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遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.20 新種のイミグレーションズ-ゆるやかなつながりをもつ
今日もアートの話をしよう

遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.20 新種のイミグレーションズ-ゆるやかなつながりをもつ

新種のイミグレーションズ-オンラインサロンではなく、目指すのはコミュニティーとしての活動

「Soup Stock Tokyo」を立ち上げた、実業家の遠山正道氏と、美術ジャーナリスト・編集者であり、長年雑誌「BRUTUS」で副編集長を務め「フクヘン。」の愛称をもつ鈴木芳雄氏が、アートや旅、本や生活について語る「今日もアートの話をしよう」。20回目は、遠山氏が立ち上げたコミュニティー『新種のイミグレーションズ』について。

Text by Fumi Itose
Photo by Takashi Mishima

小さな国へと入国する

鈴木:遠山さんはこれまでに、Soup Stock Tokyo、giraffe、PASS THE BATON 、さらにはThe Chain Museumなど、さまざまな事業を展開してきました。そんな中、2020年7月30日、『新種のイミグレーションズ』(以下:イミグレ)というサロンを立ち上げ、会員を募集。このサロンを遠山さんは「コミュニティー」と呼び、小さな国のようなものだと定義し、会員のことを「住民」、会費のことを「住民税」と呼びます。僕も立ち上げと同時にすぐに入国希望して、住民となりました。まずはイミグレを立ち上げた経緯から教えてください。

遠山:2020年といえば、新型コロナウィルスで世界中が自粛を余儀なくされました。イミグレをつくろうと思ったのは、その春のこと。初の緊急事態宣言が発令された中でした。いざステイホームとなって家族との時間が増えると、幸せだなって感じたんです。正直、30年以上の間、私の時間はほとんど仕事で埋め尽くされていました。もちろん家族との時間も大事にしていましたが、それもすべて仕事という枠組みの中での出来事だったのかな、自分のやりたいこともおもしろいことも夢も希望もすべて仕事に託してきて、私個人の枠組みの中でのことじゃなかったのかなって考えてしまって、ゾッとしたんです。

鈴木:でも仕事漬けの生活が遠山さんにとっては当たり前というか、それが日常だったんですよね。それがガラッと変わったことで、自分を見つめ直したというか、気づくことが増えた。

遠山:それまでは昼も夜も外で食事したり飲みに行ったり。それが当たり前だったんだけど、コロナによって家で料理をするようになり、家族とゆっくり話す時間がある暮らしっていうのはなんて豊かな時間なんだ、というのは、大きな気づきでしたね。そういった気づきは私だけじゃなくて、誰しもがステイホームとなって、自分を見つめ直し、いろんなことに気づいたと思ったんです。

鈴木:そうですね、自分の生活のことはもちろん、仕事のあり方ややり方、いろんなことが一気に変わっていき、ある意味気づかざるを得ないところもあったと思います。僕自身もいろいろなことを考えました。

遠山:変わらざるを得なくなった中で、何かおもしろいことができないかと考えて立ち上げたのがイミグレでした。イミグレは、新たな幸せの形や、自分の足元を再確認し合えるような新しいコミュニティー。老若男女問わず、いろんなバックグラウンドを持つ魅力的な人々が集まって、彼ら自身にとってこのコミュニティー自体が心地よく、幸せを得られる場所にしたいと考えたんです。はじめから住民は多種多様。超有名企業のトップもいれば、現役の大学生もいて。私が知っている人もいれば、知らない人もいる。その出会いもおもしろいし、何かが生まれるだろうという間違いない確信もちょっとあった。

鈴木:遠山さんは立ち上げ当初から、積極的に住民と関わり、さらには住民同士が関係を持てるようにいろいろと企画を立てていますよね。

遠山:コロナ禍だから、対面でみんなで会って自己紹介して、というのはなかなか難しくて。だからオンラインでの住民紹介をまずはやりました。はじめてみると、みんな簡単に2、3分で自己紹介してくれたんだけど、それがすごくわかりやすくておもしろかったんです。有名企業で働いていたりするのに、誰も会社名を名乗らなくて。ああ、それまでの自分の社会関係資本などとはまた別の関係性をここでつくりたいんだなって。嬉しかったですね。

鈴木:あとで「え? この人すごい人だったんだ」って僕も知って、驚いた人もいました。あと実は仕事で会ったことがあったりとか、思いがけない再会もあったりして。立ち上げから一気にいろんなイベントが組まれていきましたね。少しコロナが落ち着いてくると、実際に会ってみたり、イベントとして遠山さんの北軽井沢の別荘に行ったり。

遠山:みんなが使えるような保養所的な場所を借りたり、建築巡りをしたり、カフェオープンのお手伝いをしたり、人生相談してみたり。私は、長ではあるけれども、私主導ではないようにしています。みんなが自主的にイベントを立ち上げ、興味がある人が参加して、輪を広げてほしいんです。だからそこに私のルールがあるわけじゃなくて、非中央集権で個々も大事にしながら、国の中でいろんなユニットが生まれればいいなと。それがいろんな形で中や外で活動を起こして、何かが生まれてほしいと思っています。

コミュニティーの活動を社会に出す

遠山正道《社長の椅子、子供の椅子。》

鈴木:そんなイミグレの活動も丸2年が経ちました。イミグレの存在意義として、遠山さんはよく、魅力的な個人が集まり、その魅力を使って、価値を生み出し、社会にも提供、貢献し、何かを提案できるのではないかと言っています。ただ、どうしてもコミュニティーとなると、コミュニティー内での活動が多くなってしまいますよね。

