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Living with Craft Comfort――心地よい空間で味わう、ヴィーガンランチ
Life Scene with a Story

Living with Craft Comfort――心地よい空間で味わう、ヴィーガンランチ

Living with Craft Comfort――手仕事と暮らす、心地よい空間

それぞれの家には、「住まう人」の物語が宿っている。R100 TOKYOの住まいを舞台に、住む人の「豊かな暮らし」のワンシーンを描くショートストーリー「Life Scene with a Story」。連載4回目は、IT系の会社を経営する僕とアロマテラピストの妻が暮らす、和の民芸品や昔の生活用具がセンスよく飾られた住まいの物語。妻によるヴィーガン料理を囲んで来客をもてなす週末の午後、リビングに掛けられた大きな「簑(みの)」と、温かく時を刻む「時計」に見守られるかのような穏やかな時間を描きます。登場するヴィーガンレシピも紹介。

Text by Miki Numata
Photographs by Teruaki Kawakami
Recipe&Styling by Saiko Hashimoto

週末の昼食を、友人夫妻と

「そうだ、日曜はどなたかをお呼びしてうちでランチしない?」。妻が急にそんなことを言い出した。おかげで昨日の土曜は片付けで一日が終わってしまったが、そう言えば年末以来ろくに掃除もしていなかったので、ちょうどいいと言えばそうだし、ついでに書斎も整理できたので一石二鳥ということにしておこう。

妻は最近、ヴィーガン料理を習い始めた。本業のアロマテラピーから派生して、植物染料を使った染織をやってみたり、自然の素材を使った料理やお菓子を作ったり、どうやら趣味が増えたようだ。

この1年は私が自宅で仕事することが多くなったので、以前に比べると家の中で顔を合わせる時間が長くなった。もしかして妻のほうは、いささかウンザリしているのかもしれない。まあ、彼女の気分転換が私においしい影響をもたらしてくれるのは悪いことではないと、ありがたく楽しませてもらっている。

「まずは、ウェルカムフレグランスから用意しなきゃ」と、朝から寝室を占領して、(私から見れば)化学実験めいたことをしている。ゲストを迎えるときにはまず香りから、というのが彼女のセオリーだ。

「できた。初夏らしくベルガモットとミント、そしてレモングラス」
「へえ、爽やかだねえ。それになんとなくおいしそうでもある」
「そう、そこ大事!」

毎週農家から取り寄せている野菜が届いた。穫れたての野菜はみずみずしく、香りもしっかりある。定期便の中に何が入っているかで季節を感じられるなんて、都会の真ん中で常にPCと向き合っている私には新鮮な驚きだった。

「立派な野菜! インスピレーションが湧いてきたわ。さて、料理を始めるとしましょう」

キッチンからいい香りが漂ってきた。野菜、ハーブ、スパイス、そしてアロマの香りも相まって、まるで異国にいるような気分になる。

「僕はちょっと仕事を片付けてくる。味見が必要だったら遠慮なく呼んでくれよ」

手仕事の温もりに、心を委ねる

壁にかけられているのは、青森の「伊達ゲラ」という蓑(みの)。首の周りの模様でその美しさを競っていたと言われている。

代々農家を営む家に生まれ、のんびり育ててもらったけれど、大学で上京してからはITひとすじでプログラマーを志した。今は、友達と立ち上げた会社がそこそこの業績を上げて従業員を抱えるようになり、それなりに忙しい。この生活に特に不満はないし充実してはいるけれど、日々刻々と進化し、動き続けるデジタルの世界にいると、時々ふと、対極にあるものが恋しくなることがある。

リビングのいたるところに、各地で集めてきた工芸品や古道具が置かれている。まるでそこだけ異なる時間が流れているようだ。
リビングのいたるところに、各地で集めてきた工芸品や古道具が置かれている。まるでそこだけ異なる時間が流れているようだ。
リビングのいたるところに、各地で集めてきた工芸品や古道具が置かれている。まるでそこだけ異なる時間が流れているようだ。
リビングのいたるところに、各地で集めてきた工芸品や古道具が置かれている。まるでそこだけ異なる時間が流れているようだ。

