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遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.3 今までにない、アートホテルに泊まろう。自分の生活にリンクさせよう。
今日もアートの話をしよう

遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.3 今までにない、アートホテルに泊まろう。自分の生活にリンクさせよう。

アートホテルが自分の住居とリンクする。そしてアート作品が自分の身体とリンクする。

「Soup Stock Tokyo」を立ち上げた、実業家の遠山正道氏と、美術ジャーナリスト・編集者であり、雑誌「BRUTUS」で長年、副編集長を務められ「フクヘン。」の愛称をもつ鈴木芳雄氏が、アートや旅、本や生活について語る「今日もアートの話をしよう」。第3回目は、東京都墨田区にあるアートホテル「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」へ。このホテルには、遠山氏が代表を務めるThe Chain Museum(以下TCM)が初めてリアルなコマーシャルギャラリー「GALLERY ROOM・A」をオープンさせたことでも話題になっている。そして遠山氏の作品を見ながら過ごせる部屋も。ということで、ホテルでありながら、現代アートの美術館のようなギャラリーのような、はたまた倉庫のような、今までになかった形態のアートホテルを探訪する。

Text by Fumi Itose
Photo by Yoshiya Taguchi

KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS

鈴木:今回は、「アートストレージとホテルが融合した、コンテンポラリーアートの拠点」がコンセプトの、KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELSに来ました。このホテルは、2020年7月にオープン。株式会社リビタさんが企画・プロデュースを手がけ、築55年の倉庫ビルを再生した今までにないアートホテルです。

遠山:世界中に多くのアートホテルがありますよね。アーティストやデザイナーがホテルや部屋を丸ごと作品にしたり、プロデュースしたり、あとは各部屋にコンセプトを設けて、それにあった作品を展示してみたり、もしくはホテルが美術品をコレクションしていて、そのコレクションを見せるためのギャラリーが併設されていたりといろんなパターンがあります。

鈴木:どちらかというとアート作品が置かれたホテル、という感じですよね。ギャラリーがあっても、遠山さんが言うようにホテルのコレクションを見せるのがメイン。しかしこのホテルは、TCMが初めてコマーシャルギャラリー「GALLERY ROOM・A」をオープンさせたことでも話題ですが、それ以外にも、館内に複数のアートギャラリーが作品を公開保管する収蔵庫が設置されているという、今までにまったくなかった形態のホテルとなっています。

ホテル内のBAR KAIKAに展示される、「KAIKA TOKYO AWARD」受賞作品。吉田一民《岩場の男》。

遠山:しかもホテルが、アーティストの才能の“開花”をサポートしたいという想いから、「KAIKA TOKYO AWARD」というのを公募したのも面白いですよね。審査員も東京藝術大学大学美術館長・教授の秋元雄史氏とアーティストの舘鼻則孝氏が務められて、選ばれた作品は2022年3月末まで館内共用部に収蔵・展示されています。

鈴木:美術館や財団、ギャラリーがアワードとかを開催するのは当たり前ですが、ホテルがやるっていうのも、今までにないパターン。けっこう大型作品が多くて、見応えがありますよね。

遠山:さらには、東京や大阪の有名ギャラリーCLEAR GALLERY TOKYO、KOSAKU KANECHIKA、NANZUKA、VOILLD、YUMIKO CHIBA ASSOCIATES、Yoshimi Arts(アルファベット順)が入居しているということも面白いところですよね。これこそ今までになかったパターン。

地下一階にあるストレージ。宿泊者限定で見ることができる。

鈴木:しかも「見せる収蔵庫」として、これも宿泊者限定ですが、地下一階に大規模ストレージを設置。各ギャラリーが収蔵庫でありながら、小さな展覧会をも開くという形です。それ以外にも、一階の入口入ってすぐのところでも、小さな展示を行っています。

遠山:またこのストレージ空間がめちゃくちゃかっこいいんですよね。金網のフェンスで仕切られていて、倉庫感がすごい漂ってるけど、おしゃれ。しかも各ギャラリーの個性が全然違うから、飽きない。

