京都とヴェネチアを行き来しながら。
第19回の今回紹介するのは、三嶋りつ惠のガラスオブジェです。三嶋さんは1962年京都生まれのアーティストで、1989年にヴェネチアに移住。90年代後半よりムラーノ島のガラス工房との協業で、ガラスの作品の制作を始められました。現在は京都にも拠点を構えられて、ヴェネチアと行き来しながら制作を続けていらっしゃいます。ご子息のアンジュ・ミケーレさんも画家としてすでに活躍していて、魅力的な作品を描いていてこちらもいつか手にしたいと思っています。
三嶋さんのガラスの作品はザ・リッツ・カールトン京都のロビーの竹をモチーフにしたものやコレド室町テラスのパブリックスペースに作品が設置されており、目にしたことがある人もいらっしゃるかもしれません。ボッテガ・ヴェネタ表参道のショーウィンドウにも三嶋さんのガラスブロックが連なったタワーが鎮座しており、独特の存在感を放っています。
ムラーノガラスの透明度。
今回ご紹介するのは、ボッテガ・ヴェネタのプロジェクトにあわせて制作されたガラスの四角いオブジェで、以前から持っていた小さな花入れのようなオブジェと並べて玄関に飾っています。
この透明度が三島さんの作品の魅力のひとつですが、このキューブ型のオブジェの方がその魅力がより伝わる気がします。まわりの景色がこのブロックに溶け込み、優しい光となって放たれる様は実に美しく、空間と光の交わりをやさしく増幅しているような装置になっています。後ろに置いた薪に反射するキラキラとした控えめな光は、ある種、ガラスの陰影ともいえるのかもしれません。ちなみに後ろの薪の左に置いてあるのは、LOEWE謹製のジョナサン・アンダーソンの焼き物です。ラグジュアリーブランドが工芸に目を向けていることがよく分かる絵に、図らずもなっていました。
光学ガラスの透明感に近いところもありながら、それはひとつひとつ職人が作っているからなのか、三島さんのガラスの作品は、氷のようにいつか溶けてしまいそうなかんじがするというか、より有機的な印象があります。
格子に嵌められた三嶋作品。
三嶋さんの個展が度々開催されている京都の思文閣のエントランスには、障子の格子にパターン違いの三嶋さんの作品が嵌められたパーテーションが設置されています。
これが実に素敵で、うちの軽井沢の小窓のひとつを格子枠にして、これを模して三嶋さんのガラスを何パターンかいくつか嵌められないものかと夢想しています。いつか実現させられるといいのですが。
Information
Shugo Arts(所属ギャラリー) 三嶋りつ惠 作品と情報
▶︎https://shugoarts.com/artist/59/
profile
1981年生まれ、神戸出身。広告代理店、雑誌編集者を経て、Sumallyを設立。スマホ収納サービス『サマリーポケット』も好評を博している。アート以外にも、音楽、食、舞台、などへの興味が強く、週末には何かしらのインプットを求めて各地を飛び回る日々。「ビジネスにおいて最も重要なものは解像度であり、高解像度なインプットこそ、高解像度なアウトプットを生む」ということを信じて人生を過ごす。
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