色の匙加減は、「光の質」を考慮して何度も検討を重ねたものだ。

「アメリカのモダニズムインテリア」と「陰翳礼讃」はコンセプトというよりも推進力と呼ぶのがふさわしいという。二つのインスピレーションを軸に芦沢さんとNorm Architectsがやりとりした写真やスケッチが、この部屋を先鋭的なものに高めていったのだ。ヨナスやフレデリックは芦沢さんととても仲が良く、来日する際はいつも芦沢さんの事務所に併設するゲストハウスに宿泊する。そんな関係性がある上で、基本設計の間は週に一度は打ち合わせをし、空間のつながり方や全体のトーン、家具の形状などを相談。スケッチや模型、CG、素材サンプルなどを幾度となくやりとりし、見事なコラボレートをかなえたのだ。大規模な商業施設ならともかく、単体の住宅でここまで二組の建築家が協働できるのは珍しく、芦沢さんも「特別なプロジェクト」だと話している。

リッチな素材とシンプルなデザインを丁寧に組み合わせる

そんな空間にしっくりとなじむのが、この住まいのためにデザインされた「Karimoku Case Study」の家具だ。上質な木材と柔らかなファブリックやレザー、そしてそれら素材そのものの美しさを生かした仕上げ、「スモークド オーク」に統一された独特の色味。プロポーションはもちろん、素材のトーンや質感なども内装とぴったり調和し、実際の空間に身を置くとその一体感が肌で感じられる。

「まずこだわっているのは、家具にも自然素材を使うことです。自然素材は僕たちと自然を繋げてくれるものであり、僕たちがより心地よく暮らすために欠かせないものです。その自然素材を用いながら、トレンドを追い求めるのではなく、ずっと使っていけるようなタイムレスな価値観を表現したい。そうして、日本と北欧の文化の間にあるようなコレクションを実現したいと考えました。これが、「Karimoku Case Study」が共通して目指すものです」

「リアージュ砧テラス」にはじまり、今回で4件目となる「Karimoku Case Study」の事例。今回は特に「この空間に住まう人がどのような家具を求めるだろうか」と考え、フォルムや素材、色を吟味したという。

「たとえば5ピースで構成されたリビングのソファは、正方形に近いこのリビングをどういう風に使うかを考えたときにいろいろな使い方が想定できました。だから、シーンによって自由に動かして組み合わせられるモジュール・ソファがいいと考えたのです。ゆったりとリラックスできるソフトな座り心地とフォルムを目指すと同時に、5ピースの一つひとつが彫刻のような存在になるようデザインしています。デンマークのファブリックブランド、Kvadrat(クヴァドラ)の張り地は、同じ白でも微妙に異なる色味やトーンをいくつか比較した上でケイジと共に選びました。また、寝室のサロンチェアとデスクは、寝室という空間の使い方を考慮。ベッドの隣でも働けるけれど、同時にゆったりくつろげるようにデザインしています」

また、リビングとダイニングで特に目を引くのは、柔らかな光を放つ大きなペンダントライトだ。

「京都に僕たちが以前から気になっていた伝統的な京提灯の工房があるんです。小嶋商店という工房で、彼らが生み出す美しい灯に強く惹かれていました。彼らと一緒に照明を作ってみたいとずっと考えていたので、ケイジにコンタクトを取って欲しいとお願いしたのです。コロナ渦ということもあり僕たちは実際には足を運べていませんが、ケイジが工房を訪れて、コレボレーションの可能性を探ってくれました。その上で、僕たちがデザインしたものです。日本に昔からある技術を使いながらも、モダンでスタンダードなものに仕上げられたと思っています。提灯なのでフラットにして持ち運べるのですが、そこもとても気に入っています。まさか本当に小嶋商店とのコラボレーションが実現できるとは思っていなかったので、とても嬉しいです」

今回のコンセプトルームでは、空間の作り方や素材使い、家具のデザインなど、随所でNorm Architectsが掲げる「ソフトミニマリズム」が表現されている。

「僕たちが考える「ソフトミニマリズム」は基本的にシンプルでミニマム、そこに必ず素材のリッチさを付け加えたいと思っています。自然素材である木材や石材、左官材、そしてテキスタイルの、見た目の美しさと触れたときの心地良い感覚が必要不可欠だからです。素材のセレクトをはじめ、細かな部分の収め方やデザインまで、一つひとつを大切にして最適なバランスを見つけようとしました。名作チェアで広く知られるアメリカのデザイナー、Charles Eames(チャールズ・イームズ)も、「ディテールは些細でつまらないものではない、ディテールこそが製品をつくる」と言っていますから」

ディテールの集積が製品のみならず一つの空間をつくる。このコンセプトルームでは、それが存分に表現されている。シンプルだけどリッチなものを、細心の注意を払いながら丁寧に組み合わせていくことにより、真に上質で普遍性のある空間が生まれたと言えるのではないだろうか。

「本物」に包まれた上質な暮らしを

ミニマムだがどこか温もりが感じられ、普遍性が高いことで知られる北欧のデザイン。そこに、日本のライフスタイルやデザイン、素材、技術がミックスして生まれた今回のコンセプトルーム。芦沢さんとNorm Architects、しいては日本と北欧が掛け合わさることで、真に上質な空間として昇華されたように思える。Norm Architectsは自国と日本の文化の親和性をどのように見ているのだろうか。

「日本に限らずどこの国でもそうですが、訪れるといつも学ぶことがたくさんあります。なかでも日本には大きな影響を受けることが多いです。自然との繋がりを大切にし、シンプルなものやタイムレスなデザインを好む。北欧と日本はそういうところがとても似ていると思います。一方で、僕たちがまだ知らない違う点がどんどん出てくることに驚いています。時代が進むにつれて、それぞれの文化は常に変化するので、ずっと学び続けなければならないなと思っているところです。2020年は特に新型コロナウイルスの影響で、住まいでの過ごし方や社会的な繋がりにもそれぞれの国で大きな変化があったと思います。なので、二つの文化を考えるとき、とても親和性の高い側面と、常に変化を続ける新しい側面の両方を学びながらデザインに落とし込みたいと思っています」

さらに、「上質な暮らし」という視点でこれからの日本の住まいに大切だと思われるものを聞いた。

「北欧と日本で大きな違いを感じるのは、照明への考え方です。北欧は冬は太陽が出ている時間がとても短く、暗い時期が長いんです。だから、どのように照明を配置して、どのような時間にどのような明かりをつけるかということをとても大切にしています。照明から、空間の質みたいなものを考えてみても面白いかもしれません」

「あとは、これは僕たちが特に大切にしていることですが、みんなが意外と気づいてないこと。さまざまなものに溢れる今の時代に、自然素材やきちんとしたプロセスを経て作られているものといった「本物」を自分のまわりに置いて置くことは、とても大切になるのではないでしょうか。心の豊かさにもつながるし、自分や家族の健康にもつながる。僕たちはそういうことに重きを置いて暮らしや住まいをつくろうと心がけています」

素材やディテールの一つひとつを大切にし、簡単なものづくりをせずにきちんとしたものを作る。それらを大切にした空間だからこそ、真に上質な暮らしが実現できる。そんな想いを込めて芦沢さんとNorm Architectsが作り上げた空間に、カリモク家具の家具とshunshunさんのアートが調和し、唯一無二の住まいが生まれました。ここに住まう人には、その意味を改めて感じていただけるでしょう。

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