プラモデル大人買いから生まれた新シリーズ
鈴木:今日は加藤泉さんの不思議なタイトルの個展会場でお話を聞いていきます。
加藤:よろしくお願いします。
遠山:新型コロナウイルスのパンデミックで、外出規制とか展覧会がキャンセルになった、その間にプラモデルをつくることが楽しくて始めたとか?
加藤:はい、ヴィンテージのプラモデルをネットショッピングで大人買いして(笑)。
遠山:もともとプラモデルが好きだったのですか?
加藤:そうです。動物シリーズのプラモデルを発見して、これはつくってみようと思って買い始めたんです。箱も素敵で。たまたま鳥のシリーズをつくったときに、つくりかけの自分の木彫作品にのせたり付けたりしたらいけるんじゃないかと思ってやってみた。これはいける、展開できそうだと思ったのが始まりです。
鈴木:ここ2階の会場には、ジオラマのシリーズが並んでますね。川とか雪とか、どうやってつくるんですか?
加藤:これは四角い木から切り出して、ノミやチェーンソーを使って彫刻して、着彩しています。手仕事が好きなんですよね。プラモデルも僕、つなぎ目が好きで。普通はつなぎ目を消すんですけど、僕は美しいと思って強調しています。溶接の跡みたいにしたいんですね。
遠山:こういう有機的なものにプラモデルの硬質なものが合体して、やばいね。魅力的です。
鈴木:人体模型のスケルトン。これ、本当は内臓ごとに色をつけたりしてつくるのかな?
加藤:そういうこともできます。僕は目のところ以外、色をつけてないんですけど。プラモデルの素材も、昔は硬いプラスチックだったのが今はつくりやすく柔らかいのに変わってきてます。でもこの昔のは、つくりが悪くて、内臓がなかなか入らない(笑)。
遠山:この大きい写真の作品もプラモデルですか?
加藤:これは彫刻です。フランスのノルマンディー地方の、ル・アーヴル市から依頼されて設置した作品です。この写真がほぼ実物大で、高さ7メートルあります。1メートルくらいのサイズの木彫を僕がつくって、それを現地に送って、向こうの工場で拡大版をブロンズで制作しました。
鈴木:さわれるんですか?
加藤:さわれますよ。夜になると下からライトアップされてけっこう怖いです(笑)。この作品、教会の前に設置されているんですけど、問題になったというか、設置反対、撤去しろという住民がいたので住民投票になり、結局大丈夫になったんですけど。その反対した人たちの理由が、人間と蜂が交尾している、教会への冒涜だ、子どもが悪夢を見るようになった、とか。その発想すごいなって(笑)。
遠山:以前、渋谷のホテルのロビーに加藤さんの作品の設置を提案したことがあるんだけど、採用されませんでした(笑)。
加藤:そうなんですか? 残念。
鈴木:そういう反響があるほうがいいんだよね。当たり障りないものじゃつまらない。
とうとう、オリジナルのプラモデルをつくっちゃった
鈴木:4階のほうの会場には加藤さんの作品と並べて、プラモデルの箱が展示されてますね。すごい数。少年時代はどのタイプが一番だったんですか? 飛行機、それも戦闘機とか?
加藤:いや、世代的にはガンプラなんですよ。でもガンダムにはあまりハマらなくて、結局車とか飛行機、戦車とか普通のやつをつくって、それを爆竹で爆破してた(笑)。
遠山:爆破!? すごい。
加藤:ちょうど小学校6年生くらいの頃に最初のガンダムのプラモデルを買いました。あとその時期に、横山宏さんという人のつくったプラモデル、「S.F.3.D ORIGINAL」というシリーズが一番好きでした。今は「マシーネンクリーガー」として再販されてる。それ今でもちょっと買ってつくってますね。
鈴木:遠山さんはプラモデルは?
遠山:いや、まあ通ったことはあるけどね。でも加藤さんの世代はプラモデルっていう感じじゃないんじゃないの?
