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Quiddity of Life 座談会 第4回<br>R100 TOKYOが考える、これからの本質的な暮らし<br><small>参加者<br>川上シュンさん(artless Inc.代表)<br>芦沢啓治さん(芦沢啓治建築設計事務所代表)<br>齋藤瑠美子(リビタR100 TOKYO事業部 グループリーダー)<br>上沼夕美子(リビタ建築ディレクション部 シニアディレクター)</small>
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Quiddity of Life 座談会 第4回
R100 TOKYOが考える、これからの本質的な暮らし
参加者
川上シュンさん(artless Inc.代表)
芦沢啓治さん(芦沢啓治建築設計事務所代表)
齋藤瑠美子(リビタR100 TOKYO事業部 グループリーダー)
上沼夕美子(リビタ建築ディレクション部 シニアディレクター)

「R100 TOKYO」が歩んできた8年とこれから先(後編)
――固有性と普遍性が矛盾なく内在している空間は、100年先も変わらぬ価値を持っている

建築家の芦沢啓治さん、クリエイティブディレクターの川上シュンさんと共に、時代や人々のライフスタイルの変化を読み解きながら、R100 TOKYOのブランド力を考える座談会の後編。経年劣化ではなく経年優化を肯定してきたR100 TOKYOのものづくりが、今後の社会でどのような価値を担い、魅力を広げていくのか、さまざまな角度から意見を交わしました。

Text by Hiroe Nakajima
Photographs(Portrait)by Sadato Ishizuka
芦沢啓治さんが主宰する「石巻工房 東京ショールーム」にて。左より、芦沢さん、川上さん、上沼、齋藤。

土地や空間の文脈を丁寧に読み解く

齋藤:R100 TOKYOが、ブランドとして一定のクオリティを保ち続け、さらに個々の個性を引き出した魅力ある物件をつくり続けることは、何年続けてきても苦労が多く、そして複数のスタッフでノウハウを共有していくことの難しさも感じています。マニュアルを整えることなどの必要性も感じていますが、これまで複数の物件を協働してきた芦沢さんから見て、クオリティを保ち続けるためにR100 TOKYOに必要なことは何だとお感じですか?

芦沢:ひとつの空間をつくり上げる過程では、デザイン、コスト、スケジュール、既存の状況などを調整して着地していきますが、その中のひとつのプロセスを間違えるとダメになってしまうこともあります。そんなにヤワなものじゃないと言えばそうかもしれませんが、やはり結果が違ってくるということは、正しいプロセスを踏むことがいかに大切かが分かります。とはいえ、僕はその間違いを防ぐためのハウツー本のようなものがどうしても必要とも思いません。空間をつくるという仕事は専門性を要求されるので、隣に並んで鮨職人のマネをしても美味しい鮨ができないように、やはりプロにしかできない仕事だと思っています。リビタという会社がプロの集団であり、こちらはプロの建築家、プロ同士だからこそ成り立つのだと思います。

齋藤:そうですね。私たちも最初はハウツーのようなものをつくろうとしていたこともあるのですが……、芦沢さんと会話を重ねるなかでやめました。今まで土地の歴史や建物の文脈と都度向き合い、設計者や施工者の方々と、一戸一戸丁寧につくってきたのがR100 TOKYOの財産なんだと気づかされました。それをハウツーにしてしまって、見よう見まねでやろうとしてもできないと思うのです。「R100 TOKYOはプロフェッショナルな仕事の集積を顧客の皆さまに提供していきます」ということを今後も言い続けていくために、住宅ブランドとして、どのようにそれを実現し続けていくかということを考えています。

