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江戸から続く老舗・大丸松坂屋百貨店に<br>新風を吹き込む「未来定番研究所」とは
100年の理(ことわり)

江戸から続く老舗・大丸松坂屋百貨店に
新風を吹き込む「未来定番研究所」とは

老舗百貨店に新たな風を吹き込む。「未来定番研究所」が打ち出す、クリエイティブなマーケティング手法とは【前編】

企業に見る伝統継承とイノベーションの物語を紹介する「100年の理(ことわり)」。2回目は、東京・谷中に事務所を構える「未来定番研究所」を訪ねた。300年続く大丸と400年続く松坂屋が統合し、2010年に誕生した大丸松坂屋百貨店が、世の中に本当に必要とされ定番となっていくべきモノコトを見極め、提供していくために発足させた研究機関だ。時代に合わせて進化を遂げ、多くの人に愛され続けてきた老舗百貨店は、いったい今をどう捉え、未来へ繋げようとしているのだろうか? プロジェクトリーダーを務める今谷秀和さんに話を聞き、「未来定番研究所」を立ち上げた理由、プロジェクトに込める想いや狙いについて、前・後編にわたって紹介しよう。

▶︎後編はこちら

Text by Kaori Kawake(lefthands)
Edit by Shigekazu Ohno(lefthands)
Photographs by Takao Ohta

お客様の潜在的なニーズを引き出し、世の中に新たな定番を作り出す

大丸松坂屋百貨店が新たに打ち立てた「5年後の未来定番生活を提案する百貨店」というビジョンを実現させるため、2017年に発足させた部署が「未来定番研究所」だ。

「未来」「定番」という一見相容れない2つの語を合わせたその名には、「世の中に本当に必要とされ、定番となっていくモノやコトを見極め、提供していける百貨店になりたい」という想いが込められているという。

長きにわたり、ただ伝統を守るだけでなく、常に新しいものを取り入れ、時代にフィットさせてきた大丸と松坂屋。かつて呉服屋としてスタートした両社は、それぞれに屋号を守りながらも西洋の商品を売る百貨店へと転換していった。まさに時代の一歩先を見据えたライフスタイルを打ち出し、それを広めることで商品を売ってきた歴史を持つ。

1953年、クリスチャン・ディオールと独占契約し、ファッションショーを大阪、京都、神戸で開催。海外デザイナーとの提携は日本初だった。
2009年には、「新しい百貨店ビジネスモデルの構築」に取り組んだ大丸心斎橋店北館がオープン。従来の百貨店にはないブランドを集積した売場づくりは若い女性に好評を博した。

しかし、モノや情報があふれる現代においてはその発信力が弱まり、各店ベースでのマーケティング主導型の売り方に頼らざるを得なくなってきている。そうしたなか、「新しいライフスタイルをお客様に提案するためのオウンドメディアが必要だ」という声が上がり、そのコンテンツを制作・発信していく組織としての生活文化研究所の機能――今の「未来定番研究所」が発足した。

目的は、数値によるマーケティングに左右されるのではなく、クリエイティブな視点から「5年後の未来」を考えること。

お客様のために何ができるか。「先義後利」の精神に立ち返り、新たな市場を切り拓く

「百貨店の魂が抜けつつある」と今の在り方に警鐘を鳴らすのは、未来定番研究所の立役者である今谷秀和さんだ。デザイナーとしてショールームや店舗などの空間づくりに従事しながら一級建築士の資格も取得。住宅地開発にも携わったのち、広告代理店でデジタルメディアを扱ってきたという異色の経歴の持ち主であることから、改革に必要な客観視と複眼視を兼ね備えていた。

建築的な視点から、老舗の百貨店に新たな風を吹き込む今谷さん。

「時代に合わせて新しいものを取り込んできた大丸松坂屋百貨店は、今ある種の過渡期にあります。“脱百貨店”という謳(うた)い文句でオープンさせた『GINZA SIX』では、これまでの小売店というビジネスモデルをやめ、テナントを入れることで、百貨店の社員が店頭に立たない新しい形態を確立しました。ただ、そうなったときに我々は、お客様にどのような形で貢献できるのでしょうか? 昔ながらの百貨店に慣れ親しんだお客様にとっては、いささかドライに感じられるかもしれません」