「手仕事」に出合ったのはそんなときだった。手の感覚に集中して作る工芸品や、体で覚えた職人技、あるいは昔から伝承されてきた民芸品や生活用具。そうした、人の気配を感じるものに対峙すると、すうっと心が整って静かな気持ちになれる。人の力は、手の温もりは、数値では測れない力を持っているのだ。

「ちょっと、お豆の味見する?」
「喜んで!」
「少しかためが好きなんだけど、どうかな」
「絶妙な茹で加減だよ。シンプルでいいね。これをつまみに飲めそうだ」
「そればっかり。まだ昼間よ!」

今日ゲストを招くのには、もうひとつ理由があった。最近入手したこの時計を、古道具を扱う友人に見せたかったのだ。「ヤタガラス」というこの時計には時を超えたエピソードがある。かつては世界中で使われていながら、1990年代に途絶えてしまった「ニキシー管」。史上最も古いといわれるこのデジタル表示機器を復活させ、美しく蘇らせたのが「ヤタガラス」だ。職人の技術とテクノロジーが生み出した芸術品。この話を聞いたときには、多少なりともデジタルに携わる人間として震える思いがした。

「ご自慢の時計の調子はどう?」
「上々だね。きれいなオレンジ色で時を知らせてくれるよ」
「さて、そろそろお昼ね。テーブルを整えてくれる?」
「承知しました、奥様!」

気の置けない友人と楽しむくつろいだ食事

今日のメニューは彩り豊かな野菜が中心。スターターにはそら豆のすり流し。春キャベツのステーキと蒸しにんじんのディルマリネ、ワイルドライスとドライトマトのソースを添えたきのこのソテーに、オレンジのレンズ豆と玄米あずきごはんをワンプレートに。塩麹ドレッシングのコブサラダときつねコロッケを大皿に盛って、箸休めにはうずら豆を。

「これが全部ヴィーガン? お肉も魚も使っていないの?」
「そうなの。最近ちょっとハマってて。どうぞたくさん召し上がれ」

古道具や民芸品を扱う小さなギャラリーを営む友人とは、5年ほどの付き合いになる。ふらっと入った彼の店に展示してあった蓑に吸い寄せられ、購入したのがきっかけだ。奥様は染織家で、妻の染織の先生でもある。

「あの伊達ゲラもちゃんと飾ってくれてるんだね、嬉しいよ。店にあったときよりもずっと素敵に見える。それにしても、いろいろ集めてるね。民具からアートまで、まるでギャラリーだ」
「お、プロに褒められたぞ。悪い気はしないね。その蓑の下の時計が、ちょっと珍しくてね、後でゆっくり見てほしいな」

好みの方向性が似ている友人たちとの食事はリラックスできていい。そして、人とリアルに会うということはやはりとても大事なことだと実感する。最近はリモートワークで会議も画面越し。遠く離れたところにいる人ともリアルタイムでコミュニケーションができるのは素晴らしい進化だが、こうして顔を合わせることでこそ真の交流ができるように思う。

「本当においしかった。たくさんいただいたわ。それにしてもお料理とっても上手ね。今度教えていただきたいわ」
「ごちそうさまでした。満腹だ。レストラン以上だね」
「あら、ありがとう。頑張った甲斐があったわ。食後はあちらでお茶をどうぞ。薬膳とまではいかないけれど、食事の後のおなかにやさしいお茶を用意しました」

居心地が良い、ということ

一日の大半の時間を仕事に費やし、家では寝るだけ。そんな日々もかつてはあった。そしてそれもまた大切な経験だとは思っているが、今は、住む家の居心地の良さがいかに大切かを心から実感する。仕事をするにせよ生活するにせよ、場所が生み出す空気の温度や質感は人に深くコミットしてくる。波長の合うモノたちに囲まれて暮らすことの心地よさを味わうと、自分の居場所はここだ、と確信し、そして安心する。

