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遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.1 暮らしの中にもっとアートを
今日もアートの話をしよう

遠山正道×鈴木芳雄 連載「今日もアートの話をしよう」vol.1 暮らしの中にもっとアートを

アートを楽しむことは、知ること、買うこと、アーティストとともに成長すること。

「Soup Stock Tokyo」を立ち上げた、実業家の遠山正道氏と、美術ジャーナリスト・編集者であり、長年雑誌『BRUTUS』で副編集長を務められ「フクヘン。」の愛称をもつ鈴木芳雄氏が、アートや旅、本や生活について語る「今日もアートの話をしよう」。ぴあでの連載が終了した同対談を、今回よりR100 TOKYOから発信するWEBマガジン"Curiosity"が引き継ぎお届けします。第1回目となる今回のテーマは、「暮らしの中にもっとアートを」。まずはアートについて広くお話ししていただきました。
vol.2はこちら▶

Text by Fumi Itose
Photographs by Emina Nagahama

アートの歴史を知ること、アートを楽しむこと

遠山:「今日もアートの話をしよう」1回目の今回は、暮らしの中にアートをということで、まずはアートについて少しお話ししていきたいと思います。
 アートというのはとても古い歴史があって、何万年も前に描かれたラスコーの洞窟に代表されるような絵や、14世紀以降、イタリアで花開いたルネサンスなどがあります。日本でも琳派や大和絵、浮世絵といった独自のアートが生まれました。
 そしてモダンアートやコンテンポラリーアートというものが生まれます。特にコンテンポラリーアートというのは、皆さんにとっても一番身近なアートジャンルではないでしょうか。でも多くの人にとって、モダンアートやコンテンポラリーアートは区別がなかなかつきづらいというという印象があります。

鈴木:ちょっとここで、モダンアートとコンテンポラリーアートの一般的な定義について簡単にまとめておきましょう。モダンアートというのは、近代美術と訳され、基本的には主に20世紀に入ってから第二次世界大戦前までに生まれた、キュビスムやシュルレアリスムなどを指すことが多いですが、印象派を含む場合もあります。そしてコンテンポラリーアートは、おもには第二次世界大戦以降のアートを指します。

遠山:特にコンテンポラリーアートというのは、いま生まれている現代アートのことを言うときに使われることが多いですよね。皆さんにも耳馴染みのある言葉だと思います。

鈴木:いろいろと定義されますが、コンテポラリーアートを訳すときに、「同時代美術」と考えれば、いままさに生まれている、作られている美術のことです。そのアートを我々は鑑賞し、愛でる。そして作っている人とも同じ時代に行き、ときには実際に会うこともできて、いろいろ話ができたりもするし、もしかしたら制作に関与できるかもしれない。そういう可能性がある場所に私たちはともにいるわけです。
 それに現代のアートは必ずしも美しいとか、形が整っているとかではなくて、いま僕たちが生きている世の中と地続きのところで生まれているものという特性、特徴がある。作品の中には、美術以外の同時代の社会の問題なんかも組み込まれていたりする。もちろん今のこの現代のアートなので、現代アートと言ってもいいんですが、いま作家も我々も、さらには諸問題もともに生きている、それがコンテンポラリーアートなんです。

遠山:そしてまだまだこれからどんどん新しいものが生まれる分野。鑑賞者、購買者がともに成長し、一緒に歩んでいけるという側面を持っています。それがモダンアートをはじめとする、過去のアート作品との大きな違いだと思いますね。

日本でのコンテンポラリーアートの浸透

遠山:ちょっと思ったんですが、美術、特にコンテンポラリーアートをいろんな世代に浸透させたのは、『BRUTUS』の力が大きいんじゃないでしょうか。芳雄さんも『BRUTUS』でアート特集を何度もされてきましたよね。

鈴木:これは話し始めると長くなるんですが、これまでに僕も現代美術をはじめ、国宝や日本美術など、いろんな美術の特集を組んできました。

遠山:作家の特集もされてきましたよね。

鈴木:そうですね、同時代作家でいえば、村上隆さんと奈良美智さん2人の特集や、杉本博司さん、井上雄彦さんなどがあります。そのほか、いま大人気の伊藤若冲の特集もやりました。

遠山:そんな『BRUTUS』が美術の特集を始めたのはいつ頃のことだったんでしょうか。

『BRUTUS』1982年8月1日号 「特集:愛おしき“実用品”としての現代美術」表紙

鈴木:『BRUTUS』は1980年5月にマガジンハウスから創刊された雑誌です。一番初めに現代アートの特集が組まれたのは、1982年の8月。いまでも現代アートの最前線を走る、横尾忠則さんが表紙に登場しています。僕は会社に入ったばかりで、他部署にいたのでこの特集には関わってません。

遠山:横尾さんといえば、1960年代からグラフィックデザイナーとして活動されて、いまではデザイナーの仕事はもちろん、画家としても大活躍の偉大なアーティスト。このときはもう画家だったんですか?

