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一緒に暮らしたい、かけがえのないもの<br>Vol.2 「ARIAKE」
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一緒に暮らしたい、かけがえのないもの
Vol.2 「ARIAKE」

ローカリティの恵みと完璧なデザインディレクションから生まれる、日本発の木の家具「ARIAKE」。

数年前、佐賀県諸富町の2つの家具メーカーが、シンガポール出身の新進デザイナーであるガブリエル・タンと出会った。それを起点にスタートした家具ブランド「ARIAKE」は、ストックホルムをはじめ国内外で展示を行い、すでに日本よりも海外で多くの製品が流通しているという。ものづくりの核にあるのは、上質な家具を量産してきた諸富のポテンシャル、ガブリエルによる秀逸なディレクション、そして冒険を恐れないスピリットだろう。国内外の気鋭のデザイナーが手がける、日本のモチーフを現代的に解釈したデザインには、時代に左右されない存在感がそなわっている。一連のアイテムを生み出す諸富の工場を訪ねて、ARIAKEの魅力について探った。

Text by Takahiro Tsuchida
Edit by Masato Kawai(BUNDLESTUDIO)
Photographs by Satoshi Nagare

あるデザイナーの提案が、世界を近づけた。

「ARIAKE」は、有明海にちなんで名づけられた、佐賀県諸富町の家具ブランドだ。デザインディレクターを務めるのは、シンガポール出身でポルトガルを拠点とするガブリエル・タン。30代ながら世界各国のプロジェクトにかかわり、デザインシーンのキーパーソンとして活躍している。ARIAKEが起用するデザイナーは彼に一任され、ノーム・アーキテクツ(デンマーク)、ノートデザインスタジオ(スウェーデン)、アンデシェン&ヴォル(ノルウェー)、芦沢啓治といった注目株が名を連ねる。

またビジュアル面のデザインをマルティナ・ペリン(スイス)が、そのための撮影をセバスチャン・スタドラー(スイス)が手がけている。このように設立当初からトータルにディレクションされた家具ブランドは、日本ではとても珍しい。北欧出身のデザイナーを多く起用しているのも、日本と親和性の高い北欧を海外展開の足掛かりにするためだった。ARIAKEはローカルなブランドだが、その姿勢は本格的なグローバルブランドとして遜色ない。

平田椅子製作所に併設されたARIAKEのショールーム。左の「ショウジ スクリーン」やその隣の「アリアケ アームチェア」はガブリエル・タン、右の「ブレイド ソファ」はノーム・アーキテクツによるデザイン。

諸富町は、日本一の家具産地として知られる福岡県大川市と筑後川を隔てて隣り合う。1950年代、諸富と大川の間に橋ができたことから家具産業を発達させ、特に70年代に入ってその規模を急速に拡大した。当時は世帯を持つと婚礼家具一式を揃える習慣が定着し、諸富もそんな時代の中で技術とノウハウを蓄えていった。

一方で現在は、自分の好みとライフスタイルに合わせて家具を選ぶのが当たり前になった。並行して日本製の家具の市場は徐々に縮小し、海外展開を目指す例も増えている。諸富の家具メーカー「レグナテック」と「平田椅子製作所」もこうした変化をふまえ、2015年と翌年にシンガポールの家具見本市に出展。しかし反応は芳しくなかったと、レグナテックのブランドマネージャー、樺島賢吾さんは話す。

「2年目に出展した時、隣でシンガポールの注目の若手デザイナーの展示があり、そこにガブリエル・タンが選ばれていました。3年間は出展する計画だったので、翌年に向けて彼に家具をデザインしてもらおうとコンタクトしたところ、新しいブランドを立ち上げましょうと提案されたのです」。そこから生まれたブランドがARIAKEだ。