加藤:いや、全然プラモデルでしたよ。田舎だったからかもしれないけど。ファミコンもテレビゲームもまだあまりなかったから、だいたい男の子が家でやる遊びはプラモデルかマンガ。
遠山:これ、頭はソフビなんですか?
加藤:そうです。これは型から手で抜ける最大のサイズ。一時期、ソフビの作品をたくさんつくったんですけど、最近は僕の中ではソフビのブームが終わってあんまりつくってないです。こうやってバラバラにして、素材の一つとして木彫とプラモデルとかに組み合わせて使ってますね。
遠山:生き物のプラモデルばっかりなんですね。植物の解剖図まである。
加藤:生き物と飛行機ぐらいですね、作品に使っているのは。車とか他にもいろいろ持ってはいますけど。
鈴木:これが、オリジナルのプラモデルですか?
加藤:そう、最終的に僕、自分のプラモデルをつくったんですよ。エディション200で、自分の作品として。まだ販売していないんですけど。1/1スケールで、石の作品です。立体にこのシールを貼るの、なかなか難しいですけどね。この見本はプロの人が貼ってくれたんで。
遠山:こんな言い方してアレですけど、せっかくプラモデルなのに石って……。
加藤:そうですね(笑)。要は自費出版というか、自費制作です。音楽のレコードを出しているレーベルから、プラモデルも。
このプラモデルは、元の通りにつくってもらってもいいし、自分の好きにつくってもらってもいいんです。デカールも色のついたのとモノクロームのと2種類付けて、好きなほうを貼り付けてもらって。これが設計図。箱も貼り箱で特注です。
遠山:いやー、自分のプラモデルをつくって出すって、子どもの夢じゃない? でも石ってね……。
鈴木:笑。200個のロットだと、金型とか高そうだし、単価はけっこう高額になるのでは?
加藤:はい。作品の値段です。それでもシリーズで3つくらい出さないと赤字かな。
遠山:この、オリジナルブラモデルの元になった作品は、石巻の「Reborn-Art Festival 2021-22 後期」で展示されていた石の作品ですか?‐
加藤:そうです。石巻から持ってきて、この展覧会会場のある建物の通りを挟んだ向かいの空き地に展示しています。
鈴木:既存の石にペイントした、涅槃仏みたいに横たわってる作品ですよね。あれを発表したのもすごいね。東京都庭園美術館のグループ展「生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙」(2020年)でも他の作品を展示されていたのを見ましたけど、既存の石を使っているのに、どうやっても加藤さんの作品になっちゃうというのがね。
絵と彫刻、彫刻と絵―スランプからの脱出
鈴木:初めて立体を手がけたのは、絵を描き始めてから何年くらい経ったときですか? もともとは絵が先ですよね。
加藤:絵が先です。2005年くらいかな、スランプになって描けなくなっちゃったんですよ。そこから脱出するために、まず木彫をつくってみようと。それが続いてますね。
遠山:スランプというのは? 絵が売れなくなったということですか?
加藤:いや、売れる売れないは関係なくて。絵って本当に、行き詰まるんです。うまくいかない。みんなそういう苦しい時期がある。僕も典型的に、35歳くらいのときかな、もうまったく変なものしかできなくて、自分でもうだめだって精神的に追い詰められる。それで彫刻とかやってみたらスランプ抜けられるんじゃないのと思ってつくってみたら、本当に抜けられた。そこからはもう、スランプらしきものはないです。
鈴木:以後、スランプはないんだ。
加藤:ないですね。スランプのときってこう、トンネルの中を走ってるみたい。出口がない、真っ暗なトンネル。でもそのときは何か、そういうものだと思っていた。まわりにそういう大人も何人かいて、要するに下手ってことなんだろうと。でも彫刻をやってみたら、ある日、パーンって飛んで抜け出たみたいになったんですよ。答えが見つかったわけじゃないのに。そこからは閉じ込められているような感じもなくなって、無限の空間というか、やっちゃいけないことはもうない、こうしなきゃいけないと言われることもない。好き放題にやれるようになった。
遠山:それは自分で描くこともそうだけど、外からの評価とか、そういうことも影響してたんですか?