大丸松坂屋の根底には、「先義後利」の考え方が息づいているという。「義」は人として当然あるべき道の意、「利」は利益のこと。「人にいいことをしていれば、利益は後から付いてくる」という教えだ。大丸と松坂屋には古くから助け合いの精神が根付いており、常に地域に貢献してきた歴史がある。今谷さんは、それこそが強みであり、長きにわたって存続してこられた理由だと考える。

人形浄瑠璃「大塩平八郎の乱」の一幕。1837年に起こった「大塩平八郎の乱」の際、富豪や大商人は民衆の手により多くが焼き討ちに遭った。しかし、大丸は徳義を重んじる家風で当時から知られており、焼き討ちを免れたと言われている。

「きっと新しい形の『百貨店イズム』が必要になってくるでしょう。それがビジネスモデルなのか、サービスなのか、空間なのか……我々はもう一度、『先義後利』の精神に立ち返って考える必要があると思っています」

クリエイティブな人的ネットワークを活用した、右脳型のマーケティング手法

「アンケートやインタビューなどの市場調査によって得られるデータを用いた従来的なマーケティングは、今更やるべきではないと考えていました」

そんな今谷さんによるマーケティング手法の提案は、これまでに類を見ないまったく新しいものだった。

「未来定番研究所では、時代の一歩先を行くクリエイターを見つけてきてはインタビューを行い、記事にして自社メディアで紹介しています。そして、そこに蓄積されたアイデアを編集しながら、新しい企画を考えていくという取り組みを行っています。数値に頼らない、右脳型のマーケティング手法ですね」

インタビューで知り合ったクリエイターは、すでに延べ300人以上。さらに、繋がりのあるクリエイターを招いたイベントを開催することで横の繋がりを広げ、今ではその人的ネットワークは400人以上にも及ぶという。

「さまざまな商品を取り扱っている百貨店は、一見外部とのやり取りが非常に多いように見えるでしょうが、実はお付き合いがあるのはごく限られた取引先だけで、閉鎖的とすら言えるかもしれない。だからこそ、人的ネットワークを提供することが今の百貨店にとって何よりも必要だと思いました」

社長直轄の独立した組織だからこそなせる、まったく新しい取り組み

未来定番研究所は、社長直轄の独立した部署として東京・谷中に置かれている。日暮里駅からほど近い、谷中銀座商店街を抜けた先の静かな街角にひっそりと佇む古民家がそれだ。かつて銅工房だった時代の面影を残しながらも、リノベーションによって快適に生まれ変わったオフィス空間には、伝統と革新が相まって息づく。

しかし、いったいなぜ谷中に独立した事務所を構えるに至ったのだろうか? その理由について、今谷さんは次のように語る。

「本社の中にいると、独立した活動が阻害されてしまうというのがまず大きな理由です。もうひとつは、外部クリエイターとの打ち合わせスペースを、本社とは別に確保するためです」

谷中を選んだ理由は、意外にも今谷さんの直感だったというが、使ってみると意外なメリットもあったという。

「事務所が日暮里駅というと、まず皆さんびっくりされます。青山や代官山というよりも意外性があって、印象に残るんですね。しかも築100年の古民家という点で興味を持ってくれる方が多く、会話が自然と弾むんです。利益うんぬんの前に、仲良くなれるから不思議です。空間の威力というのは絶大なんですね」

インターネットが普及し、実店舗に行かなくても情報や物がなんでも手に入る時代となった今。それが当たり前になっている若い世代の間では、百貨店のような実空間で、実際の商品を手に取って吟味する体験に需要が戻ってきている兆しがあるという。

データから導き出すのではなく、人との繋がりやリアルな肌感覚によって未来を想像する未来定番研究所。新たな角度から答えを導き出すこの取り組みは、社内コンサルティング部門としても機能しはじめているという。果たして新たな市場を見出す突破口となるのだろうか。次回は、その実際の取り組みについても取り上げてみよう。

企業情報

大丸松坂屋百貨店 未来定番研究所
東京都台東区谷中5-9-21
▶︎https://www.miraiteiban.jp/

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