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「船橋屋」8代目社長が行った<br>大胆な改革と掲げる人材育成
100年の理(ことわり)

「船橋屋」8代目社長が行った
大胆な改革と掲げる人材育成

伝統を継承しながら時代に合わせた企業へ。「船橋屋」8代目社長が行った大胆な改革と掲げる人材育成【後編】

企業に見る伝統継承とイノベーションを紹介する「100年の理(ことわり)」。今回は前編に引き続き、東京・亀戸で「くず餅」をつくり続けて200年以上という、老舗和菓子屋「船橋屋」を紹介する。前編では、江戸時代に創業して以来、長い年月を経て変わらず人々に愛され続けているくず餅への思いについて、また、時代に合わせて変化を受け入れながらもブレない企業価値について話をうかがった。後編では、そうして伝統をつなぎながら、これからの100年先のために革新・挑戦を続ける船橋屋の企業努力と姿勢をリポートする。

Text by Mari Ohno
Photographs by Shinichi Miura

「暖簾は血より重い」。その厳しさを受け継いで、ブランドを守ってきた

亀戸天神前本店。今でもくず餅を求めて訪れる人でにぎわう。

江戸時代の創業から200年続く船橋屋だが、ここまで続けることができた理由は、伝統の「くず餅」だけにあるわけではない。その一端をうかがえるのが、6代目と7代目当主に、養子を迎えているというエピソードだ。6代目には実子もいたが、暖簾を継ぐによりふさわしい人物として、交流のあった証券マンの男性を養子に迎え、店を継がせたという。親とすれば苦渋の決断もあっただろうが、「暖簾は血より重い」という厳しさを持たなければ伝統を継承できないと考えたのだろう。結果、船橋屋は200年以上という長い年月を生き抜くことができている。

また、船橋屋のさらなる改革、発展には、現在の当主である8代目・渡辺雅司社長の功績も大きい。7代目の実子であり大手都市銀行で銀行マンをしていた渡辺氏が、家業を継いだのが1993年。バブルは崩壊し、右肩上がりの時代は終わろうとしていた頃だった。

当時の船橋屋は昔かたぎの職人が幅を利かせ、勤務中でもくわえタバコは普通に見かける光景だった。仕入業者とは馴れ合いの関係が散見され、このままでは企業として生き残れないと危機感を抱いた渡辺社長が断行したのが、会社を内側から変えていくことだった。

8代目が行った会社改革。伝統を継承しながら時代に合わせた会社へ

どんなに商品に自信があったとしても、ただ長く続ければいいというものではない。8代目社長、渡辺氏による社員の「意識改革」がさらなる発展につながった。

渡辺社長がまず行ったのが、仕入業者の見直しだ。元銀行マンの経験を生かして無駄なコストは削減し、効率化を進めた。社内は全面禁煙とし、パンチパーマや茶髪も禁止。職人の感覚に頼る部分が多かったくず餅の製造を数値化し、給与基準などもすべて見直した。

もちろん、社内で反発がなかったわけではない。そのやり方に賛同できない大勢の社員が辞め、先代である父からも厳しい言葉を受けた。しかし、歴史と伝統に頼っているだけでは、いつか必ず時代に取り残されてしまう。そう感じていた渡辺社長の改革はいつしか結果を結び、10年で経常利益を6倍にまで伸ばした。

さらに渡辺社長は、社員の士気を高めるために、ひとりひとりの意見にも耳を傾けるようになった。かつての現場は「仕事は背中を見て覚えろ」という職人の世界だったが、いまは教育にも力を注ぐ。現在、船橋屋は下町の和菓子屋としては異例の、新卒入社希望者がピーク時には1万7000人も集まる人気企業になっている。

働く社員が会社をつくる・育てる。ひとりひとりが改革に取り組む組織づくり

3年ごとに更新される「中期経営計画」。社員が常日頃意識できるよう、社内のあちこちに貼り出されている。

企業価値向上のための「中期経営計画」も、渡辺社長が始めた大きな改革のひとつ。船橋屋には長い歴史のなかで家訓や企業理念はあったものの、明確なビジョンが存在していなかった。そこで2007年から3年ごとにビジョンを掲げ、より時代にフィットした企業をつくっていこうという試みをスタートした。

中期経営計画を進めることで、社内に生まれたのが部署や世代を超えたプロジェクトチームの結束だ。若手も社内全体にかかわるプロジェクトチームに参加することで、横のつながりも強化された。経営幹部だけで決定するのではなく、一般社員の意見も取り入れ、みんなで「今後3年間でどういう会社にしていきたいか」を考えた。すると、少しずつ社員全体の意識が変わり、会社が活性化していく空気を感じられたという。