加藤:どうですかね。基本的に大きかったのは、作品で食えるようになったことです。バイトしなくてよくなった。僕、本当に仕事が好きじゃなくて、モチベーションが落ちてしまって、そこが一番のネックだったんです。それがなくなった。朝起きて、今日も作品をつくるだけでいい。ありがとうって思って起きる。そんな感じです、今でも。人から褒められるとか、そういうのはあんまり信用していない。人って手のひらを返すのでね。とにかく、アーティストとして生活に困らないというのが一番大きいです。
遠山:じゃあ、今はもう、最高ですね。好きなことをやって、買ってくれる人がいて。
加藤:そうですね。
鈴木:絵の作品もいろいろな形態がありますね。実験的というか。
加藤:このペインティングは、デッドストックの、違う色のキャンバスを使っています。2つのキャンバスを繋ぎ合わせた状態で描いています。そうでないと絵にならない。別々に描いて組み合わせても成立しないんですよ。いろんなところが関係しているんです、実は。
鈴木:別にアトリエが狭いからちょっとずつしか描けないわけじゃない?
加藤:ええ、まあ狭いですけど、そういうわけじゃないです。この赤いのは、キャンバスメーカーが試しにつくって発売しなかった、そういう希少種ですね。しかも赤はキャンバスの裏側なんです。そういう変な画材があると、知り合いの画材屋さんが連絡をくれる。加藤さんが好きそうなのが入りましたって。このシリーズは、緑と赤と黒と、買いましたね、多分もう手に入らないです。そういうのよく来ます、古くて黄色くなった紙とかキャンバスとか、加藤さん使いますか? じゃそれ買いますって。
鈴木:おもしろい。
島根の自然児が東京でアーティストになるまで
鈴木:少年時代の話を聞きたいです。島根県出身ですよね。海の近くで、天気のよい日は釣りをしていたとか。
加藤:はい。祖父は漁師でした。
鈴木:雨の多い地域ですよね。それと出雲大社があって、神様が集まるところ。
遠山:水木しげるも島根県でしたっけ?
加藤:水木しげるは鳥取県の境港なんですけど、僕の地元は島根県の安来市といって、ちょうど県境で近いです。はい、雨が多いんですよ。
鈴木:神々や妖怪が近くに住まうところ。そういうところから加藤さんという作家が出てきたのはわりと頷ける、と思っているんだけど。
遠山:武蔵野美術大学出身ですよね。高校時代からアーティストになろうと思っていたんですか?
加藤:いや全然。高校時代はサッカーばっかりやっていて勉強しなかったんです。東京の大学に行きたかっただけで(笑)。美術は特別に好きでもなくて、美術部に入ったこともない。東京藝大も受験してないです、どうせ落ちると思って。珍しいと思うんですけどね、藝大を受験してないアーティスト。
遠山:でも武蔵美の油絵学科に入った。
加藤:はい。
遠山:で、入ったら意外にそこで目覚めてしまって。
加藤:いや目覚めなくてね(笑)。ちょうどバンドブームで、ずっとバンドやっていたんですね、テレビのイカ天とかに知り合いがいっぱい出てて。僕カッコつけて出なかったんですけど。僕と入れ替わりでスピッツのメンバーが卒業したくらいの時期です。絵なんか描くのはダサい、みたいな感じで美大生がみんなバンド組んでた。あと、大竹伸朗さんがちょうどブレイクして、みんな大竹さんが好きで、かっこいい、大竹さんも音楽やってるって真似してた。
鈴木:そうか、1987年に佐賀町エキジビット・スペースで大竹さんの個展が開催されて、そのあと、西武美術館でもやって、彼の第一期全盛期だ。
加藤:はい、僕は1988年に入学したので。西武美術館ではアンゼルム・キーファーとかフランチェスコ・クレメンテとか、いろいろな展覧会を観ました。勢いがありましたね。
遠山:卒業して就職したんですか?
加藤:いや、就職せずにアルバイトしてました。まだバブルがちょっと残ってて、遊園地とかテーマパークのつくり物、造形屋さんのバイトが結構よくて、みんなやってた。
遠山:アーティストとして自覚したのはそれから?
