海外の避暑地のようなしっとりとした自然光
緑が多く、区画が広い邸宅が並ぶ日本を代表する高級住宅街・田園調布。その閑静な街並みにひっそりと佇む低層マンションを一目で気に入って購入を決めたHさんご夫妻。ご主人は自らをマンションマニアというほど、都内のヴィンテージマンションやブランドマンションに造詣が深く、趣味のように物件検索サイトの閲覧を楽しんでいるという。そのご主人のお眼鏡にかなったのは地上1階と地下1階のメゾネットタイプの物件。ドライエリアから優しく入ってくる自然光は、しっとりと落ち着いた雰囲気で、どこかヨーロッパの避暑地のような空気感を思わせる。南向きで日当たりのよい家が好まれる日本とは異なり、欧米では家具が傷まないように北向きの部屋が好まれ、その数も多いと聞くが、日本では稀な光の入り方の住まいである。
「メゾネットは、上下階でパブリックとプライベートを分離できるメリットがあります。戸建てに住んでいるような気分にもなり、立地と広さを考えると価格とのバランスが取れていて、すぐに購入することに決めました」
そう話すご主人は、デザイン性の高さで定評のあるR100 tokyoでリノベーションすることに決めていたという。リノベーションの設計は、高級感があり洗練されたデザインが得意なアトリエエツコの山田悦子さんが手掛けた。
日中を家で過ごすことが多い奥さまも、「既存のキッチンは壁で囲まれていましたが、すべての壁を取り払いオープンなワンルーム状の空間にしたことで、光と風が通り抜ける住まいになりました。キッチンを中心とした動線もとても暮らしやすく快適です」と、住み心地の良さに大満足の様子だ。
折り上げ天井、アールの曲線… 機能美と造作のメリハリ
Hさんご夫妻が最もこだわったのは、マンションの外観や共用部、街の雰囲気などに馴染むトータルに整った住まいにすること。専有部だけ良ければいいということではなく、品格のある建物や周辺環境と地続きにフィットするような空間にすることを希望していた。
「過去にR100 tokyoでデザインした物件を見て、山田悦子さんのセンスを信頼していたので、思ったとおりにつくってほしいと考えて、自分たちの意見は極力言わないようにしました。私たちの目指すコンセプトを深く理解し、好みをキャッチして提案してくれていたので、ほとんどお任せでしたが、とてもスムーズに進んだと思います」とご主人。
薄いグレーやベージュを基調としたシンプルなデザインのなかでも、象徴的なキッチンは冷蔵庫もビルドインで設計され、面がフラットに整然と設えられている。シンプルながら、キッチンの壁やリビングの収納扉の面材に使われているリブのパネル、折り上げ天井、柱の角を丸くしたアール加工など、随所にアクセントになる工夫もちりばめられている。
「光の陰影を美しく見せるため、ポイントとしてリブのパネルを使いました。天井はできるだけ広々と感じさせるため、可能なところは折り上げ天井にして、間接照明を入れています。デザインと機能を両立させるとともに、コストバランスも考えて、床はメンテナンス性が高いシート材を、水を扱うキッチンの面材はメラミン材を採用しました。生活するうえで汚れや傷が付きづらい仕上げの素材を選んでいます」と山田悦子さん。デザインと機能を両立させるメリハリのある仕上げが、この空間の美しさをより際立たせている。
ホテルライクな水まわりと家族それぞれの個室
メゾネットの下階は家族それぞれの寝室、ファミリークローゼット、洗面・浴室が連なるホテルライクな間取りになっている。ご主人の寝室は独立した個室で、奥さまと娘さんの寝室は収納で間仕切られた連続した空間。上階のLDKでは家族の時間を楽しみ、下階の個室ではそれぞれの時間を大切にするのもHさんご家族の暮らし方のスタイルだ。
奥さまの寝室の一角には、階段下のスペースを活用した空間があり、印象的なアーチの間口が設えられている。そこに置かれているのは、結婚の記念にご主人からプレゼントされたというチェスト。アーチの間口もチェストを置くことも奥さまが希望してかなえたアイデアだという。