遠山:そうですね。これまではどちらかというと、コミュニティーの中で情報共有し、一緒に時間を過ごし、楽しいことをしようという感じでした。まずはコミュニティーにどんな人がいて、何ができるのかということを、たくさんのイベントで人が集まることで情報交換していた、ということかもしれません。でもとんでもなく魅力的で、行動力がある人ばかりが集まったこの住民でもっといろんなことを外に向けてやりたいと思い、それのひとつの形として、『新種のバザール展 by 新種のimmigrations』をこの9月に開催しました。

鈴木:説明するとすれば、どういったイベントだったでしょうか。

遠山:売れなくてもいいバザール(笑)。展覧会のような、バザールのような、商店でもあるような。また、個が表現することを何とか推し進めてみようとする、当たり前で新種の実験的な場所として開催しました。

鈴木:それにいままでどちらかというと内向きだった活動が、外向きに進む大きなきっかけになると遠山さんは考えたと。

遠山:そう、今回がはじめて外に開く大きな会だったんです。皆さんからもちろん会費を毎月いただいています。コミュニティーは普通閉じてるからお金を払う価値がある、という部分がありますよね。でもそれだけだと狭くなって、内輪だけで盛り上がって、せっかくの活動が誰の目にも止まらなくて、めちゃくちゃおもしろいことをやっていても外へと共有ができない。それってもったいない。閉じ方と開き方のメリハリがコミュニティーには必要だと思うんです。

鈴木:実際の国にたとえることができるかな。誰でも入れるわけではないけど、国の情報や文化を外へと発信され、それを共有することはできる。

遠山:そう。そしてそこで起こったおもしろい活動やアイディアが外へ出て、外でも当たり前の文化になったりしたらものすごくおもしろいと思いませんか。そういうことも一部目指しているんです。

近藤雅士『Colors of the Seasons』
渡辺龍彦『お習字の標本』
松島宏佑|team〈kodou〉『ぼく、ホタルになる。』
伊藤弘子『新種の運動会「3人4脚3ピカ」』
兵頭美貴子『占いバーと場』
チルチッタ『よいことがあるように』
モリワッキー『どれどれこーど』
腸内芸術『スナック 腸』
「スナック 腸」の横には、「Gosnells Of London」という、ミード(ハチミツのお酒)が楽しめるブースも

鈴木:僕も遠山さんと一緒に参加させてもらいましたが、飲食もあれば、ファッションに福祉、現代美術や占いと多種多様。さすがいろんなバックグラウンドを持つ住民がいるからこそできるバザールだったなと思いました。それにこの連載にも出てくれた、アーティストの立石従寛さんや山脇紘資さんの作品も展示されていました。

立石従寛《Reframing the Frames》
山脇紘資《珍種の新奇》

遠山:出展者それぞれの経験や職業、専門性、キャラクターを生かしたバザールになったと思います。

夕月『新鮮・オトナ園』バザールのビジュアルの元となった絵。遠山さんは絵の中の住人に扮装。当日はグッズも販売された

鈴木:そんなバザールを成功させた遠山さん。イミグレはこれからもどんどん進んでいくと思います。今後の展開や展望などはありますか?

遠山:ここに来てもう一段ギアを上げたいなと思っています。ただの仲良しクラブだとつまらない。内側だけで楽しんでいるのではダメ。せっかくいろんな人がいるんだから、自分の軸をもっと持ってもらいたいし、イミグレだけでなく、個人にも、彼らが生み出すものにも、価値を生み出したいと思っています。芳雄さんはイミグレに参加してみてどうですか?

鈴木:僕にとっては活動場所でもあるけど、情報源として活用させてもらってるところもあるな。いままで関わってきた分野の人もいれば、まったく関わってこなかった分野の人もいる。いわば、他文化、多言語の世界にスッと入らせてくれるイミグレはまだまだ未知数だなと思うところもありますね。だからこれから何が生まれてくるのか楽しみ。

遠山:でもまだまだ幽霊住民もいたり(笑)。でも彼らも情報源としてこのイミグレを使ってくれているなら嬉しいな。そういう人も遠慮なく参加してほしい。何かやりたいことがあるなら、手を挙げてほしいですね。どんなことでもおもしろがって「やろうよ!」って言ってくれる人が必ずいますから。表現することを恐れないでほしい。あとは、立派な肩書きの人たちをもっと巻き込みながら、何かしたいですね。彼らがコミュニティーをつくったらどうなるだろうとかも考えるけど、このイミグレがいろんなコミュニティーをつくるきっかけにもなってほしいなと思っています。

鈴木:現在、イミグレは住民募集してる?

遠山:随時しています。正直誰でも簡単に……というコミュニティーではないのですが、もし興味がある方がいたら、ぜひ問い合わせしてほしいですね。一緒に何かを表現していければ嬉しいです。

Information

新種のimmigrations
申し込み(問い合わせ)先
▶︎https://immgr.site/about
ただ待っていても始まらないが、自分から取りに行く感覚がある人なら、どんどんapplyしてください。HPからapplyすると、我々も気付かずにしばらく音無しだったりもしますが、負けずに待っていただいて。

profile

遠山正道

1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。

「新種のバザール展」については、こちらをご覧ください
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000062411.html/

▶︎http://www.smiles.co.jp/
▶︎http://toyama.smiles.co.jp

profile

鈴木芳雄

1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

▶︎https://twitter.com/fukuhen

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