加藤:30歳くらいですね。仕事が嫌いだったので。社会的にも追い込まれる年齢で、それまでそんなに美術は好きじゃないと思ってたのが、あるとき思いのほか好きだって気がついた。これは美術で勝負するしかないとバイトを減らして、制作の時間をつくるようになった。展覧会は増えてきたけど貧乏で、飲みにも行けない、音楽どころじゃない。これは作品を売るしかないと追い込まれたときにちょうどSCAI THE BATHHOUSEから個展の話が来たんです。
それまでは貸画廊で、作品が売れても生活費は1ヵ月しか持たない、残りはバイトするしかなかった。こんなの何十年もやれないと思って、作品を売るにはコマーシャルギャラリーでやるしかないなと。ちょうど小山登美夫ギャラリーとか若いギャラリストが台頭してきて、友達が何人か所属して売れるようになって、羨ましいなと思ってました。奈良美智さんや村上隆さんが売れ始めたのもあった。
鈴木:でもその頃、小山登美夫ギャラリーで展示してた若手の作品、みんな安かったよね。
加藤:当時まだそんなに食えてる人いなかった。大竹さんがあれだけ有名なのに食えないらしいよって。そんな時代です。
だけど、せっかくSCAIで、初めてのコマーシャルギャラリーでの個展の時期に、例のスランプだったんですよ。絵が描けないから、すみません、と彫刻展にして、数もまだあまりつくれてない、ガラガラな感じでオープンしたんです。
鈴木:え、そうなの。でもいい展示だったと評判だったよ。『AERA』とかにも出て。
「リトルボーイ」とヴェネチア・ビエンナーレが転機に
遠山:じゃあ、今、アートバブルみたいな感じだけど当時と全然環境が違いますか?
加藤:違いますね。SCAIの個展も全部売れたけど、それで生活費は1年間は持たないな、3ヵ月くらいかな、という感じでした。
遠山:そうか、そこからまだ十数年なんですね。
加藤:僕、スタートで出遅れてるんで、37歳くらいでしたから。
鈴木:ヴェネチア・ビエンナーレに出品したのはいつでしたか? 展示観ましたよ。
加藤:2007年です。
遠山:そのときにはもう結構評価されてたんですか?
加藤:いや、まだ多分そうでもなかったですよ。水戸芸術館現代美術ギャラリーで「クリテリオム」という若手の個展(2001年)と、グループ展「孤独な惑星−lonely planet」(2004年、窪田研二キュレーション)に出たくらい。
鈴木:ヴェネチア・ビエンナーレはMoMAのキュレーターとかをやったアメリカ人初の芸術監督、ロバート・ストーのキュレーション展「Think with the Senses−Feel with the Mind. Art in the Present Tense」に呼ばれたんですよね。彼は加藤さんを何で知ったのかな。
加藤:2005年にニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで村上隆さんキュレーションの「リトルボーイ」展に参加したのが大きいと思います。その後すぐ、アーモリー・ショー(ニューヨークのアートフェア)にもSCAIから出品していたので、そこで見てくれたようですね。
遠山:ずっと日本で活動してたんですか?
加藤:ええ、留学もしていないし、レジデンスとか奨学金、文化庁の派遣なんかもいっぱい受けたけどダメだった。賞も取れなかったですし。
遠山:じゃあ、その「リトルボーイ」が本当に転機だったんですね。
加藤:そうですね。でもそこから一気に売れるようになったわけではなくて、やっぱり大きかったのはヴェネチア・ビエンナーレです。海外の人が作品を買ってくれるようになって、その後から食えるようになった。
遠山:作風はその前からずっと変わっていないんですか?
加藤:まあ変わらずというかね、変わってるんですけど、基本は変わっていないのかな。
遠山:今や作品も売れるし、バンドもやれるし。
加藤:まあ、たまたまこうなったけど、でも明日には売れなくなるかもしれないし。僕らの仕事は保険なんか掛かってないんで、今の時代、いつ落ちるかわからない。好きなときにやっておかないと。
遠山:え、そういう恐怖があるんですか?