レグナテックのショールームにあるARIAKEのコーナー。洗練されたアイテムの配置がブランドとしての世界観を的確に伝える。
ガブリエル・タンがデザインした「スカイラダー シェルフ」。収納家具だが機能重視ではなく、飾り棚として優美な曲線を取り入れている。国内の他の家具ブランドには真似しにくいスタイルだという。
レグナテックのショールームのARIAKEのコーナーは、国内外の他のブランドのアイテムもスタイリングしてある。

ARIAKEのディレクターに就いたガブリエル・タンは起用するデザイナーを決め、全員を諸富に集めて約2週間のワークショップを行った。デザイナーたちはレグナテックと平田椅子製作所の製造現場を知るだけでなく、日本や佐賀の地域性に触れ、メンバー同士でディスカッションを重ねたという。前述のアートディレクターや写真家も参加して、やがてブランド全体の方向性が固まっていった。

そして2017年、ARIAKEは初めての展示をシンガポールで行う。その後の東京やストックホルムでの展示を経て、知名度は一躍高まっていった。特にストックホルムの展示の反響は大きく、すぐに各国のバイヤーとの関係が築かれた。また展示の画像は多くのメディアに掲載され、SNSでも広まった。なお2万5千人以上のフォロワーをもつARIAKEのインスタグラムは、ガブリエル自身が担当しているという。

 

のどかな環境にあり、構内を風が吹き抜けるレグナテックの工場。
安積伸がデザインした「エレメンツ コートスタンド」は、長さのみ異なる同じ材だけで構成され、向きを変えると表情を変化させる。
レグナテックの工場内で、木の保管や木取りを行うスペース。諸富は大川に隣接する家具産地のため資材の調達や物流についてメリットが多い。
レグナテックでARIAKEの商品開発などを担当する樺島賢吾さん。共にARIAKEを運営する平田椅子製作所と日々連絡を取り合いながらブランドの発展を担う。

家具づくりの経験をアップデートする。

ARIAKEの家具の魅力は、どのように生まれるのか。まず大きな要因は、レグナテックと平田椅子製作所が自社工場を持ち、すみずみまで目の届く規模で製品開発に努めてきたことだ。1964年創業のレグナテックは、箱物と呼ばれる収納家具などに強みがある。そして平田椅子製作所は、脚物と呼ばれる椅子やテーブルを主に手がけてきた。ともにクラフツマンシップを生かしながら最新の工作機器も導入し、諸富のツートップとして産地をリードしている。

 

ただし以前はどちらも外部デザイナーを起用することは少なく、特に海外のデザイナーとは接点がなかった。ガブリエル・タンの提案を受け入れ、従来と大きく違う家具づくりや新しい市場に挑んだことは、両社にとって勇気のいる決断だったに違いない。

「ARIAKEが始まってから、この仕事は英語ができないと話にならないと思い、私は英会話留学をしてデザイナーとのやりとりを担当するようになりました。今年はメキシコとスリランカからの留学生を社員に迎え、これからさらに海外展開に力を入れていきます」と樺島さん。ARIAKEが軌道に乗ってから、社員の意識も変わってきたことを実感するそうだ。

木を藍色に塗装する技術は、ARIAKEのデザインの実現のためにレグナテックとして初めて導入した。
他の家具の塗装はスプレーで吹き付けることが多いが、藍染は手作業で行う。
木目を生かしながら着色するため、刷毛で塗った塗料を拭き取っていく。
藍色に着色した家具は、色合いを確認しながら細かいサンドペーパーで仕上げる。

ARIAKEの魅力のもうひとつの理由は、デザインの質の高さ。これは佐賀を訪れたデザイナーたちが、それぞれに地域性を解釈してデザインを発想していった成果だ。その意図を実現するため、レグナテックが新しく取り入れた工程もある。例えば木を藍色に染める手法はそのひとつ。その色合いは繊細で、作業する日の天気によって色味が変わるほどだという。藍色は、ARIAKEという言葉に通じる、夜明け前の空のイメージを参照したものだ。ただし日本的なモチーフを取り入れながら、世界に通用するデザインとして成立させるのは、決して簡単ではない。ARIAKEのアイテムは、そのバランスが例外なく優れている。樺島さんは、こうした点で特に苦労することはないと話す。

