豊かな緑に囲まれた都内有数のヴィンテージマンション「広尾ガーデンヒルズ」
広尾駅を出て大通りから、緩やかな坂道とカーブが続く道へ入ると、都心の喧騒は一瞬で消えて、ケヤキ並木が木陰をつくる。猛暑のときでも避暑地に来たような気分になる。駅から徒歩3分の約5万㎡超の広大なこのエリアに、全15棟の住宅棟が立ち並ぶ広尾ガーデンヒルズがある。1987年に竣工した1000戸を超える規模と、豊かに育った樹木がつくる環境の素晴らしさを誇る、都内有数のラグジュアリーなヴィンテージマンションとして知られている。
Fさんご夫妻は、祖母が住んでいた広尾ガーデンヒルズの一住戸を、フルリノベーションして住むことに。規約がしっかりとしている同マンションのリノベーションの実績がある会社を探し、リビタの「R100 tokyo」を見つけた。
「ガーデンヒルズの物件を手がけている会社はいくつもありましたが、そのなかでもリビタはデザインのセンスが抜群で、テイストが私たちの好みに合うと感じたのです。手がけた物件の見学会に参加したときは、玄関を開けた瞬間に別世界が広がっていて感動しました。リノベーションでこれほど劇的に住まいが生まれ変わることを知り、R100 tokyoのコンサルティングサービスに依頼することに決めました」と夫。
設計はアトリエエツコ一級建築士事務所の山田悦子さんが担当。R100 tokyo のコンサルタントに紹介された建築家の作品集のなかから、Fさんご夫婦の完全一致で選ばれた。アトリエエツコが得意とするグレージュをベースとして、ご夫妻が好きな木や塗装壁などを取り入れながら、統一感のある空間をつくっていくことで方向性が決まった。
「私たちの好きなテイストを、コンサルタントの山田笑子さんが的確に理解してサポートしてくれていたので、信頼してお任せできる部分が多かったと感じています。設計を担当くださったエツコさんからご提案いただく素材の候補も期待どおりのものばかりで、楽しんで決めていくことができました。判断に迷うことがあっても、コンサルタントにすぐ相談して意見を聞けるというのも頼もしく、とても順調にリノベーションが進んだという印象でした」(妻)
家族やゲストとの会話も弾む、居心地抜群のLDK
リノベーションでは、個室だったキッチンをオープンにして、料理をしながら家族やゲストとコミュニケーションが生まれる空間にすることと、LDKを広く使えるようにすることがFさん夫妻の最優先の希望だった。
「できるだけ広く空間を使えるように玄関ホールを設けず、玄関からダイレクトにLDKをつなげました。玄関を入るとすぐにキッチンが見えるので、キッチンからの視線の抜けはキープしつつ、手元が隠れる高さにキッチンカウンターを立ち上げて、なるべくすっきり見えるように心がけました」と山田悦子さん。玄関から見てもダイニングから見ても、シンクや作業台が見えることなく、整然とした美しいキッチンに仕上がっている。家電やキッチンツール、ゴミ箱まで、ほとんどのものをしっかり隠せるように必要な収納をたっぷりと設けたこともポイントだ。キッチンの背面の収納がフラットに統一されるように冷蔵庫もビルトインで一体化させている。
キッチンの吊り戸棚、ダイニング横の壁面一面のキャビネットなど大半は扉付きの隠す収納だが、キッチン手前のガラスキャビネットは、ディスプレーを兼ねた収納としている。構造上動かすことのできない柱や、配線などがあったスペースを活用するために、Fさんご夫妻からつくってほしいとリクエストして実現したものだ。
「前の家では収納したままで、いつか使おうと思っていたお気に入りの食器を普段使いしていきたいと思って、出し入れしやすくいつも目に入る場所に飾れるキャビネットをつくりました。オールドバカラ、ヘレンドのティーセット、エルメスのモザイクシリーズなど、お客さまが来たときなどにここから出して使っています」と妻。繊細なフレームと木の背面、飾られたハイセンスな食器が、シンプルな空間のほどよいアクセントになっている。
プライベート空間を確保する家族それぞれの個室
Fさんご家族がこの住まいで快適に暮らすために決めたルールは、家族それぞれの個室を設け、自分のものは自分の部屋や専用の収納で管理すること。パブリックな場所であるLDKには私物を持ち込まないことで、LDKはいつでも美しく、ゲストを呼べる状態をキープしている。訪れるゲストはみんな抜群の居心地のよさに、長居していくという。
「夫は暑がりで私は寒がり。快適に感じる室内温度が違うため、寝室は別々にしたほうがお互いに心地よく眠れます。就寝前も眠くなるまで読書をするなど、自分の好きなように時間を使えて、家族の時間とプライベートな時間の住み分けができるのもいいですね。私は洋服やバッグ、アクセサリーなども多く、自分専用のクローゼットで管理するスタイルが気に入っています」
そう話す妻の部屋には隣接するウォークインクローゼットをつくり、洋服が選びやすいように白色の照明を設置。収納アドバイザーも参加して、どこに何をしまうか、綿密に相談しながら収納計画を進めた。一方、夫のクローゼットは通路に沿って造作し、部屋の面積をコンパクトに収めるように工夫している。
「妻は洋服が多く、娘の部屋にはピアノを置くこともあり、2人の部屋をできるだけ広くして、私の部屋はベッドが置ける広さがあればいいと考えました。私のクローゼットを廊下につくるアイデアをエツコさんから提案してもらったことで、3人のライフスタイルに合った個室がつくれたと思います」
そう話す夫の家族を思いやる優しさが、間取りにも表現された住まいとなっている。
ディテールでこだわりを表現した水回り
個室をコンパクトにしたり、水を使う場であるキッチンの面材をメラミンにしたり、必要に応じてコストを調整しているが、妥協できないところにはしっかりとコストをかけたこともFさんご家族のこだわり。夫が強く希望したのが高級感のあるタイルで仕上げたホテルライクな浴室だ。
「一般的なユニットバスは機能的で使いやすいかもしれませんが、エプロンが樹脂で質感がチープに感じてしまって納得できず、大判のタイル張りでつくってもらうことにしました。朝は必ずシャワーからスタートし、夜もリフレッシュする空間として、浴室は自分にとって大切な場所ですから」と夫。
また、ショールームを見学したときに、Fさんご夫妻が一目惚れしたというキッチンに採用しているブロンズ色の水栓金具も、空間を構成する重要なパーツだ。
「特注色のブロンズ色をお二人がとても気に入った様子だったので、その色を軸にキッチンのシンクや収納の取っ手などを合わせて提案していきました。上品ななかにも温かみのある空間に仕上がっているのは、この水栓が基準になっているからかもしれません」(山田悦子さん)
家具はどれも長年愛用しているもの。山田悦子さんの提案を取り入れ、空間に合わせてソファやチェアのファブリックを張り替えることで、新しい住まいにもしっくりと馴染んでいる。
「実は以前の住まいはLDKが40畳ほどあり、今回の住み替えはサイズダウンです。部屋が小さくなることで家具の存在感が増すので、エツコさんにアドバイスいただき、ソファおよびダイニングチェアをグレージュトーンに張り替えました。実際に住んでみると、全体の調和とバランスが快適さにつながることに気づきました。視覚的な広さや奥行感などの工夫が施された空間に、面積では計れない豊かさがあると感じています」(夫)
リノベーションを通して、今まで気づいていなかった自分たちの好きなものや好みに向き合い、より深く知ることができたというFさんご夫妻。磨かれた感性を暮らしに取り入れることで、この住まいは今後さらに洗練された空間になっていくことだろう。