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イスラエル人外交官と写真家の、「旅とART」が彩る暮らし
My Life with ART

イスラエル人外交官と写真家の、「旅とART」が彩る暮らし

「言葉がなくてもわかり合える。アートは最良のコミュニケーションツール」――イスラエル人外交官と写真家の、旅とARTのある暮らし

「アートが人生をより豊かにする」をテーマに、アートを取り入れたライフスタイルを紹介する連載「My Life with ART」。5回目は、駐日イスラエル大使館で文化・科学担当官を務めるアリエ・ロゼンさん(トップ写真左)とフォトグラファーのノアム・レヴィンガーさん(同右)カップル。日本各地を旅して集めた工芸品や骨董品、故国イスラエルのアートが彼らの暮らしを華やかに彩っている。

Text by Hiroe Nakajima
Photographs by Miyoko Tamai

日本で出会ったモノたちを暮らしの相棒に

リビングの一画。イスラエルの著名な写真家David Adikaが撮ったテルアビブの海を見つめる男性(左)と、八丈島でノアムさんが撮った青年たち(右)。花を活けている花器は、魚を漬けていたとされる陶器の箱。

駐日イスラエル大使館の文化担当官であるアリエ・ロゼン(Arieh Rosen)さんとフォトグラファーのノアム・レヴィンガー(Noam Levinger)さんが暮らすのは、明治神宮や代々木公園などからほど近い渋谷区のマンション。アリエさんが日本勤務となり、約4年前に二人で移り住んできた。

「日本には以前からとても興味を抱いていましたので、今回の赴任はとても楽しみでした。ノアムとは国を出る前にウエディングを挙げ、正式なカップルとなりました。来るときはスーツケース1個ずつにほんの少しの荷物だけを入れてきたのですが、日本で暮らしに必要ないろいろなものを選び、集め、徐々に快適な空間に整えていきました」(アリエさん)

「コロナ禍以前はこの部屋に友人や知人を招いて、たびたびホームパーティを開いていました。利便性がよいうえに、近くには緑に溢れた大きな公園もあるので、とても住み心地がよいです。友人の紹介で出会った住まいですが、大変気に入っています」(ノアムさん)

「骨董の入っている箱自体が好き」と言うアリエさんとノアムさん。日本独特の共箱(ともばこ)文化は、中の品物への尊敬の念が感じられるという。
「DESIGNART TOKYO 2019(デザイナート トーキョー2019)」に出品されたイスラエル人陶芸家Avi Ben-Shoshanの作品。外側は素焼きの状態で、内側にだけ釉薬が施されている。

そんなアリエさんがアートに目覚めたのは10代の頃。エルサレムのイスラエル博物館(Israel Museum, Jerusalem)で、青年向けの展示を見たことだったという。その後エルサレムの劇場で見た公演に感銘を受けるなど、さまざまなことがきっかけとなり、アートに関わる仕事、どちらかというと裏方としてアーティストをバックアップする仕事に就きたいという願望が芽生えたという。

高校卒業後は兵役を経て、南インドを長期旅行中、さまざまな工芸品に出会い、石彫について学んだ。その後、ロンドンで舞台芸術を学び、舞台マネージメントをすることに。そして20代半ば頃、イスラエルに戻り、国際文化交流の仕事に就いた。

一方のノアムさんは高校時代、サマーキャンプのアルバイトで貯めたお金で初めてカメラを購入し、その面白さに開眼。写真は独学で、過去に専門的な教育を受けたことはないが、大学では美術史を専攻。その後、イスラエルのラジオ局で構成作家として活躍していた。日本に来てからは、風景、人物、静物など、写真の被写体として興味を抱くものには何にでもカメラを向けてきたという。現在はフォトグラファーとしての仕事を受けている。

“自然”から受け取るエネルギーは暮らしに不可欠

奥多摩の小川で見つけた流木。山や海へ出かけると、少しだけ木や石などを持ち帰り、アート作品のように部屋に飾ることも多いという。

来日してからの4年間で「たぶん40都道府県以上訪れている」と言うアリエさん。日本人でもなかなか訪れないようなローカルな場所にも足を運び、その土地土地の工芸品やアート作品を探索してきた。