 

「ガブリエルは10回以上も佐賀に来ているし、デザイナーがみんな佐賀を好きになってくれたことが大きいと思います。新しく参加するデザイナーにもその情報が共有されるので、ブランドの枠を大きく外れる提案はありません」。

 

平田椅子製作所で成形合板を制作するために使い続けられてきた工作機械。
最新の工作機械と、長く受け継がれるクラフツマンシップが一体になっている平田椅子製作所の作業場。
刃物の動きをプログラムして高度な造形を実現するNCルーターで使用する治具板。新しい家具を開発するたびに増えていく。
張り地を施す工程も平田椅子製作所が得意とするもの。簡潔なデザインを損なわないように、細部まで完成度を高めている。
平田椅子製作所のNCルーターで削り出した家具のパーツ。複雑な加工を安全に行うことができるが、機械を扱うためのノウハウは欠かせない。

ARIAKEにおけるコラボレーションは、タイムレスにして現代にふさわしい、コーディネートしやすいコレクションとして結実してきた。それぞれのアイテムには個性があるが、強く目を引く家具ばかりでなく、地味にさえ見えるものもある。しかし住空間においては、そんな主張しすぎないデザインでインテリアを構成するのが現代の大きな流れになっている。家で長い時間を過ごすことが普通になったのを背景に、こうしたテイストのニーズが増してきたようだ。

また2018年から3年間にわたりARIAKEがストックホルムで行った展示会が、すべて長い時代を経た建物を舞台にしていたことも思い出される。ARIAKEのデザインはいずれもコンテンポラリーだが、古びた空間にも違和感なく、洗練された雰囲気をつくり出していた。木という素材に丁寧に向き合い、実直に用いているからこそ、自ずと時代を超えた調和が生まれるのだろう。

左から、ガブリエル・タンによる「アリアケ チェア」、同じく「ショウジ スクリーン」、スタファン・ホルムによる「ビームサイドテーブル」、同じく「カーヴ チェア」。
左から、ノーム・アーキテクツによる「ブレイド ソファ」、安積伸による「エレメンツ コートスタンド」、芦沢啓治による「サギョウ ベンチ」。

すべてにおいて規模や効率が追求されがちな現代において、上質な木の家具をつくることは、その潮流に逆行しかねない。自然の素材には個性があり、製造工程で豊かな経験が欠かせないからだ。経年変化を完全に防ぐことはできず、造形にも制約がある。しかしこうした特徴は、タイムレスなものを好み、自分の生活を大切にする暮らし方とは相性がいい。実は地域に密着して木の家具をつくり、クオリティやデザインに妥協しない小規模なブランドは、いくつかの国々に存在する。そこには価値観や世界観を共有するデザイナーが集まり、長期的な視点でものづくりに取り組んでいる。

ARIAKEは、そんなコミュニティと横の繋がりをもちながら、佐賀ならではのブランドとして確固とした存在になりえるだろう。カトラリーの開発や日本酒の酒造り業者との協業など、ライフスタイルをトータルに捉え、地元の産業と組む構想も進んでいるという。ARIAKEの家具を選ぶこと。それは、この国のものづくりの恵みを享受しながら、自然体で暮らしを楽しむことへとつながっていく。

 

profile

ARIAKE

佐賀県諸富町の家具メーカー、レグナテックと平田椅子製作所が2017年に共同で始めたブランド。ガブリエル・タンをデザインディレクターとして迎え、世界各国のデザイナーを起用して国内外で展示を行う。その製品は現在、ヨーロッパ各国、北米、オーストラリアなどでも広く販売されている。

▶︎ http://www.ariakecollection.com/

レグナテック ショールーム CLASSE
佐賀県佐賀市諸富町山領266-1
TEL:0952-47-6193
水曜休

平田椅子製作所
佐賀県佐賀市諸富町大字徳富118-2
TEL:0952-47-6534
定休日なし(大型連休などを除く)

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