加藤:恐怖はないんですけど、そういう世界なんだとわかっている、ということです。なんでかというと、若い頃から今までずっとこう、篩(ふるい)にかけられている感覚がある。同世代のアーティストもどんどん消えていくからね、あと学校の先生になったりとか、あんまり残らないので。今、外国でやってても僕ぐらいの世代の人とか、10歳くらい下の世代っていうのは、ふるわれてる感じが強いんです。巨匠でもないし若造でもないし、今は生活はできてるけど、まだまだふるわれてる感じがあるので、全然安泰じゃない。
ここでよくない作品出したら落ちるって状況が、普通にあります。その感覚はおそらく、あると思いますよ、職業としてアーティストやってる人はみんな。すごくはっきり、あります。
遠山:そうなんですね。変に売れすぎちゃってブレる人とか、いるのかな。
加藤:はい、いっぱいいますね。そういう世界なんで、本当に、お金があるうちに使ったほうがいいなと思うんです。貯めるのは楽しくない。楽しみたい、楽しいことに使いたいです。好きなことにぶち込みたい。だから、ヴィンテージのプラモデルとか、こういうバカバカしいものに突っ込んでみたいんです。
いい絵を描きたい、それが最終目標です
鈴木:アジアとヨーロッパだと、どちらも人気だと思いますが、売れるのはどっちなんですか?
加藤:売れてるのはアジアです。経済が強いんで。
鈴木:モチーフの解釈とかは、ヨーロッパの人が見るのと、アジアの人が見るのとでは違うんじゃないですか?
加藤:全然違いますね。まあ、いろんなふうに見られるようにつくってるので、それは問題ないです。
遠山:自分でコンテクストをあまり語らないんですか?
加藤:コンテクストというか、作品の説明は基本的にしません。でも、僕はどういうつもりでつくってるとか、何がいいと思ってる、とかは、ちゃんと伝えるようにしています。
遠山:あの、胎児のような人物というか、ずっとあれに収斂していってるのはどういうことなのかな?
加藤:基本的に、いい絵が描きたいんです。最終的な目標というか。そのために、人間をモチーフに入れたほうが、今のところいい絵が描けるんです。彫刻だとそれがさらに勝手に発展していってる。なのでやめる必要が今のところない、という感じですね。やりたいというよりは、やめる必要がない。
遠山:ほっとくとああいう顔になっちゃってるんですか?
加藤:うーん、なんていうか、誰かを描いてるわけじゃなくて、画面とやりとりするなかで、いい感じになっていくと、ああいう顔になる。でも全部一緒じゃないんですよ、そのときごとにちょっと違う。そのときのやりとりで、今こういうプロポーションがよい、というのを描いてます。
鈴木:立体でも、3人とか、家族みたいな構成にしている作品がありますよね。
加藤:家族形態にしてるほうが、観た人がいろんなふうに考えると思うんです。観る人にいろんなことを考えてほしいので、そのために必要と思ったら、3人家族だったり、何人か増やしたりしてつくると思います。
鈴木:日本ではギャラリーに所属していないんですね。
加藤:はい、マネジャーがいて、制作や、美術館の展覧会の仕事とかは、自分のスタジオでやっています。海外のギャラリーはパリ、香港、ニューヨーク、東京、ソウル、上海に出店しているペロタンとロンドンのスティーブン・フリードマン・ギャラリー。
こちらから営業するわけじゃないし、選ぶというよりは選んでもらった。アーティストとギャラリーの関係は、ビジネスだけでもダメだし、難しいですけど、今のところその2つのギャラリーとはうまくいっている。海外で仕事しやすいので、ラクですね。今はアジア全体で一つのマーケットになってるので。
鈴木:日本で加藤さんの作品が欲しいと思ったら東京のペロタンに聞けばいいですか?