芦沢:例えばイラストレーターやフォトショップがあれば、なんとなくグラフィックができる気になっている人は多いと思いますが、プロの仕事とアマチュアの仕事は歴然と違うんですよね。プロの料理人がいるように、空間にもプロがいる。さらにR100 TOKYOが提供する住宅は画一的なレシピに基づいて複製し続けているわけではなく、プロセスやコミュニケーションの違いが細部にまで表れている。その細部の精度にこだわるために時間を費やしているということを、きちんと理解して購入してくださる方々が少しずつ増えてくれば、今後日本の住空間はより良くなるでしょうし、すでにそうした兆候は生じていると感じています。

R100 TOKYOデザインディレクターの芦沢啓治さん。

川上:僕はずっとサークル(円形)をイメージしていて、R100 TOKYOの真ん中に入るものは何なのか、つまり上質な空間におけるコアとは何だろうと考えているんだけど、それは「普遍性」や「固有性」なんじゃないかなあ。結局はワン・バイ・ワンでつくらなきゃいけないんだろうなって。それと、R100 TOKYOが面白いのはまっさらな土地にゼロイチでつくるのではなく、決まった土地、建物、空間がすでにある。それを経年劣化ではなく、経年優化として捉えながら、強みとして伸ばしていくことを実際にしているわけだけど、そこに住む人がどのような体験や恩恵を享受できるかを、きちんと示していくことが重要なんじゃないでしょうか。

齋藤:土地や空間の文脈を丁寧に紐解くと、まずその地域の特性に合った暮らし方がありますよね。そして入れ物がもともと持っているポテンシャルがある。今私たちがいるこの工房でいえば、お向かいの壁がたまたま白いから、光が反射して明るい空間ができているということも含めて環境だと思うんです。だから川上さんがおっしゃるワン・バイ・ワンというのはそのとおりです。同じ50㎡だったとしても港区か文京区かでは空気や文化も当然違いますし、集まってくる人々の求めるものも違う。さらに住まい手各々のライフスタイルが掛け合わさってくるわけなので、どうしたって個別になります。ですがある程度、フックやとっかかりとしてキーワードやパッケージは用意してあげたいという思いはあるんです。

R100 TOKYOクリエイティブディレクターの川上シュンさん。

川上:その需要はあるのかもしれないけど、恣意的にパッケージの設定をすることにはやや疑問を感じますね。例えば池袋でもクールな空間はつくれるし、広尾でも温かい空間はつくれる。だから変数は必要で、やはりワン・バイ・ワンなんですよね。それは供給側の立場からいうと非効率的ではあるんだけど。

齋藤:これまでは「TRANSIT」「LOFT」「ROOTS」「Esprit」「as it as」「MINIMAL」「SIESTA」「DINNER」「HOLIDAY」という 9つのライフスタイルパッケージを設けていたのですが、今回のリブランディングを機会に提示の仕方を変更する方向で検討しています。芦沢さんもこうしたパッケージのようなものの設定にはあまり賛成されていないようですが、お客さまとお話しする場では方向性を決めるためのツールとしては有用であったとも思います。

上沼:居住空間を編集して成熟させるのはあくまでも住まい手ですから、私たちはいろんなものを押し付けすぎてしまわないように心掛けていかなければと思っています。

建築ディレクション部の上沼夕美子。

齋藤:芦沢さんが手掛けられたウッドヴィル麻布の部屋を欲しいとおっしゃるお客さまが、このところ何組もいらっしゃいます。「インテリアがいい」と言ってくださっていて。土地、建物、暮らしといった文脈をよく理解していらっしゃる方々が着実に増えていることも感じます。

芦沢:スタートしてからの8年間で販売実績が約280戸ですよね。年間ベースだと約35戸。少数ではありますが、許されるならそうした良いものを求めている方々に対して販売するビジネスの仕方が理想ですね。

齋藤:すでにマーケットがあるところではなく、そういうニーズに応えられるものを世に出していきたいというのが出発点だったので、7、8年経ってようやくそこに辿り着きつつあるのかなという気がしています。最初はやはりどのくらいニーズがあるかも不透明だったので、全方位に向けて発信していたところもありましたが、ここ数年はやるべきことに注力できる段階になってきたかなと。もちろん物事は常に変化していくものなので、その変化自体も受け止めるものづくりをしていきたいと思っています。