「日本の文化において何よりも驚くのが、その多種多様さです。北は知床、南は石垣島まで訪れましたが、地質的、気候的条件の多様さに伴って、衣食住遊アート、あらゆる点において実にヴァリエーションに富んでいます。例えば工芸品。紙、石、木、土、藁(わら)など、まず素材の多様性からしても、他国に類を見ないのではないでしょうか。イスラエルにも素晴らしい工芸品や芸術品は多くありますが、ここまでの幅広さや厚みはないように感じます」(アリエさん)

「イスラエルにも季節の移り変わりはありますが、日本の四季のような大きな変化はありません。加えて、イスラエルはどちらかというと乾燥地帯なので、日本の特徴である湿潤さはない。日本の文化、芸術の多様性は、当然そうした気候的特徴に起因しているのでしょう。気候と作品の因果関係を見つけることは楽しみの一つでもあります」(ノアムさん)

イスラエル、台湾、フィリピン、日本の自然の中で見つけた石や鉱物などをテーブルに並べてオブジェに。茶色い水差しは沖縄の作家が作ったもの。

「例えば苔。イスラエルでは見かけません。日本で好きな場所は数多くありますが、そのなかでも印象的だったのは、京都にある西芳寺です。“苔寺”という名を持つ苔に覆われた奈良時代の寺です。ベルベットのような質感の苔そのものがアート作品であるかのようでした。やはり自然から受け取るエネルギーやインスピレーションは芸術表現に不可欠だと思います。だから僕らも暮らしの中にネイチャーを取り入れていたいのです。住まいに花や木は不可欠ですし、太陽や風や湿度を感じることのできない生活は考えられません。そういう点でも、高層マンションなどにはあまり気持ちが向きません」(アリエさん)

ベランダで育てたスイセンを花器に活けたもの。草花はノアムさんたちの暮らしに欠かせないパートナーというべき存在。

現在お二人が住まう部屋は6階建てマンションの5階。広めのベランダが付いているので、そこで植物を育て、採ってきた花を花器に活ける日常を好ましく思っている様子だ。季節がよければベランダで昼寝をすることもあるという。

日本では数多くの伝統工芸の創作の場に赴いているが、実際に作ることを体験させてもらうこともあるというお二人。愛犬のテッサちゃんと。
宮城県蔵王町「新地こけしの里」で手に入れた小さなこけしと、有楽町の骨董市で見つけた日本人形の頭。「壊れた人形のパーツに何かストーリーを感じた」とアリエさん。
赤坂・乃木神社古民具骨董市で購入した人形。下に敷いているのは、石川県小松市滝ケ原の石切り場で見つけた石の欠片(かけら)。

日本各地で出会うものは、かけがえのないもの

築44年になるマンションだが、リノベーションして使いやすくなっている。南向きのリビングには柔らかい光が差し込む。アート作品や家具のレイアウトは比較的よく替えるという。

イスラエルの文化を日本に伝えるという使命を持つアリエさんは、イスラエルの料理を紹介するイベントの企画などもたびたび行ってきた。元々料理が得意なアリエさんは、ステイホームが増えた昨年から、自宅でお菓子やパンを焼く機会も増えたと言う。取材の日はイスラエルの代表的な菓子パン「ルゲラー」をふるまってくださった。信楽の磁器に生地を敷き詰めてそのままオーブンで焼く。取り皿は有田や益子、各地で手に入れた骨董の小皿。イスラエルと日本の文化がテーブルの上で融合したかのようである。

信楽の平鍋は大谷製陶所で焼かれたもの。直接火にかけたり、オーブンにも使用できる。この日はイスラエルの菓子パン「ルゲラー」を日本各地で買い求めた小皿とともに。

「ほんの10年くらい前までは、イスラエルから日本に来る人は少なかったと思いますが、徐々に渡航者は増えています。地理的な距離は離れていますが、どこかに共通点があると思うのです。きっと日本から受けるよい影響は多くあると思いますし、こと伝統工芸品の精緻さや奥深さには、誰しも感動するはずです。その逆もしかりで、日本の皆さんにも、イスラエルに関心を持っていただきたいと思いますね。コロナ禍の後には、ぜひ当地を訪れていただきたいです」(アリエさん)