鈴木:もう絵を描いていましたね。画家宣言をしたのが1980年の7月なので。

遠山:画家宣言?

鈴木:ニューヨーク近代美術館で開催されたピカソの大回顧展に行ったときに、ピカソの作品に衝撃を受けて、「僕は美術館の入口をくぐったときはデザイナーだったけど、出口を出たときはまるで豚がハムになるように、画家になっていた」というようなことを書いていて、「今後は絵画制作に専念する」と新聞記者に話したんです。それが「画家宣言」と呼ばれています。

鈴木さん所有の、1980年にニューヨーク近代美術館で開催されたピカソ展の図録

遠山:いい話! さすが横尾さんです。しかしアーティストってどこでどう生まれるかわからないものですね。横尾さんは、過去の作品から衝撃を受けて、画家になっていまがある。アーティストも鑑賞者も、どこで自分の仕事にするのか、ハマるのか、人それぞれで面白い。そういうことを知るのもまた楽しいことです。
 でもよくよく考えてみると、ピカソだって、生きているときは同時代アートだったんだけど、いまの私たちにとったら過去の歴史上の人。当たり前ですが、作家はもう亡くなっていて、会うことは叶いません。でも作品を通して彼はこれまでにとんでもないほどの影響を与えてきたことは間違いありません。でもどの分野でも歴史というのはそういうものであって、歴史があっていまの私たちがいるわけです。だからそういう歴史を一回おさらいして、ちょっと知っておくと、アートっていうのは楽しめることが多いですよね。

鈴木:そうですね。それ以外にも絵は宗教に重要な役割を果たしていることや、絵を発注していたのが誰かとか、描かれた絵の意味とか、流行とかそれを知ってると楽しみは確かに広がります。それに日本だと、いま美術品と言われているものが、昔は調度品だったりしたわけですよね。襖だったり屛風だったり、家具としての美術の高まったということを前提にして見てみると、また違った視点が持てるかもしれない。

遠山:用の美だったわけですよね。だから敷居を上げずに、気軽にアートを楽しんでほしいと思いますね。まだまだどこかでアートは高尚なもの、と思っている人が多いですが、そうではありませんし、過去の知識がないとアートが楽しめない、というわけではありません。

鈴木:アートを楽しむのに条件はないですからね。それは買うことも同じだと思います。

本編の収録はR100 TOKYOが分譲する「オパス有栖川」コンセプトルーム内で行われた。室内に置かれたアートや、工芸の技術をもってつくられた素材や家具を鑑賞しながら、暮らしの中にアートを置くことについて意見を交わす遠山氏と鈴木氏。
本編の収録はR100 TOKYOが分譲する「オパス有栖川」コンセプトルーム内で行われた。室内に置かれたアートや、工芸の技術をもってつくられた素材や家具を鑑賞しながら、暮らしの中にアートを置くことについて意見を交わす遠山氏と鈴木氏。
本編の収録はR100 TOKYOが分譲する「オパス有栖川」コンセプトルーム内で行われた。室内に置かれたアートや、工芸の技術をもってつくられた素材や家具を鑑賞しながら、暮らしの中にアートを置くことについて意見を交わす遠山氏と鈴木氏。
本編の収録はR100 TOKYOが分譲する「オパス有栖川」コンセプトルーム内で行われた。室内に置かれたアートや、工芸の技術をもってつくられた素材や家具を鑑賞しながら、暮らしの中にアートを置くことについて意見を交わす遠山氏と鈴木氏。
本編の収録はR100 TOKYOが分譲する「オパス有栖川」コンセプトルーム内で行われた。室内に置かれたアートや、工芸の技術をもってつくられた素材や家具を鑑賞しながら、暮らしの中にアートを置くことについて意見を交わす遠山氏と鈴木氏。