私にとってそれは、人の手によって作られ、語りかけるように存在する工芸品や民芸品との暮らしなのだ。

「あの蓑、最初はちょっと怖かったけど、すっかり馴染んだわね。なんだか居心地が良さそうにしているわ」

初夏の穏やかな光が、私たちの部屋を暖かく照らしている。

Today’s Recipe 1 そら豆のすり流し

[材料](作りやすい分量)
そら豆 さや付き8本
昆布だし 50ml
無調整豆乳 50ml

[作り方]
1. そら豆はさやから出し、塩を加えた湯で8分程度、やわらかくなるまで茹でる。飾り用に2〜3粒は5分程度で引き上げておく。それぞれ冷水に取って色止めをしてから薄皮をむく。
2. 1.と豆乳、昆布だしを合わせ、ハンドブレンダーやミキサーなどで撹拌してざるで漉す。温めて塩を加えて味を調え、器に盛って飾り用のそら豆を散らす。

Today’s Recipe 2 春キャベツのステーキ デュカ風味

[材料](2人分)
春キャベツ(またはちりめんキャベツ) 小1/2個
オリーブオイル 適量
デュカ
コリアンダーシード 小さじ1/2
キャラウェイシード 小さじ1/2
ミックスナッツ   大さじ1
塩  適量

[作り方]
1. キャベツは芯を付けたままくし形に切る。フライパンにオリーブオイルを熱し、キャベツを並べて両面をこんがり焼く。焼けたら塩を少々ふり、蓋をしてキャベツが程よくしんなりするまで火を通す。
2. デュカを作る。コリアンダーシードは小鍋などの底を使って粗くつぶす。ナッツ類は包丁で細かく刻む。スパイスとナッツを合わせてフライパンに入れ、弱火で香りが立つまで乾煎りする。1に好みの量ふりかける。

Today’s Recipe 3 きつねコロッケサモサ風

[材料](6個分)
じゃがいも(あれば男爵いも) 中2個
玉ねぎ(みじん切り)   1/4個
油揚げ 3枚
トマトペースト 小さじ1/2
味噌      小さじ1/2
米油      適量
付け合わせ
 新ごぼう 適量

[作り方]
1. じゃがいもは水から茹で、温かいうちに皮をむいてつぶす。
2. フライパンに米油少々を熱し、玉ねぎを入れて色づくまで中火でしっかり炒める。トマトペーストと味噌を加えて玉ねぎになじませたら1に加えて混ぜ合わせ、塩少々(材料外)も加え味を調える。
3. 油揚げはキッチンペーパーでしっかりと両面の油を取りのぞく。平らな場所に並べ、上に丸い菜箸などを転がしてからそれぞれ半分に切る。袋を開いてひっくり返し、一辺だけをハサミで袋の角まで切る。
4. 1を6等分して俵形に丸めたら、3に角までしっかり詰めて三角形に成形する。
5. 多めの米油をフライパンに熱し、4を入れて両面を揚げ焼きにする。
6. 付け合わせの新ごぼうを細長く切って素揚げする。
7. 器に5と6を合わせて盛る。

Today’s Recipe 4 ソース2種

●ワンプレートディッシュのきのこのソテーにかけた、ワイルドライスとドライトマトのソース

[作り方]
茹でたワイルドライスと刻んだドライトマト、みじん切りにしたにんにくをオリーブオイルで炒め、塩で味を調える。きのこのソテーのほか、野菜や蒸し鶏などでも食感と旨味が加わり、食べ応えがアップする。

●山盛りサラダにかけた、塩こうじシーザードレッシング

[作り方]
塩こうじ、米酢、オリーブオイルを好みの加減で混ぜ合わせる。とろみのある旨みたっぷりのドレッシングはどんな野菜にも合わせやすい。

Information

撮影協力:YATAGALLAS

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