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「建築は芸術品」の思想が息づく邸宅マンション『ペアシティ・ルネッサンス』
普遍的価値を持つヴィンテージマンション

「建築は芸術品」の思想が息づく邸宅マンション『ペアシティ・ルネッサンス』

品川・八ツ山エリアに立地するヴィンテージマンションの代表格
『ペアシティ・ルネッサンス』

東京の住まいで“本質的な価値観が表現される暮らし”を追求する R100 tokyo が、色褪せない価値を持ち“名作”と称されるヴィンテージマンションについて、独自の目線で土地や建築に込められたストーリーや増していく魅力の理由を紹介する連載。第1回で紹介するのは、江戸・明治期からの由緒ある邸宅地と知られる品川・八ツ山エリアに立地し、東京のヴィンテージマンションの代表格として知られる〈ペアシティ・ルネッサンス〉だ。

Text by Hiroko Ito

「都市の暮らしを芸術的観点から創造する」ハイグレードマンションの試み

品川駅高輪口から第一京浜を5分ほど歩き、線路の反対側に目を向けると、小高い丘のようにも見える坂道の先に、クラシックなレンガタイル貼りの建物が見えてくる。都内のヴィンテージマンションの中でもひときわのステイタス、品格を湛え、憧れをもって知られる〈ペアシティ・ルネッサンス〉だ。1980年築、建築当初は昭和を代表する大スター夫妻が住んでいたことでも話題になった。

第一京浜沿いの敷地入口から見た〈ペアシティ・ルネッサンス〉。丘の上に、深みのある色合いのレンガタイル貼りの建物が見える。

〈ペアシティ〉シリーズは、1970年代から80年代にかけて、「都市の暮らしを芸術的観点から創造する」モデルのひとつとして企画されたハイグレードマンションだ。企画者である東高ハウス創業者・井谷助二郎氏は、子どもの頃から絵画をこよなく愛し、建築や都市計画にも絵画と同様の価値があると考えていたという。のちに井谷氏は現代美術の振興のため、東京・青山に「東高現代美術館」を設立し、数々の企画展を開催して話題を呼んだ(※現在は閉館)。

建物自体を芸術品として捉えてきた井谷氏の思想が息づく〈ペアシティ〉シリーズは、現代のタワー型やデザイナーズ物件とは一線を画する存在感を湛えている。それが多くのファンを惹きつける理由となっているのだろう。

旧三菱財閥の別邸「開東閣」の森を借景に、工夫が凝らされたランドプラン

〈ペアシティ・ルネッサンス〉の立地は高輪四丁目。歴史ある高級邸宅地として知られる“城南五山”のひとつ、八ツ山エリアにあたる。地盤が強固な高台で、江戸の玄関口でもあったことから、これらの高台には徳川家や有力な大名が武家屋敷を構えていた。明治以降、武家屋敷の広大な敷地は財閥や実業家の邸宅となり、以降現在に至るまで邸宅地としての系譜は引き継がれている。

八ツ山には明治時代、伊藤博文の別邸がのちに旧三菱財閥の祖・岩崎弥太郎氏に譲られ、岩崎家別邸が建てられた。現在は三菱グループの迎賓館「開東閣」として使用されている。一般公開はされておらず、かつ1万坪を超える広大な敷地は豊かな緑に囲まれているため、戦火を経て修復・維持されているという洋館の姿を外からうかがい知ることはできない。ただ、ひとつの大きな森が見えるのみだ。〈ペアシティ・ルネッサンス〉はこの開東閣に隣接。広大な森を借景にする恵まれた立地も、他に代えがたい価値となっている。

総戸数247戸。約14,700㎡の広大な敷地に、高層棟と低層棟がゆったりと配置されている。高層棟は面前の道路から仰ぎ見るランドスケープとなり、低層棟は敷地内、そして開東閣の緑と一体化するような落ち着いた景観を織りなしている。

14階建の高層棟。
奥に見えるのが4階建の低層棟。
敷地奥につくられたテニスコート。休憩スペースや手洗い場も併設されている。
ロビーから見える日本庭園に、四季の移ろいを感じることができる。

東京都心部でこのような敷地の使い途は、近年ではほとんどあり得ないといってもいいだろう。ヴィンテージマンションならではの余裕の示しかたであり、絵画と都市を同じように愛し、美しさや安らぎを大切にしたという企画者・井谷氏の思いが具現化したランドプランだ。

メインエントランス。住まう人、訪れる人を迎える、重厚なアーチ型のファサードが特徴。

エントランスはガラス張りの開口が美しく、足を踏み入れれば大理石の床にはレッドカーペットが敷かれ、日本庭園を望むエントランスホールが広がっている。その佇まいはあたかもクラシックホテルのようだ。