作家とともに鑑賞者も成長する

遠山:アートってアーティストが作るものですが、制作者と鑑賞者がいてはじめて成立するものだと思うんです。なんだか鑑賞者は見せてもらっているって思っている人が多い。でも双方がいないと成り立たないんだから、本当は対等な関係のはずです。

鈴木:あと、見てもわからないって引いちゃう人もいると思うんです。作品を理解しなくちゃいけないって思いながら見ている人も多いですよね。

遠山:それでは楽しめないですよね。気持ちはわかりますが、10人いたら10人の見方があっていいし、好き嫌いもあっていい。

鈴木:わからなくても、わからないままでいいし、何か感じるものがあったり、好きだな、嫌いだなって感情が動かされるだけでもいいし、自分なりの感じ方が持てればいいと思うんです。

遠山:それに最初わからなくても、あとからわかったり、急に腑に落ちることもありますよね。私たちだって好みがありますし、まったく興味が持てない作品やジャンルだってあるんですから、全部を理解しなければいけない、と構える必要はありません。

鈴木:最初わからなかったことがいつか腑に落ちたり、点が線になり、面になっていく。それに、好きな作家の作品でも、全部が好きってこともない。そういう見方でいいんだと思います。

遠山:特に作品を買うことで、作家とグッと距離が近づいて、いろんな話を聞くことができるようになると私は思っています。買うという行為によって、人との大きなつながりができます。

アートを買うこと

遠山:芳雄さんも私も、これまでにいろんな作家の作品を買ってきました。ではアートを買うというのはどういうことでしょうか。

鈴木:僕は美術品を買うというよりも、どこか資料を買っているというところもありますね。それに作家を応援したいという気持ちがあります。でも遠山さんもその気持ち大きいですよね。

遠山:そうですね。作品を買うと同時に、作家とのつながりも買っている感じもあります。繋がりができることでいろんな話をして、作家とビジネスが生まれたりする。そういう大きな可能性も含めて買っています。

鈴木:買うという行為は、人それぞれです。例えば、目に入ることが喜びだからほしいとか、持つ喜びとか。遠山さんはどんな作品を家に飾っていますか?

遠山さんのご自宅玄関に飾られる、菅井汲の版画

遠山:いま住んでいる家は、約30年前に結婚と同時に入居しました。そのタイミングで買ったのが、菅井汲の1970年代後半ぐらいの版画。大好きな作品で、いまだに玄関のところに飾っていますが、この作品は、結婚したときからいままで、私たちの生活の歴史とともにあるわけです。

遠山さんのご自宅リビングの棚に飾られる、菅井汲のタブロー

遠山:で、もう一点、私の生まれ年、1962年に描かれた作品を数年前に買いました。

鈴木:全然絵のタッチが違いますよね。玄関先の作品はペタッとした画面構成で、とてもデザイン的。反対にリビングの絵は、即興性が高い。

遠山:そう、菅井は1970年前後でガラッと作風が変わるんですが、私はその両方を持っています。一点は私たち家族と家の歴史をともに過ごしてきた作品であり、もう一点は私の歴史と菅井の歴史、世の中の歴史そのものを重ねて見られるような作品なんです。そういう買い方があってもいいと思うんです。

鈴木:そうですよね。好きだから、安いから、自分と何かしらつながりがあるから、どんな買い方でもいいわけです。それでもまだまだアートを買うという行為は敷居が高いと思われる方が多いと思います。

遠山:でも値段はピンキリで、例えば若い作家だととても安かったりする。自分の好みの若い作家を探すというのも、買う醍醐味の一つです。

鈴木:なので次回は、もっと具体的にアートを買うということについて、買える場所や、それこそ美術館とギャラリーの違いなど、そういうお話しをしていきたいと思います。

Event information

Art Fair Tokyo 2021 | アートフェア東京2021
日本最大級の国際的なアートフェアのひとつ。古美術・工芸から、日本画・近代美術・現代アートまで、幅広い作品のアートが展示される。

[会期]
3月19日(金)-21日(日)
各日12:00 - 19:00 ※21日のみ16:00まで

[会場]
東京国際フォーラムホールE/ロビーギャラリー
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5番1号

▶︎https://artfairtokyo.com/

profile

遠山 正道

1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。

▶︎http://www.smiles.co.jp/
▶︎http://toyama.smiles.co.jp

profile

鈴木 芳雄

1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

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