左はイスラエルを発つ前に、アリエさんの両親が贈ってくれた祖父直筆のヘブライ文字。将来の幸運を願う言葉が綴られている。右はイスラエル人アーティストDavid Tartakoverによるサボテンをモチーフにした版画作品。

日本各地を訪れているアリエさんとノアムさんだが、現地へ行く前にはあえて事前のリサーチはしないことが多いという。偶然の出会いほど面白いものはなく、経験上、そのほうがよい旅ができると感じているからだそう。

「前に友人から得た情報を基に、予定を立てて旅行をしたことがあるのですが、自分たちには合いませんでした。もちろん地方へ行けば行くほど、言語の壁がありコミュニケーションに窮することもありますが、あまり重要な問題ではないと思っています。僕らは幸いなことに、行く先々で日本の方々に親切にしていただくことが多かったですし、思い出に残る体験をしています。今では、インターネットでは面白いものは見つからないという意識が確信に変わっています」(ノアムさん)

日本での任期が残り1年となったアリエさん。昨年から今年にかけての1年は思うように動けなかった分、まだ訪れていない土地への想いは強くなっているという。

在日4年の間に集めた陶器、磁器、ガラスの食器は骨董品から現代作家のものまでさまざま。ガラスのオープンラックに収めてディスプレーしている。

アートが担う“ツール”そして“ストーリー”

アリエさんとノアムさんにとって、仕事とプライベートは、自然な形で繋がっている。

「暮らしの中のアートは、日常を快適に過ごすためのものというのはもちろんですが、招いたお客さまへのホスピタリティを表すものという視点も大切だと思っています。または、作り手である職人やアーティストへのリスペクトやサポートをするという側面もあるでしょう。存続が危ぶまれる伝統、あるいは若い作り手をバックアップする手助け。さらには、貧困や病気で苦しんでいる人々、あるいは難民を支援するためのコネクションにもなります。一つのモノでもさまざまなコンセプトがあり、ストーリーがある。そうしたことを知ることが、自分を成長させてくれるきっかけにもなるのではないでしょうか」(アリエさん)

「僕らの興味の対象や幅は年々広がっています。10年前とは変わったところもありますし、モノを見る目も少しずつ進化しているのではないかと思います。アートは人生をリフレッシュさせてくれますし、日本での体験はかけがえのないものばかりです。まるで地図が更新され、広がっていくような経験でした。いずれ愛用の品々はイスラエルに持ち帰ることになりますが、きっとどれも日本での時間を思い出させてくれるでしょう」(ノアムさん)

そうした意味においても、アリエさんは「国際交流、異文化交流にとって、アートは最良のツール」と感じているという。

「必ずしも言語での対話がかなわなくても、作品を通じて互いの好意や敬意を伝え合うことは可能です。日本ではそういう体験を何度もしましたし、モノや作品が担う物語を感じ取ることができました。辺境の地とも言えるような場所にも高度な技術や洗練された美意識があるのが日本の素晴らしいところで、それを必ずしもメジャーにしようという目的を持たない地域も多々あり、そこがまた美点なのではないでしょうか」

日本に限らず、優れた工芸品やアート作品のバックグラウンドには、必ず語られるべき物語がある。幸いにも、作り手や売り手とじかに接することで、素敵な物語の数々に出会うことができたというアリエさんとノアムさん。日本で出会った愛すべき品々を、その物語ごと持ち帰ってくれることだろう。

profile

アリエ・ロゼン/イスラエルで兵役を経験後、 ギルドホール音楽演劇学校(ロンドン)で舞台芸術を学ぶ。2006年にナショナルシアター(ロンドン)に勤務。その後、ナラガット・センター(テルアビブ)、カルチャー・デパートメント・プロダクション(テルアビブ)、在テルアビブのポーランド文化センターにてプログラム担当などを経て、ピラミッド社勤務。2016年末より現職。

ノアム・レヴィンガー/イスラエル生まれ。テルアビブ大学美術史科卒業後、独学で写真を学ぶ。2017年より東京を拠点に日本および海外の雑誌の写真を担当する。
▶︎https://www.noamlevinger.com/

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