細部にこだわることでしか得られない空間

川上:これまでも同じメンバーでディスカションを重ねていて、そのなかで明確にすべきこと、大切なポイントは見えてきているので、それをきちんと空間に落とし込んで、ブランドとして発信していこうというフェーズになっていますよね。あとは芦沢さんよろしくという感じですが、だいぶ悩んでいますか?(笑)

芦沢:いつも悩みますよ(笑)。半年後にできるウッドヴィル麻布やオパス有栖川の部屋にしても空間設計はもうほぼできていて、あとは手を動かすだけですが、家具やアートはまだ流動的ですね。

川上:エッセンスとしてはどんな空間なんですか?

芦沢:ミュート(音を出さない)というか、静謐な空間をつくりたいと思っています。モノクロで撮ってもカラーで撮ってもあまり写真のトーンが変わらないような。だけど触り心地や居心地は普通のクオリティと各段に違うといった空間です。

川上:電気をつけている状態とつけていない状態の空間の美しさって違うものですよね。少し玄人寄りの話ですが、空間を撮るときに照明を消したほうがいいこともあります。家具も自然光で撮られたほうが美しく見えることも多い。空間づくりのプロはその2つの顔を大事にしていて、照度をフラットにしないで陰影をつけるというのかな。僕自身もそこを大切にしていて、光の溜まり方を工夫しますよ。

上沼:芦沢さんが間接照明を好まないとおっしゃっているのもそこですか?

芦沢:いや、嫌いなわけではないですよ(笑)。間接照明も使います。ただ住宅に間接照明がつくり出す商業的雰囲気というか、過度な演出はいらないのかもしれないとは思います。例えば部屋の端っこに自然な光ができて、それが壁に美しいグラデーションをつくるなら、そのほうがさりげなくていいかなとか。よく天井の抜けるところを大きく開けて、そのまわりに間接照明を入れたりするじゃないですか、商業空間ではよくありますが、あれを住宅でやるとよそ行きの空間みたいになってしまう感じがあります。それよりも素のままの構造躯体をどうしたら活かせるのか、あるいは気になったときに、どう手を加えれば心地よく見えるのかということを読み解くことが第一だと思います。

齋藤:すぐには理解してもらえないこともあるんじゃないですか?

芦沢:某大手ディベロッパーに「空間が暗い」と指摘を受けたことがあるのですが、何をもって暗いって言っているのかということですよね。現代日本人の明るさの感覚ってひょっとしたら麻痺しているのかもしれないし。奇しくも谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』のなかで、「暗闇の中のグラデーションにこそカルチャーが表出する(*注)」というようなことを言っていますが、それは真っ当なことで、実際に自然の織りなす陰影のある空間を経験すると、とてもよく理解できます。

(*注…谷崎潤一郎『陰翳礼讃』原文「われわれの祖先は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った」)

川上:基本的にどう自然光が入るかを考えながら設計していくということですか?

芦沢:リノベーションの場合は、あらかじめ窓があって自然光の入る位置は決まっているわけですよね。なのでそれをどうコントロールするかという話になってきます。この物件は採光がいいからラッキーだとか、逆に調節するために紗(しゃ)をかけるとか。入ってきた光がどんな伸び方をして、どんな気持ちいい空間をつくってくれるかどうかは、季節によっても異なってくるので、それをきちんと想像できるかはすごく重要です。照明の話に戻ると、良い空間は照明を消しても良い空間だし、良いランプはあかりを消しても良いプロダクトデザインなんです。

上沼:自然光の採り入れ方でいうと、カーテンのファブリックの選択も影響しますよね。前にウッドヴィル麻布のカーテンを拝見したときに、すごくいいなと思いほれ込んでしまったことがありました。

