国内外の出張に便利な立地にある、ヴィンテージマンション
新幹線や飛行機にアクセスしやすい品川駅。このエリアに10年以上住んでいるというMさんご一家は、築浅のタワーマンションから、R100 tokyo がリノベーションした築50年のマンションに住み替えた。
「国内外の出張が多く、どこに行くにもこのエリアはとても便利で離れられません。子どもたちの学校も近いので、エリアを絞って物件を探していました」
70㎡台の2LDKだった以前の住まいも気に入っていたが、子どもたちが自分の部屋を欲しがるようになり、100㎡以上で3LDKの間取りの住まいを探していた。しかし、希望のエリア内で理想的な間取りの物件はなかなか見つからなかったという。
「適度な広さの個室が3つあり、全部の部屋に窓がある物件はありませんでした。この住まいは入った瞬間にすごく明るく感じて、都心の好立地にもかかわらず眺望の抜け感もあり、ひと目で気に入りました。3つの個室が横並びになっていて、それぞれの部屋に窓があって景観もよく、求めていた間取りのイメージにもぴったり。主寝室にはウォークインクローゼット、長男と長女の部屋には通路を挟んでそれぞれの収納もあって、使いやすそうだなと感じました」
そう話す夫は、以前から外観やバルコニーの形状に個性があるこのマンションの前を通る機会が多く、気になっていたという。購入を検討するにあたり、建物の歴史をひもといていくと、竣工当時に居住者が住まいをカスタマイズできる仕組みが取り入れられており、現代にも通じる先進的な暮らしを提案していた物件であることも分かった。共用部には絵画や彫刻が飾られ、1階のロビーには居住者専用のサロンもある。美術館のような気品と佇まいを持つ唯一無二のヴィンテージマンション。そのストーリー性にも惹かれたとMさんご夫妻は話す。
「香港に住んでいたときも古い建物をリノベーションした住まいを借りて暮らしていました。価値ある古い建物をリノベーションでモダナイズしてより魅力的な住まいにするという手法は、とてもいい暮らし方だと感じています」(夫)
人が集まり会話が弾むアイランドキッチンと効率的な動線
個室が3つあるという理想的な間取りだったことに加え、約30畳の広々としたLDKとその4分の1を占めるオープンなキッチンは、料理好きなMさんご家族のお気に入りの場所だ。友人たちを呼んで、ご夫妻でキッチンに立ち料理をつくり、長女はお菓子づくりでもてなすことも。床が一段高くなっていることで、ステージのようにリビングダイニング全体を見渡すことができ、料理をしながら窓の眺望も楽しめる。
「日常的にもキッチンにいながら、ダイニングやリビングにいる家族と話す時間が増えました。大きなキッチンですがアイランドだから圧迫感がなく、お客さまが来るとキッチンの周囲に自然と集まり、会話しながら料理ができて楽しい。隠すところがなくすべてオープンなのですが、背面に十分な広さのパントリーがあるので、冷蔵庫やゴミ箱など見せたくないものはしまっておけるのも便利です」(妻)。このパントリーは玄関ホールへ抜ける動線にもなっていて、買い物から帰ってきてすぐにパントリーや冷蔵庫に食材や日用品をしまうこともできる。パントリー内には洗濯機も収まり、バックヤードや家事室のように使っているという。
さらに、玄関ホールと個室の間にオープンな洗面台があることも特徴的だ。浴室・トイレ・サブの洗面台をオールインワンにしてコンパクトにまとめ、主となる洗面台は個室の近くに配している。
「2ボウルの洗面台を希望していたので、少し変則的でしたがその要望が叶いました。身支度が渋滞することもなく便利に使っています」と夫。朝起きると寝室にあるクローゼットで着替えを済ませ、寝室を出てすぐの洗面で身支度をすることができる。帰宅後も着替えや手洗いを済ませてからリビングへ向かえるため、動線として効率がよく、コロナ禍以降の衛生面の管理にもストレスがなく、安心して暮らせる間取りとなっている。
ワビサビ的発想で、有機と無機をミックスしたインテリア
