将来を嘱望される藝大の院生アーティスト
第13回の今回紹介するのは、南谷理加のペインティングです。彼女は1998年神奈川県出身の24歳、まだ東京藝術大学の院生のアーティストです。
彼女を知った最初のきっかけは、昨年、個展の様子をインスタグラムでたまたま見かけたことでした。その作風が気になったのですが、会期中に展示に伺えず、藝大内のアトリエまで作品を見に行かせてもらいました。彼女の作品を実際に見たのはその時がはじめてだったのですが、心象と向き合った景色を絵に落とし込んでいくそのスタイルが当時からとても印象に残りました。
写真右下の白鳥の絵もそのときからすでにほしかったのですが、単体では若干アイコニックすぎる気がして、手元に置くなら彼女の別の作品とセットがいいなと思い、このときにはまだ購入しませんでした。
画面構成のインパクトと、線の美しさが際立つペインティング
油彩の人物画の上に、心の内面を表すような線画の人物像をタトゥーのように墨絵で重ねていくシリーズを、今年になってから彼女ははじめました。中でも、緑の背景に振り向きざまの裸の女性に躍動感のある線画の走る人の墨絵が重なっているこの絵に一目惚れして、今回一番に購入を決めました。そして前述の白鳥の作品も、ああ、やっと手に入れられるという少し安心する気持ちとともに購入させてもらうことに。
ちょうど先日、軽井沢の小屋まで彼女が作品を直接持ってきてくれたのですが、左頬に垂れる髪の毛、墨絵の輪郭、背景の生い茂る草の情景、繊細かつ躍動感のある線で描かれていて、ぐっと引き込まれます。
この人物像のシリーズには気に入ったものが多くて、選びきれずに今回は白鳥に加えてこのシリーズを3点、結局計4点を迎え入れることに。同じアーティストの作品を同時に4作購入したのははじめてで、自分がいかに彼女の作品にしっかりハマっているかが我ながらよくわかります。
もう一点は、表情が暗くおちたタンクトップ姿の男性が本を読んでいる情景のペインティングです。数ヶ月前に紹介した、ジャック・ピアソンのSolitude(孤独)のプリントの傍に置いています。実にぴったりですね。黒い表情のなかにもどこかしらポップな雰囲気が滲んでいるのがまたいいのと、背景の線画が控えめに主張しているところが好きです。
そしてシリーズの3点目の購入作品は、なにかの液体を飲んでいる上半身裸の青髪の男性の人物画。飲んでいるのは水という設定らしいですが、毎年通っているフジロックフェスティバルで晴れて暑い日には自分も上半身裸でお酒を飲んでいたりもするので、このスタイルになんだか勝手に親近感を覚えたところもありました。フェスのときに背中に彼女にこういう絵を描いてもらえたら面白いなぁといった妄想を働かせながら、にやにやと絵を見て幸せを感じています。
白鳥の絵はまだ小屋には届いておらずで到着が楽しみなのですが、いやはや彼女の将来のほうがなおのことの楽しみで、今後どんなふうに成長していくのか、どんなアーティストになるのか期待を抱いています。若い才能に出会えるワクワクは、他のなにものにも代えがたいところがありますね。
Information
下記の展示にも彼女の作品が出展中です。
CAF賞2022入選作品展覧会(入場無料)
・会期:2022年11月29日(火)~12月4日(日)
・11:00~19:00 ※最終日のみ17:00閉場
・場所:代官山ヒルサイドテラスF棟 ヒルサイドフォーラム
・最終審査:12月2日(金)14:00~17:00 ※審査中一部閉場予定
▶︎https://gendai-art.org/caf_single/caf2022/
profile
1981年生まれ、神戸出身。広告代理店、雑誌編集者を経て、Sumallyを設立。スマホ収納サービス『サマリーポケット』も好評を博している。アート以外にも、音楽、食、舞台、などへの興味が強く、週末には何かしらのインプットを求めて各地を飛び回る日々。「ビジネスにおいて最も重要なものは解像度であり、高解像度なインプットこそ、高解像度なアウトプットを生む」ということを信じて人生を過ごす。
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