芦沢:そこは本当はケチってはいけないところなんですが、わりと安く抑えようとする傾向がありますよね。カーテンのファブリックに上質なものを選ぶと「そこにそんなにお金をかけますか?」というような反応も結構あるんだけど、実はお金をかける価値がある場所というのはそういうところなんです。

齋藤:カーテンは最後の最後になりがちなんですよね。でも空間の質を決めるにあたってすごく大事ですよね。

芦沢:そう、驚くほど大事なんです。

上沼:ウッドヴィル麻布のその部屋はもともと自然光が入る時間帯でもやや暗い落ち着いた部屋なんですが、カーテンがその静寂さや重厚さをさらに増幅させている感じでした。

ウッドヴィル麻布のエントランス。
ウッドヴィル麻布のリビング。本邸では家具や建具など木でできたものの制作をほぼすべてカリモクが行った。室内の素材の統一感と素材の美しさが際立つ空間に仕上がっている。
ウッドヴィル麻布のベッドルーム。
ウッドヴィル麻布の室内。

芦沢:ウッドヴィル麻布は共有部分も各部屋も十分な面積があってゆったりとつくられているんです。30年という時間を経ても色あせない品格と豊かさをまとっています。アプローチもキリッとしていて、明るさが抑えられた雰囲気のある共有廊下を経て部屋に至る。その建物へのリスペクトを込めて、部屋にも連続性を持たせたかったんです。

川上:カーテンを替えると部屋の匂いまで変わったように感じることがありますね。

齋藤:現在進行形で手掛けていただいている物件では、芦沢さんに光や手触りももちろん、匂いまですべて含めて五感で気持ちよく感じられる空間をオーダーしています。

上沼:自然光の採り入れ方というところで、今回、断熱環境への配慮も含めて、以前、リアージュ砧テラスやウッドヴィル麻布でも協業させていただいたカリモク家具さんと内窓を共同制作中なんです。意匠の見え方が変わり、現状のサッシを(見た目上)消そうという試みです。

齋藤:集合住宅では窓サッシが共用部分にあたるため、リノベーション時に新規入れ替えすることができず、既存のままとなるケースがほとんどですので、リノベーション住宅にとってサッシは大きなネックだったのですが、それをどうにかしたいという思いから芦沢さんからご提案いただきました。断熱性も向上しますし、意匠だけでなく体感としての心地よさにも大きな効果をもたらすと思います。

芦沢:窓まわりはすごく重要ですから。二重になるという多少のノイズはあるんだけど、内窓の素材と家具の素材がピタッと合うと、急に空間がピリッと引き締まるというか、そういう利点が十分にあるんですね。

川上:カーテンや窓枠、そういうところをおざなりにしないことで、居心地がぐっと良くなる。つくり手はそれを十分に分かった上で設計しているわけですが、そこもやはりきちんと伝えていかなきゃいけないですね。教えなくても分かる人もいるけど、分からない人も多いから。細かい説明が増えるかもしれませんが、資料などでも引きの全体写真ばかりじゃなくて、細部の写真をたくさん見せてあげることも必要。見せるところがないと引きの写真で終わらせてしまうんだけど、R100 TOKYOには随所にそれがあるわけだから。ディテールにこだわって、しっかりつくっていますよということが伝われば、なるほどいい空間なんだろうなということが分かりますよね。そういう見せ方と届け方はまだまだ掘り下げていく余地があるのかもしれません。

R100 TOKYO事業部の齋藤瑠美子。

齋藤:伝え方についてはR100 TOKYOの今後の課題ですね。シュンさんに入っていただいてすでに変わってきているとは思いますが。写真の撮り方や切り取り方もそうですし、説明する側の質も高めていかなくてはいけないと思います。それをしないと本当にもったいないことになります。これまでもR100 TOKYOは細部にこだわったいいものだけをつくってきた自信はありますし、住まい手の心地を第一に考えてつくってきましたが、それが伝わらずスルーされてきた場面もあったので、重要な課題だと思います。