しばし寛ぎたくなるロビースペース。

R100tokyo が注目した魅力~歩車分離のアプローチ、行き届いたホスピタリティなど、快適の要素が随所に

広大な敷地を活かし、全体にゆとりをもってつくられたランドプランだが、暮らしやすさ、心地よさを感じられる工夫が随所に見られる。

まずは敷地に足を踏み入れてから建物へと至るアプローチだ。緩やかにカーブを描いてつづく坂道は、完全歩車分離設計になっている。小高い丘の頂上にある邸宅へと期待の高まる風景にもなっており、景観と安全性が両立する優れたプランニングだ。

歩車分離が保たれるアプローチ。

敷地入口の守衛室には警備員、建物エントランスのフロントには管理人がそれぞれ常駐。警備員により24時間有人管理の体制となっている。見ていると、警備員や管理人は、住民の子どもたちが通ると優しく声をかけている。敷地内はいつも心地よく保たれており、庭園や敷地内の植栽の手入れも行き届いている。このホスピタリティの高さは、ひとたび住んでみればもはや欠かせないものになるだろう。

メインエントランスからアプローチを見る。駐車スペースは敷地の奥にある。

同じマンション内での住み替えが多いことからも、〈ペアシティ・ルネッサンス〉に愛着をもって長く住み続ける住民が多いことがうかがえる。子や親族など次世代のためにもう一部屋、と求める住民も少なくないという。中長期の管理・修繕計画も住民たちによって熱意をもって練られている。築40年以上が経ち、品川駅周辺の再開発が進んで街の様相も変わりゆく今、〈ペアシティ・ルネッサンス〉ならではの価値を保ちながら、将来を見据えた姿を模索しているとのことだ。

庭園と池、開東閣の森の風景は別荘地さながら。穏やかに永く住まい続ける邸宅へ

〈ペアシティ・ルネッサンス〉は高層棟、低層棟の2棟に分かれるが、R100 tokyo がおすすめするのは低層棟、そして高層棟の開東閣側の住戸。低層棟は、窓の外には庭園と池があり、さらには隣接する開東閣の森へと、水と緑の眺望が広がっている。部屋の中から眺めれば、窓に切り取られているのはまるで別荘地にいるような深い緑の風景だ。これを求めて高層棟から低層棟へと住み替える方もいるという。また高層棟開東閣側は、眼下にあふれる緑を日々愉しむことができる。

住居の外がすぐ池と庭園になっている。低層棟が人気を集める理由のひとつ。

R100 tokyo で手がけたリノベーションでは、この緑の借景を内装デザインに取り入れている。自然の光や明かりが美しく映える空間や、木の意匠が安らぎを与える空間を演出した。

窓の外は緑があふれ、まるで別荘地のような感覚。ぬくもりのあるヘリンボーンの木目の床が緑の風景に調和する。
柔らかな光が差し込むリビングダイニング。
庭園を眺めながら時を愉しむ。

過去の事例から R100 tokyo が考える内装リノベーションの検討ポイント

間取り設計の特徴として特筆したいのは、邸宅マンションにふさわしい玄関のしつらえだ。玄関ホールの広さ、収納ともに充実しており、住まう人にとってもゲストにとっても、ゆとりを感じられる空間になっている。

広がりを感じさせる玄関ホール。収納スペースも充実している。

キッチンは落ち着いて料理の時間が過ごせる独立型。住戸内の壁は躯体壁で取り壊せないところが多く、水回り位置の変更もしにくいため、リノベーションの際には考慮が必要だ。また各邸には温水器室が設置されている。欧米スタイルの設計を採用しているため、トイレと洗面所は一体型であることが多い。ご家族の要望によって分離したい場合には、間仕切りを設けるなどの対応を検討することになる。

調理スペースも収納もたっぷりとられた独立型のキッチン。

最後に、〈ペアシティ〉シリーズを企画した井谷氏の言を紹介したい。「現代芸術は半世紀先を走るものであり、評価は何十年後ということもある。これは建築にもあてはまり、未来を予兆するメッセージなのだ」という主旨のものだ。〈ペアシティ・ルネッサンス〉が今もなお色褪せない価値をもち、ヴィンテージマンションとして高い人気を保っているのは、ある種ひとつの芸術品としての輝きを湛えているからだろう。経年変化すらも心地よいものとして楽しむことのできる、貴重な住まいである。

R100 tokyo による同マンション内のリノベーション事例紹介

01. [事例ページ]

02. [事例ページ]

03. [事例ページ]

04. [事例ページ]

参考資料・文献

社団法人日本住宅建設産業協会「会報日住協」2002年8月号

大日本印刷「artscape 現代美術用語辞典 東高現代美術館」2009年01月15日掲載
https://artscape.jp/dictionary/modern/1198701_1637.html

しながわ観光協会「大名が愛した城南五山 八ツ山 御殿山を巡る」
https://shinagawa-kanko.or.jp/wp-content/uploads/2018/03/gotenyama.pdf

三菱地所「開東閣」
http://www.kaitokaku.jp/

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