シュレッダーとコラージュ。
第19回の今回紹介するのは、河村康輔のシルクスクリーンプリントです。河村さんは1979年広島生まれのアーティストで、アディダスやカシオなど様々なブランドとコラボレーションをしたり、アークテリクスが丸の内店と原宿店で展開しているウィンドウディスプレイプロジェクト『ARC’TERYX UNCOMMON』でも河村さんがフィーチャーされています。また、昨年よりユニクロ UTのクリエイティブディレクターも務めるなど、作家活動に留まらない多岐にわたる分野で活躍されています。
河村さんの作品にはコラージュの技法が多用されており、今回のシリーズでは一旦シュレッダーにかけたモチーフをミリ単位で再構成し、作品に仕上げられています。今回のシルクスクリーンは『Gallery COMMON』が2021年に神宮前に移転した際に杮落としとして開催された河村さんの個展『TRY SOMETHING BETTER』にあわせて限定枚数のみ製作されたものです。
70年代のロックシーンのモチーフにゼラチンシルバーのような色味がマッチしていて、そこにコラージュの雰囲気が絶妙にはまり、そして画面が16分割されているのもまたいいのですが、上記のエキシビションで展示されていたオリジナルの作品(下記の写真)は16枚それぞれバラで制作されたものがこのようなレイアウトに配置されていたのです。
2枚の写真を見比べてもらうと、オリジナルの作品のイメージも伝わるのではないでしょうか。シルクスクリーンに映り込んだ緑は作品の色味ではなく、うちの庭の木々の葉が映り込んでいるものです。この自然のコラージュも意外にいい塩梅でとても気に入ってます。
広尾のバーでの偶然。
実はこの作品、個展のときには抽選ですごい倍率だったか、即完売だったかで購入できなかったのですが、河村さんの作品が看板になっている広尾のバー『Cachette』(確か紹介制だったような、、、)でたまたま河村さんにお会いして感想とかを話していたら、AP(アーティストプルーフ)を出すのでぜひ飾ってくださいと言ってくださり、うちに迎え入れることができました。
河村さんはアルコールは一切飲まれないのですが、バーという場所がこれまた似合う人で、このときは面白い流れで翌日のランチにカレーを一緒に食べ行き、さっそく作品を持ってきてくれたのでした。
Numéro TOKYOの藤原ヒロシ特別号の表紙も。
昨秋発売された『Numéro TOKYO EXTRA Hiroshi Fujiwara presents ARCHIVE of MEMORIES』の表紙も、河村さんがこのシリーズと同じ手法で手掛けた藤原ヒロシ氏のシュレッダーコラージュが表紙になっています。インパクトのあるイメージだったので、こちらは記憶にある方も少なからずいらっしゃるかもしれません。
この号には僕も(藤原)ヒロシさんから現代アートのトピックで何か書いてとオファーをいただいてコラムを寄せさせてもらっています。オンラインにもアップされているので、よかったら読んでみていただけたら嬉しいです。
現代美術、モノからみるか、人からみるか
https://numero.jp/20230227-reciprocity-of-music-with-Oden/
さて、2021年より20回に渡りお届けしてきたこの連載ですが、今回で最終回になります。毎月アートを購入するのは愉しくて愉しくて、企画のために新たに作品を探してきたというよりは、特に意識をせずともまるで呼吸をするかのようにうちに迎え入れた作品をご紹介し続けることができたのではと思っています。これからもコレクションはマイペースに続けていくので、また別の機会にお披露目できる機会があることを願いながら。読んでくださっていた方々、どうもありがとうございました。
profile
1981年生まれ、神戸出身。広告代理店、雑誌編集者を経て、Sumallyを設立。スマホ収納サービス『サマリーポケット』も好評を博している。アート以外にも、音楽、食、舞台、などへの興味が強く、週末には何かしらのインプットを求めて各地を飛び回る日々。「ビジネスにおいて最も重要なものは解像度であり、高解像度なインプットこそ、高解像度なアウトプットを生む」ということを信じて人生を過ごす。
サマリーポケット
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