上沼:前編のお話に出ていた、プロダクトの解像度で空間をつくっていくという件についていうと、最初に私が芦沢さんとお仕事をさせていただいたとき、かなり驚いたんです。というのも完成した後で、「ここは納得いっていないからつくり直させてくれ」とおっしゃって。そういう設計者の方ってほとんどいないんじゃないかと思います。たとえ気になっていたとしても、言わないことのほうが多いんじゃないでしょうか。そこをきちんと追求する過程を経ているのだということを、受け取り手の方にもきちんと伝えたいですね。ディテールへのこだわりを表現する術(すべ)をもっと考えていきたいですね。

芦沢:たしかにあのときはやり直したとしても予算内の範囲でしたし、チームも若かったから。このままにしておくのはこちらとしても申し訳ないという思いもあったので。

川上:よく分かりますよ。デザイン料はいらないからやり直していいですか、みたいなことは結構あるんです。ホテルなんかでも開業した後に。そういうのってすごく大切ですよね。単なる外注者ではなく、ひとつのプロジェクトにきちんとコミットしているとそういう気持ちになる。R100 TOKYOが一戸一戸クラフツマンシップを大切につくっているというのは特筆すべき点だし、コストをぎりぎりまで削って利益を出そうとしていたら、そういうことはできないです。もしそのようなビジネスの方向であれば、安くつくるところにフォーカスしてしまうので、どうしてもいいものづくりにはならない。もっともR100 TOKYOだってビジネスであるわけだから、そこは絶妙なバランスをとっていかなきゃならないだろうけど、丁寧につくっていますということはとにかく最大限伝えていくべきですよね。……それにしても芦沢さんは真面目ですよね!

芦沢:いやいや、そんなこともないですよ、ケースバイケースで……。(笑)

上沼:芦沢さんとお付き合いされている職人さんたちが、芦沢さんにほれ込んでいるというお話もよく聞きますよ。実際に手を動かすつくり手の側がそう言うのってすごいなと素直に思います。

普遍的な美しさをどのように伝えていくか

齋藤:これからR100 TOKYOという商品をつくっていく上で、何を軸として大切にすべきと芦沢さんはお考えですか?

芦沢:これまで携わってきたイクシクス麻布十番、リアージュ砧テラス、ウッドヴィル麻布、そしてオパス有栖川というプロジェクトは、土地の雰囲気も物件自体の持ち味も異なっていたので、必然的に個別のものになったというのは自然の流れだと思います。ただ、それぞれが内包している感性やデザインのレベルは、どれにおいても同じなんですよね。つまり「固有性」と「普遍性」が矛盾なく両立しているという。まずそのことを供給側が共有し、今後も継続していけるといいですよね。その原理原則を財産として捉えて、たとえもう少し低い価格帯の住宅をつくる場合でも、その方針は踏襲していくべきではないでしょうか。みんなでさらに深く考えていかなきゃいけないですね。

齋藤:そうやって積み重ねていくことが次に繋がるということですか?

芦沢:そうですね。継承していくコミュニケーションの仕方はテキストであれ写真であれいろいろあると思うんだけど、一番いいのはプロジェクトを体験した人が数名でも残り、新しい人が加わったら直接伝えるという方法だと思うんです。チームがまるごと入れ替わるようなことではなく。

上沼:そういう企業的文化をリビタのなかでつくっていくということですね。

芦沢:これからリビタには住空間のリーディングカンパニーとして業界を牽引していってほしいですし、いつまでも日本の住空間は情けないままというのはとても嫌ですよね。この事務所だって50年くらい前に建てられた建物ですけど、最近建てられている新しいマンションよりもずっと居心地が良かったりするし、みんな喜んで泊まりに来ます。だからスクラップ&ビルドのようなことが、なんで起こってしまっているだろうと残念に感じることがありますね。良い土地、良い建物を活かした物件は、時代の転換期を経て、さらに見直されるべきだと思いますよ。