「ここにはデスクを置いて裁縫などちょっとした作業ができる空間にしようと話していたのですが、このチェストを置いてみたら違和感なくぴったりだったので、間口も私の好みに合わせてアーチ型にしてもらいました。この住まいの雰囲気に合わせて家具はすべて買い替える予定で、このチェストも手放すことになっていたのですが、私がとても気に入っているものだったから、ぴったりの居場所をつくり、手もとに残すことができて嬉しく感じています」と空間づくりのエピソードを教えてくれた奥さま。一方、ご主人にお気入りの場所をお聞きしてみると、意外にも「階段」という答えが返ってきた。
「階段室のガラスの壁と手すりは既存のものを生かしているのですが、新しい空間にも馴染んでいてデザインとしてもとても気に入っています。上階からの光の入り方も心地よく、アートや照明の演出もあって、この階段を通るときはいつも気分がいいです」
家具と照明での演出で空間を使い分ける
この住まいの魅力をさらに引き立てているのが、主張することなく空間に合わせて設えたように馴染んでいる家具のセレクト。家具やアートは住まいに合わせて一新し、子ども部屋を除き「Cassina ixc.(カッシーナ・イクスシー)」にトータルコーディネートを依頼したという。
「高さや幅、色や素材など違和感なく空間に溶け込むような家具を選ぶことが大切だと思うので、それを期待してプロにお任せしました。とはいえ、山田さんが図面に家具の配置もサイズも描き込んでくれていたので、ほぼそのとおりになっています。ダイニングの丸テーブルももともと図面に描かれていて、丸テーブルのほうが余白が多くなり動線がスムーズになるからと、アドバイスをいただいていました」とご主人。
続けて奥さまも「実は最初はキッチンカウンターで食事をしてダイニングはつくらず、リビングを広く使うイメージだったのですが、悦子さんが、光がきれいで緑が見える窓辺に落ち着いて食事ができる場所があったほうが豊かなのではと、ダイニングテーブルを置くことを勧めてくれたのです。実際に暮らしてみて、ダイニングで過ごす時間が心地よく、本当にこの場所があってよかったと感じています」。
さらにもう一つの仕掛けが、照明デザイナーによる複数のシーンを設定した照度や色温度の効果。スイッチのオンオフのみで、時間帯や気分に合わせて数種類の調光が選べるようになっている。LDKの一角に娘さんが勉強をするためのワークスペースをつくり、ピアノを置く場所を確保し、日中から夕方にかけて娘さんと一緒に過ごす時間を大切にしているHさんご夫妻。娘さんが就寝後は、暗めに設定された間接照明で夫婦の時間を楽しむ。空間の特徴に合わせて綿密にデザインされた照明が、場の使い分けを心地よくサポートしている。
フルリノベーションにより、周辺環境や建物とも調和するすべてが整った住まいを手に入れたHさんご夫妻。建築家の山田悦子さんをはじめ、R100 tokyoのスタッフの的確なアドバイスにより、ほとんど迷うことなくスムーズに決断することができ、住まいづくりのプロセスもとても楽しいものだったという。
「設計にたくさんのこだわりが詰め込まれていて、打ち合わせでそれをお聞きするのがとても楽しかったです。あまりに素敵な住まいをつくることができたので、次に家をつくる機会があったら、これを超えられないのではないかと、そんな心配までしてしまっています(笑)」と奥さま。
R100 tokyoチームと共につくり上げた住まいは、Hさんご夫妻にとって期待以上の最高傑作となったようだ。
R100 tokyo consulting service
R100 tokyo のコンサルティングサービスは、住空間のリノベーションだけをゴールとするのではなく、お客様の本質的な価値観を表現する住まいづくりを目指します。建築家との対話の中でそれぞれの「本質的に豊かな時間」は何なのかを一緒に考え、それを叶え続ける住空間をご提案致します。
物件探し+リノベーションや、ご所有物件の改修・リノベーションのご相談など、様々なケースにご対応いたします。
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