Mさんご家族は、千葉に戸建てのセカンドハウスを所有しており、週末には家族共通の趣味であるゴルフを楽しむ。今回はリノベーション済みマンションを購入したが、千葉の住まいは夫が設計して、地元の工務店に施工を依頼した。その住まいでは、Mさんご夫妻が好きな木の風合いを活かした空間づくりをしたという。今回の物件でも、無垢の木が床や建具枠に使われていることが、気に入ったポイントの一つだった。
「玄関とホールを仕切る建具の枠に触れたとき、木の柔らかな風合いがいいなと思いました。床に使われているオークのフローリングも足触りがよくて好きです。シンプルな仕上げのなかに、ほどよく木が使われているのは、とても好感を持てました」(夫)
「壁も全面ではなく一部が塗装になっていて、梁の裏側に間接照明が仕込まれているのも印象がよかったです。全面塗装だと過剰だったかもしれません。さりげなくこだわりが盛り込まれているバランスが好きですね」(妻)
シンプルな白い壁面は、プロジェクターのスクリーンとしても利用しており、機能的にも便利だという。これから白い壁を活かして、絵や写真などを飾っていくことも考えている。
「無垢材や塗装の壁など、シンプルでナチュラルな雰囲気の空間だから、家具は素材感があって木と馴染む異素材を使ったものが合いそうだと考えて、ミニマルにまとまるようにワビサビ的な発想で選びました。木は有機的で経年変化しますが、石や金属は無機的で半永久的に残る。相反する2つの方向性を組み合わせることで、メリハリが出て面白くなると思ったのです」(夫)。ダークグレーのセラミックの天板にブラックのスチールの脚で構成されたダイニングテーブルはその象徴であり、空間をぐっとモダンに引き締めている。今後も家具を吟味しながら「まだ発展途上」という居住空間をつくり込むことを楽しんでいく予定だ。
柔らかな朝日を家族で共有する、豊かな一日の始まり
入居前に、キッチンの近くにご夫妻のリモートワーク用のデスクワーク、個室が並ぶ通路の壁に本棚などを造作して、部分的に手を加えたことも暮らしやすさにつながっている。デスクワークは立って仕事ができるように天板を高めの位置につくりつけ、家事の合間に仕事ができるスタイルに。一段高くなった床のほどよい緊張感が活かされている。余白には床の間のように花が飾られているのも効果的だ。
子どもたちは念願の専用の空間ができたことで、自分の部屋で過ごす時間を楽しんでいる。集中して勉強ができるのはもちろん、長女はヴィオラとギター、長男はピアノを習っていて、楽器の練習をする空間としても快適に使っているという。
妻は絵を描くのが好きでアートスタジオで油絵を学んでいる。玄関ホールの壁には、以前Mさんご家族が住んでいたロサンゼルスのスパニッシュコロニアル様式のコンドミニアムを描いた作品が飾られている。
「ダイニングテーブルの上に油絵の道具を置いていて、気が向いたときにいつでも描けるようにしています。この住まいは広くて空間に余白があるから、何かやろうという気分にさせてくれるのかもしれません」(妻)
一方、夫はこの住まいで暮らし始めてから、植物を育てる楽しさに目覚めたという。
「見学したときにサンプルとして飾られていた植物を購入して育てることにしました。それまではあまり興味がなかったのですが、朝起きて水やりをしながら、日当たりを考えて置く場所を変えたり、日々の生長や変化を観察したりすることに癒やされています。今ではすっかり朝の習慣に。これから自分でも植物を選んで増やしていきたいと考えています」
家族それぞれが自分の趣味や好きなことに向き合う時間を大切にしながらも、リビングダイニングで一緒に過ごす時間も増えたという。夜はご夫妻で映画を観ながらソファでお酒を飲み、その隣のダイニングでは長女が勉強するなど、別々のことをしながらも一緒の空間で過ごす時間が心地いいという。
「朝起きて家族がLDKに集まる頃には、朝日がやさしく差し込んできます。清々しい光に包まれたキッチンやダイニングで、家族みんなで朝食の準備をして一緒に食べる時間は、今までに味わったことのない豊かさだと感じています。この住まいで暮らし始めてから早起きになったし、毎日朝起きるのが楽しみになりました」(夫)
1日が始まるかけがえのない時間。家族の会話や笑顔を増やして、その日をよりよく過ごすための活力を生み出す。そんな美しい朝を積み重ねていくこの住まいは、Mさんご家族の人生をより豊かにするステージになっていくことだろう。