築50年の建物を改装した「石巻工房 東京ショールーム」の内部。

川上:今の話を聞いていて思うのは、住まいは思想や価値観を次の世代に繋いでいく器であるということ。それとR100 TOKYOの物件は、一戸一戸固有性はあるけど、ばらばらに分割された商品ではなく、ひとつの哲学のもと一連の作品として繋がっているということですね。いずれにしてもなかなか他ではできない商品づくりです。

芦沢:今回のリブランディングを機に、R100 TOKYOというのはこういうブランドです、こういうことを大事にしていますという宣言を出すわけですよね。それに適う空間がすでにあって、今後出来上がる物件に関してもR100 TOKYOの名にふさわしいものにするという宣言は、とても力強いメッセージになりますね。

齋藤:はい。これからも揺るぎない価値観に基づいて、高いクオリティを保っていきたいと思います。

芦沢:R100 TOKYOというブランドをつける以上は、一定のレベルを下げちゃいけない。そのためにはある程度チームを固定化したほうがいい面もあります。例えば照明デザイナーをひとり決めて、照明としての質はここですよというスタンダートをつくってもらうとか、家具やファブリックにおいてもそうです。あなたを信頼して一緒にやっていきたいので、最大限の力を貸してくださいということを理解してくれるプロフェッショナルと組んでいくことができれば、ブランドのクオリティを保つことができると思います。

上沼:リアージュ砧テラスはまだ事業が続いていて、新しく来られるお客さまで、芦沢さんのつくられた空間みたいにしたいという方がいらっしゃいます。

齋藤:たしかに光や風を心地よく感じられる素敵な空間ですよね。デンマークの建築・デザインスタジオ、NORM ARCHITECTSに監修してもらい、芦沢さんに設計を進めていただいた物件です。家具はその当時新しく立ち上げたブランド「KARIMOKU CASE STUDY」で統一しましたね。3年後にウッドヴィル麻布の新コンセプトルームでも同じチームで制作しました。

芦沢:リアージュ砧テラスは敷地の中央に位置する中庭の魅力もありましたよね。その景観が豊かなものにならないとプロジェクトが完成しなかったので、ランドスケープデザインにもかなりコミットしました。自分の本職ではありませんが、そういう部分にもちゃんと気を配り、コントロールするのが、建築家として誠実な態度だと思っています。

リアージュ砧テラス室内。質感のある素材でシンプルに仕上げた空間に、中庭の緑とカリモクケーススタディの家具が心地よい。
リアージュ砧テラス室内。
リアージュ砧テラス室内。

上沼:中庭のグリーンは時間を重ねて着実に育ってきていますし、今でもあのランドスケープに魅力を感じてくださる方が多いようです。

芦沢:『DOMUS(ドムス)』というイタリアの建築雑誌がありますが、その創刊編集長で建築家のジオ・ポンティの言葉を、ある展覧会で見たんです。「住空間というのはトレンドに踊らされてつくるものではなく、トレンドからできるだけ離れたところで本質を目指してつくっていくものだ」という言葉でした。つまり、トレンドを追いかけるのではなくて、本質を追いかけることが普遍的な美しさに繋がるという内容だと思うんです。特別なことではなく、昔から言われていることですが、具現化するのはなかなか難しいことです。消費者に届けるためにはトレンドの発信者であるメディアとついつい並走してしまうので、非常に根性のいることなんですよね。