鈴木:このストレージは、作品は増えるのに、それを保管する場所がないというギャラリーや作家からの要望の声を元にした部分もあるとか。

遠山:こういう形態のホテルとかが今後も増えそうですよね。真似するところが出てきそう(笑)。

GALLERY ROOM・A

鈴木:さて、今回遠山さんは、「GALLERY ROOM・A」を、インディペンデントキュレーターの青木彬さんと一緒にホテル内にオープンさせました。さらにはホテルの客室2室には、個展を開いているアーティストの作品も展示され、作品鑑賞とともに作家本人による音声ガイドを楽しむことができます。ギャラリーでの個展は誰でも見ることができますが、客室での展示、音声は泊まった人しか体験することができません。加えて遠山さんの作品も飾られているんですよね。

遠山:客室のコンセプトは「Concept Room」と「Answer Room」という2つ。「Concept Room」は作家の作品が展示され、「Answer Room」に、私の作品に呼応する作品を新しく作ってもらい、対峙するように展示されています。

鈴木:この客室については後で詳しく紹介するとして、まずは「GALLERY ROOM・A」のご紹介からはじめましょう。

遠山:オープニングを飾るのは、アーティスト藤元明さんです。ここでインディペンデントキュレーターの青木さんが来てくださったので、少しお話をうかがいたいと思います。青木さん、どうして今回藤元さんを選んだんですか?

青木:今回展示した藤元さんの作品は、昨年、東京駅近くの丸の内・仲通りに面する国際ビルヂング1階をアトリエ化した展示「「ソノ アイダ#有楽町」を開催した時に、そこで制作していたものなんです。この「ソノアイダ」は、2015年から始まった藤元さんの一種のプロジェクトで、これまでに三宿や蒲田、自由が丘などで、例えば立て直しまでに占有権のない空き物件や空間をメディアとして活用するというプロジェクト。それで、有楽町で制作した作品は制作したものの、ちゃんとした発表の機会がなくて。でもせっかくの新作を発表しないのはもったいないので展示しませんか、ということで、今回オープニングを飾っていただくことになりました。

鈴木:確かに制作しても直に見てもらう機会が今は減ってきてしまっています。そんな中でこうやって新作を発表できるのは、本当にタイミングもよかったですね。では作品について解説していただきましょう。今回は、有田焼の壺に転写型絵付釉薬やペインティングを施して、作品として蘇らせたシリーズや、平面作品が展示されています。

青木:まず平面作品ですが、「Landslide」というシリーズです。いわゆる「地滑り」の現象を絵具を使ってキャンバスにある意味再現しています。

鈴木:近くで見てみると、なんだか透明なところがあったり、いろんな比重のタイプの絵具が使われている気がします。

青木:そうなんです。複数の絵具を使って、実際のキャンバスより一回り大きいプールを作って、その中に絵具を流し込んで、キャンバスをご自身でそのプールの中にくぐらせて、揺らしているんです。そうすると絵具が自然と重なり合っていって、人だと描き出せないような絵柄になるんです。

鈴木:描かないで描くっていう感じはすごくありますよね。

遠山:展示されているのは、そういうプールみたいなので作ったものばかりなんですか? 垂らしているような作品もあるから、ほかのやり方もあったり?