加藤:そうですね。
鈴木:島根県出身の人では錦織圭の次に有名人だって聞きますよ。
加藤:え、それ島根から東京に出てきた人の間でしょ。島根じゃ誰も知らないですよ。美術館からも声かからないし。
遠山:いやもう弾けてて、最高だな。やりたい放題な感じが伝わってきます。何か加藤さんの有機的なのと、プラモデルの硬質な感じが合体してるのが造形として気持ちいい。2階のゾーンが好きですね。木彫の上に1個の風景みたいに展開しているジオラマのシリーズとか。私、特に鱒のプラモデルが川にいる作品が気になりました。
鈴木:とにかく、なんでも加藤さんの世界になっちゃうじゃないですか。絵はもちろんそうだけど、石もそうだし、プラモデルさえも取り込んで、この強引さみたいなのがすごいな、と改めて思いました。
展覧会Information
「加藤泉―寄生するプラモデル」
会場:ワタリウム美術館
会期:〜2023年3月12日
休館日:月曜日
開館時間:11:00-19:00
▶︎http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202211/
profile
1969年島根県生まれ。1990年代後半よりアーティストとして本格的に活動。人がたをモチーフにし、プリミティブアートを想起させる独特なペインティングで注目される。2004年頃より木彫を中心に立体作品を制作し、ソフトビニール、石、ファブリック、プラモデルなど多様な素材を用いて表現の幅を広げてきた。2007年ヴェネチア・ビエンナーレの企画展に招待されるなど、国内外、特にアジアやヨーロッパで人気、評価ともに高く、各地の美術館、国際展で展覧会を行っている。主な個展に、Red Brick Art Museum(北京、2018年)、Fundación Casa Wabi (プエルト・エスコンディード、メキシコ、2019年)、原美術館/ハラ ミュージアム アーク(東京/群馬、2館同時開催、2019年)、SCAD Museum of Art(サバンナ、米国、2021年)など。現在、東京と香港を拠点に活動。アーティスト・バンドTHE TETORAPOTZのドラマーとしても活躍。釣り好きで知られる。
▶︎https://izumikato.com/
profile
1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。
▶︎http://www.smiles.co.jp/
▶︎https://t-c-m.art/
profile
1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。
▶︎https://twitter.com/fukuhen
Information
展覧会「Izumi Kato」
開催期間:2023年11月24日(金)〜2024年1月8日(月・祝)
開催時間
・ギャラリーエリア(展示):火-日/11:00-20:00
・レストラン(飲食):水-日/11:00-15:00(ランチ)17:00-23:00(ディナー)
定休日
・ギャラリー:月/定休日 ※月が祝日の場合は翌日休業
・レストラン:月-火/定休日 ※月火が祝日の場合は翌日休業
会場
Gallery Restaurant 舞台裏 (麻布台ヒルズ内)
住所
〒105-0001 東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA B1F
アクセス
東京メトロ日比谷線神谷町駅、5番出口より徒歩1分(駅直結)
Collaborator:PERROTIN
参加アーティスト:加藤泉
主催:ArtSticker (運営元:The Chain Museum)
▶︎https://artsticker.app/events/17103
Information
TOYAMA & TOHYAMA
遠山正道 Tiles : The Color
遠山由美 ふりかえり Looking back and forth
遠山正道・由美、両名による個展の同時開催。
正道は、昨今のコンセプチュアルなものではなく、1996年の初個展以来Soup Stock Tokyoの壁面などに展示してきたタイルの作品を。由美は、自身で創作した日本語と英語の両方に読める「両面文字」を用いた作品を中心とし、この10年は二拠点生活を通じてより内省的な作品も制作してきた。夫婦でもある両名が作品倉庫の移転を機に、30年近くになる制作活動の歩みをそれぞれに振り返る。
両名による個展は2001年のSaatchi&Saatchi Tokyoでの「Tohyama&Tohyama」以来となる。
会場:代官山ヒルサイドテラスD棟 地下1階&E棟ロビー
アクセス:「代官山」駅より徒歩5分
会期:2023年3月9日(木)ー3月12日(日)※終了
時間:12:00-20:00 *最終日は18:00まで
▶︎https://artsticker.app/events/3599