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想いが大切に継承され、価値となる。<br>建築家 山田悦子
Creators Talk

想いが大切に継承され、価値となる。
建築家 山田悦子

「いつもその人らしい生活ができるようお手伝いしたい」
建築家 山田悦子氏インタビュー

「先見性」「普遍性」「継承」「時・間」「誇り」東京を豊かに暮らすため、5つの価値軸をもとに生まれたR100 TOKYO。今回は、R100 TOKYOサロン 広尾ガーデンヒルズ“HOLIDAY”の設計をはじめR100 TOKYOのリノベーションを多く手がけていただいている建築家の山田悦子氏にお話を伺います。

※本記事は2017年のインタビュー記事を再構成し再掲したものです。記事内に登場するサロンや物件は当時のものとなりますのでご了承ください。

日がそそぎ、風がそよぐ原風景。

私が生まれ育ったのは兵庫県加西市の一戸建て。田舎なので日が昇ってから沈むまでずっとお日様が見え、窓を開ければ風通しがいいのが当たり前でした。

大学で広島に行ってアパートを借りたとき、ロフトが素敵!と思って部屋を選んだのですが、そこは北向きベランダで目の前が隣の家。その後の4年間はかなり苦痛でした。それまでは広告にある「日当り良好」とか「風通しがいい」の、うたい文句が当たり前にあることだと思っていてよく意味がわかっていなかったんです。
でも広島で身をもって理解しました。

東京に移り、マンションリノベーションの設計を依頼されたとき、私の原風景である実家の日当りと風通しがいいという住まいが大前提にありました。これはお客さまにも常に提供していきたいことのひとつです。

めぐりのいい健康的な住宅を作る。

建築家としていつも「健康的な住宅」をお届けしたいと思っています。日当りや構造など住宅の骨格を作り、風通しや生活動線などの血管をきれいにして、めぐりがいい健康的な住宅を提供する。住む方はその上でお好みの洋服を選び、お化粧を楽しんでいただければと考えています。

色彩に関しては、住む方の背景を作るという意識があります。その方が着ている洋服の色・柄や、機会があれば家具や小物も拝見して、その方にとってよさそうだなという背景をふんわりと読み取って仕上材料などを選んでいます。

自然の清々しさとともにある広尾ガーデンヒルズ。

広尾ガーデンヒルズで衝撃的だったのが、人工的に森を作り、その中に住もうとする意識の高さでした。駅からも近く立地が素晴らしいのに、夏には蝉の声に包まれて東京の真ん中に居るというのが信じられないほど。

R100 TOKYO サロンの主寝室の窓からはとても美しい樹木が見えるんですが、この素晴らしい環境を感じられる生活をご提案したいとまず思いました。

そこで、主寝室の扉を開ければ、毎朝住む人みんなが使う洗面所からもその緑が見られるという作りにしました。また、主寝室、ウォークインクローゼット、洋室が並んでいる壁に扉をつけることで裏の導線を作り、これによって回遊できて空気も循環されるという「めぐり」を実現しました。

込められた愛情を引き継いでいく。

現在私が住居兼事務所として住んでいる建物は、私が生まれたころに建てられ、初めて見たときに懐かしさを覚えました。玄関の陶器のタイル、部屋のドアの赤い色、建具も何一つ変えずに使っているんですが、それは前のオーナーさんが愛情をかけて作ったのが伝わるからです。

人の気持ちが込められて大切に作られたものって訴えかけてきて、だからこそ引き継いで大切に使いたいと思います。私が設計するときもしっかりと考えて想いを込め、大工さんやスタッフも愛情を注いでいます。その想いは、きっと住む方に伝わると思いますし、共感した人々が住宅をつないで行くと思います。

広尾ガーデンヒルズは築30年以上。他のマンションであれば建て替えの話も出てくるころです。でも、住む人も管理する側も、自然豊かな環境と建物自体をとても大切にしています。それゆえにここまでの価値が出てきているのだと思います。今回の設計では、その価値を継承していくプラン、内装を心がけました。

TOKYOを自分らしく暮らす。

東京の空き家率は増加しているのに、新築を次々に建てている上に専有面積はどんどん狭くなってきています。人口は減りつつあるので中古物件をリノベーションしたり、新築でも大きなものを建てたりして100㎡の暮らしが東京のスタンダードになればいいなと思います。

以前オランダに5年ほど暮らしていたのですが、みんな家が大好きなんです。人を招いておもてなしをするのが大人としてのエチケットで、日頃から家をきれいにしています。インテリアにも目が肥えていて、日曜大工は当たり前。マンションの新築を見に行く機会があったので行ってみると、配管が立ち上がっているだけでお風呂もキッチンもなし。住む人が自由に作るのが前提ということに驚きました。

外観や枠は一緒でも、間取りを1から作りインテリアにもこだわるので、ひとつとして同じ家はありませんでした。東京に戻ったときにちょうどIKEAが日本に上陸し、今でも活気があるのを見ると、日本の人もインテリアをなんとかしたい、自分だけの家を作っていきたいんだろうなと感じます。設計者としては、いつもその人らしい生活ができるようお手伝いしたいですし、ライフスタイルを含め住宅も自分自身も大切にして、幸せで楽しく生活していただけたら一番だと思います。

profile

山田 悦子

1994年広島工業大学環境学部入学。1998年オランダ・アムステルダムのthe Berlage Institute Amsterdamに入学。1999年オランダ・アムステルダムのmoriko kira architectに入社。2007年東京にアトリエ エツコ 一級建築事務所を設立。「仕立て直した家」 住まいの環境デザイン・アワード2008「ベターリビング・ブルー&グリーン賞」など受賞歴を持つ。

▶️ https://a-etsuko.jp/

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