青木:そうですね、プール以外にロール状のキャンバスをピンッと貼るのではなく、真ん中をたるませるようにして、そこに絵具溜まりを作るという方法もあります。実際にその機械を作って、たるませたり巻き上げて立てたりしているんです。

鈴木:溜まりから垂直にして、絵具を定着させるんですね。

遠山:全部大掛かりですよね。

青木:制作風景を見ていると、一種のスポーツみたいですね。

鈴木:こういう一見絵具を飛ばしたような作品というのは、ジャクソン・ポロックや白髪一雄を思い起こさせますが、彼らは基本的には自分の手足を使って絵具で描いています。偶然性と言いながらも、実際には計算された絵画でもあるんですよね。もちろん藤元さんも計算された偶然性があるけれども、でも絵具の比重なんかは操れないから、実際にできあがってみないとわからない。

遠山:そういうできあがってみての面白さ、というのはアーティストとしても計算できないですよね。見る側もこれはどうやって描かれているんだろう、何で描いているんだろうという知りたい気持ちが湧き上がる作品だけど、もしかしたらアーティストもどうできあがるのかわからない楽しさを持っているんじゃないかな、という気がしますね。

鈴木:ちなみにもうこれから先の展覧会も決まっているんですか?

青木:次回は5月29日から小川武さん、7月10日からDIEGOさんの展覧会を予定しています(会期等は変更となる可能性もあります。詳細はホテル公式サイトでご確認ください)。このホテルに訪れることで、アートの今までにない未知なる使用価値というのでしょうか、そういうことを体験してもらいたいと思っています。さらにはここで作品鑑賞も購入も宿泊もできる、アーティストと直接対話できる機会もあります。そういったことを通じて、作品たちが人々を癒したり、またある時は学びも与えていければと思っています。

時間と重力と睡眠?

鈴木:では今度は遠山さんとふたりで客室を見ていきましょう。最初に遠山さんが言ったように、「Concept Room」と「Answer Room」の2部屋が用意されています。

遠山:2部屋だけなんですよね。アートホテルというと、そのほとんどが全室に何かしらの作品を飾っていたりすることが多い。ここはアートホテルだけど、たった2部屋だけというある意味潔さがいいですよね。でもそれ以外のところでとてもボリュームのある展示がされている。

藤元明《Gravities_BW#4,5,6》(2020)

鈴木:しかも誰でも見られる場所と、宿泊者限定というメリハリも効いているのがいいですよね。ということで、宿泊者の中でも、その部屋に泊まることで見ることができる作品、まず「Concept Room」には、藤元さんの大型平面作品《Gravities_BW#4,5,6》が展示されています。

遠山:青木さんの説明にもあった、ロール状のキャンバスをたわませて制作した作品です。今回実際に部屋に来てみて、これらの作品の重力性というのかな、時間をかけて重力によって絵具が下へと落ちていき、緩やかにできあがっていく過程と、自分がベッドに入って、ベッドに沈んで眠りに落ちていくのがすごくリンクしていると思ったんですよね。

鈴木:眠るというのは重力に自分の身体すべてを委ねるということ。人はほとんどその重力に逆らって立ち上がったり歩いたりしているんだけど、そこからリリースされるのが眠りだとしたら、藤元さんの作品と自分の身体そのものが通じ合って、リンクするように感じるんだと思います。

遠山:絵の方は絵具がリリースされて、藤元さんの手によってキャンバスにその身を委ねる。

鈴木:だからベッドの上の人体が絵具なのかもしれないですね。

遠山さんの作品《10進法の時計》(2021)

遠山:私の作品は、退化した国民に対して、政府が合理化のために時間を10進法にした時計。失われた2時間、この2時間というある種無駄な時間を削いだ10時間という中で、実は無駄だと思っていた2時間にこそ豊かさがあったかもしれない、というコンセプトなんです。それに呼応して、今回は藤元さんが作品を制作してくれました。

鈴木:遠山さんは「時間」をテーマにしているということですよね。藤元さんの《Snap#Drifting Line_02》はどういった呼応をしたんでしょうか。

藤元明《Snap#Drifting Line_02》(2020)

遠山:そのあたりは、ぜひ宿泊する人だけが聞けるアーティストの音声を聞いてほしいんですが、私の見解をここではお話ししたいと思います。よく見ると、「2021」という文字が見えてきませんか?