川上:つまりそれがR100 TOKYOの新しいコンセプトである「Quiddity of Life=本質的価値」の追求ですね。

芦沢:ずばり「本質=このことです」というものはないので、まずは空間においても目先のトレンドを追いかけないということですね。円形のキッチンっていいよね、なんて今発想する人はなかなかいないけど、かつてはそんなこともあったわけです。実際に僕が大学で建築を学んでいた頃はバブルの余韻があって、とんでもない奇想な建築で話題になるような建築家もいました。宇宙船みたいな空間に魅力を感じて購入したけど、いざ住み始めてみるととても実用性に欠けていたり、居心地が悪かったりしたケースもたくさん見てきました。そうしたところから、反面教師的にプロとして正しい判断ができる人間にならなくてはいという学びがありましたね。

齋藤:芦沢さんがおっしゃる「正直なデザイン」ですね。

芦沢:正直というのは、自分に対して素直になるというよりも、建築やデザインの本来あるべき姿に向き合って、それを日々探求していくことなのだと思っています。もちろんクリエイトする人間から先鋭的な発想やラディカルな思考を取り除いてはいけないと思いますが、僕自身はものづくりにおけるこだわりが、きちんと使う人の役に立っているのかどうかということを真摯に確認していきたいと思っています。

「石巻工房 東京ショールーム」に置かれている模型。
「石巻工房 東京ショールーム」に置かれている模型。

齋藤:30年、50年経っても「この部屋いいよね、この空間いいよね」と思ってもらえるのを目指すのがR100 TOKYOです。たとえ住まい手が代わっても、その人なりのカスタマイズができる空間であったり、元の空間を活かしてさらに魅力的にアップデートできる、そういうものをつくっていきたいですね。きっとそこには普遍的な美しさが内在しているでしょうから。

川上:具体的なミッションとしては、どこにあるか=土地、どういう空間か=建物、どういう暮らしか=体験の3つを紐解いて明確にし、一戸一戸丁寧につくっていくしかないんですよね。そしてその一戸一戸は、思想や価値観を同じくして繋がっていなくてはならない。本当に価値のあるものは時を重ねるごとに深まっていくものなので、100年先を見据えたR100 TOKYOのスタンダードを、今後も実証し継承していくべきだと感じます。僕自身も、そうしたプロジェクトに参加できることを心から楽しんでいるんです。

profile

川上シュン

1977年東京都生まれ。artless Inc.代表。2000年artlessを設立、「+81 magazine」などのグラフィックデザインを中心に活動をスタート。現在はグラフィックから建築空間まで、すべてのデザイン領域における包括的なブランディングとコンサルティング事業をグローバルに展開。カンヌ国際広告祭金賞、iFデザイン賞、NY ADC賞ほか、国内外で受賞多数。また、アーティストとして作品を発表するなど、その活動は多岐にわたる。

▶︎http://www.artless.co.jp/

profile

芦沢啓治

横浜国立大学建築学科卒。1996年に設計事務所にてキャリアをスタート。2002年に特注スチール家具工房「super robot」に正式参画し、オリジナル家具や照明器具を手掛ける。2005年より「芦沢啓治建築設計事務所」主催。「正直なデザイン/Honest Design」をモットーに、クラフトを重視しながら建築、インテリア、家具などトータルにデザイン。国内外の多様なプロジェクトや家具メーカーの仕事を手掛けるほか、東日本大震災から生まれた「石巻工房」の代表も務める。

▶︎http://www.keijidesign.com/
▶︎http://ishinomaki-lab.org/

profile

齋藤瑠美子

株式会社リビタR100 TOKYO事業部 グループリーダー。各セクションを繋ぎ、R100 TOKYOとしてのブランディングを含めた商品企画と推進を担当。

▶︎https://r100tokyo.com/

profile

上沼夕美子

株式会社リビタ 建築ディレクション部 シニアディレクター。主にものづくりの現場と企画を受け持つ。R100 TOKYO設立以前より高価格帯物件を数多く担当し、人気ヴィンテージ物件を中心にそれぞれをどう改修し魅力付けするかの知識経験を豊富に持つ。

▶︎https://r100tokyo.com/

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