若い世代の採用にも積極的だ。新しい風を取り込み、前向きに提案を受け入れる。WEBでの物販やSNSでの広報活動などは、若い社員なしでは実現できなかったことだろう。老舗や伝統にあぐらをかくことなく、常にいまの時代に目を向けるためには、若い社員の感覚が大きな助けとなっている。

毎号さまざまな記事が掲載される「社内報 船橋屋」。月刊ペースで作成しているというのが驚きだ。

社内の情報共有には、月1回刊行している社内報がひと役買っている。業務連絡だけにならないよう、スタッフを主役にした記事や、専門知識を持つ社員が書くコラムなどを織り交ぜ、楽しく読んでもらえるよう趣向を凝らす。社内報のおかげで、部署を超えて新しい仲間を知ったり、会社全体の動きを把握できるようになったりしたという声も多いようだ。

くず餅乳酸菌の特定により実現したサプリ「REBIRTH」(90粒7560円)。モニター調査で、腸内の善玉菌が相対的に増えるなど改善がみられたという結果も。船橋屋オンラインショップで入手可能。価格は税込。
サプリの粉末が茶色いのは、培養液ごと粉末に閉じ込めているため。近年では乳酸菌そのものだけでなく、菌が発する物質にも効果があるといわれている。

現在、船橋屋が2022年までを目標に取り組んでいるテーマは「くず餅Re BIRTH宣言」。「いま一度、くず餅のよさを見直してみよう」という計画だ。これまでの門前菓子や土産品としての文化性だけではなく、くず餅に新たな社会性としての価値をもたせることで、企業としての次のステージを目指す。その中心に「くず餅乳酸菌」というキーワードが登場する。

きっかけは「くず餅を食べるとからだの中から調子いい」「美容の面で調子がよくなった」という常連客からの声だった。450日発酵させてつくるくず餅に乳酸菌がいることは昔からわかっていたが、これまで具体的な菌までは判明できていなかった。そこで8年前から、クリニックの先生の協力を得て、くず餅の発酵樽の中にいる乳酸菌についての分析をスタートさせていた。

研究の末、その菌は「ラクトバチルスパラカゼイ」という植物性の善玉乳酸菌であることが判明した。菌が特定できたことで培養したり、粉末化したりできるようになったため、これを「くず餅乳酸菌®」と名付け、新たな事業を進める運びとなったのだ。

くず餅をもっと知ってもらうために。くず餅づくりの副産物で健康サプリや化粧品も展開

くず餅乳酸菌の粉末化に成功したことで、乳酸菌を手軽に摂取できるサプリメントや、乳酸菌入りスイーツの開発も始まった。もともと船橋屋の客層は40代以上が中心だが、将来を見据えて次の世代に知ってもらう機会の提供も怠らない。若年層を視野に入れた商品開発も進めている。

今後は東京・表参道に、発酵をテーマとした店舗を出店予定。また、これまでは破棄していた、くず餅を洗う工程で生じる水を原料に化粧水を開発中。今後、海外展開を予定している。こうして、消費期限が2日しかないため遠くへ広めることが難しかった東京のくず餅を、「日本由来の乳酸菌・くず餅乳酸菌」として商品化することで、遠方地域や海外へ認知させていくことが実現することになったのだ。

船橋屋の執行役員企画本部・本部長の佐藤恭子さん。サプリや化粧品など新事業の担当もしている。

「私たちはサプリや化粧品業界でもうけようとは思っていないんです。これらを手にとったとき『くず餅乳酸菌のくず餅って何だろう?』と興味を持ってもらえれば、と。あくまでもくず餅を知ってもらうためのツールのひとつとして、世の中の役に立てたら……という考えです」(本部長・佐藤さん)

どんな時代であっても、常に中心にあるのは「くず餅」。それだけは決して譲らないのが、船橋屋の企業姿勢だ。新しいことへの挑戦や変化は、顧客離れのリスクもあるかもしれない。それでも恐れずに進めるのは、船橋屋のくず餅を長く愛してきた“常連さん”を第一に考えているという自信があるからだろう。

そのブレない軸こそが、船橋屋が守ってきたものであり、今後も船橋屋を支える柱だ。親から子へ、さらにその子へ。時代の変化に合わせて、これからも世代を超えて愛される企業になるために、今日も船橋屋の挑戦は続く。

企業情報

船橋屋
亀戸天神前本店
東京都江東区亀戸3−2−14
▶︎http://www.funabashiya.co.jp/

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