鈴木:本当だ。これは藤元さんがやってきた「TOKYO 2021」プロジェクトと何か関係があるんでしょうか。

遠山:そうだと思います。「TOKYO 2021」は藤元さんが2016年に、新国立競技場建設予定地の前に木製の2、0、2、1(高さ3.6m、幅10m)のオブジェを設置しました。これは「2021」がひとつの景色として、オリンピック開催の地に収まることで始まったプロジェクトです。本来開催されるはずだった2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け演出される価値観に対し、呼応することで成立する、藤元さんの「問い」。そしてオリンピックのために東京という街は大きく変貌し、経済も大きく動きました。でも終わったあとの東京はどうなっているのか? そういった先のことを考えてほしいという象徴でもありました。しかし2020年の東京オリンピック・パラリンピックは新型コロナウィルスの影響により、延期に。そして2021年5月の時点でもどうなるかまだ先が見えていません。

鈴木:奇しくも、この作品も失われた2つの時間なんですよね。20年に立ち消えて21年に本来は問題なく開催されると考えられていた東京オリンピック・パラリンピックが、今もどうなるかわからない。この作品2つが組み合わさることで、未曾有のこの事態を「時間」というキーワードで考え直す、見つめ直すきっかけにもなる気がします。

鈴木:来られない方もぜひ、失われた2つの時間がどういうことなのか、自分にとってどうだったのか、ということを考えてほしいですね。でもこの2つの部屋の作品、遠山さんの作品は常設なんですが、ギャラリーで個展を開催する作家がその都度、遠山さんの作品に呼応した作品を作るということなんですよね。

遠山:そう、変わっていくんです。もちろん「Concept Room」も。かなり頻繁に入れ替わるというのも特徴。

鈴木:それぞれがどう遠山さんの作品に呼応していくのか。それを毎回観に来るというのも楽しみの一つかもしれません。

鈴木:実際に自分の部屋に作品を飾るっていうのは、なかなか想像がつきにくいものですよね。そういった時に、こういったアートホテルに泊まってみるっていうのがいいかもしれません。

遠山:もちろん「ホテル」というのは、一般的な住空間とは離れた空間で、非日常を求めて行く場所だけど、でもここを自分のベッドルームやリビングという住空間とつなげて想像することもできる。新しい住居を考える時に、その延長線上としてのモデルと見ることもできますよね。

鈴木:そうなると、自分の家の想像もできるけど、例えばリビタさんと一緒に部屋や家を作る時の大きなヒントにもなる気がします。

遠山:初めからアートありきのインストールをしているこういう試みっていうのは、ほかのアートホテルや一般の人にもいいプレゼンテーションになりますよね。

鈴木:でもこう言ったら失礼だけど、世の中にはアートホテルと銘打ってるけど、行ってみたらちょっとがっかりするところもあるじゃないですか。

遠山:それこそ小さな版画が数点飾ってあるだけとか。

鈴木:期待して行ったのに、これだけかっていうがっかりを味わうのはもったいない。そういう意味では、ここは例えば作品が展示していない部屋に泊まったとしても、宿泊者限定で見られる作品やストレージが地下にあったりして、ものすごくお得ですよね。

遠山:ギャラリーの裏側を見られるような特別感も感じられるし。

鈴木:ただホテルに泊まってアートを感じるだけじゃない空間を味わえる。ホテルだけど、ギャラリーにも美術館にもストレージにもなる、それがこのKAIKAの魅力だと思います。それにこの墨田区という土地だからこそのリンク性なんかもこれから見られるといいなと思いましたね。

遠山:ちなみに館内の作品はもちろんArt Stickerのアプリから詳細を見ることができますので、皆さんアプリをぜひ活用しながら見てほしいですね。そしてホテルのこれからの展開にも期待しています。

Information

KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS
https://www.thesharehotels.com/kaika/

The Chain Museum
https://t-c-m.art

ArtSticker
https://artsticker.app

profile

遠山正道

1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。

▶︎http://www.smiles.co.jp/
▶︎http://toyama.smiles.co.jp

profile

鈴木芳雄

1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

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