生物の営みを作品作りに取り込む、世界で評価を得ている気鋭のアーティスト
第12回の今回紹介するのは、AKI INOMATAの作品です。彼女は1983年に東京で生まれ、生きものとの関わりから生まれるもの、あるいはその関係性をテーマに作品を制作。『Think Evolution #1 : Kiku-ishi (Ammonite)』という、タコが3Dプリンターで制作されたアンモナイトの殻に入っていく映像作品が、ニューヨーク近代美術館に収蔵されています。
この夏から秋にかけて名古屋近郊で開催されていた国際芸術祭『あいち2022』では、有松地区という絞り染めでも知られていた古い町並みのエリアにAKI INOMATAのインスタレーションが展示されました。今回紹介する作品《ミノガ絞り団扇》は、そのインスタレーションとあわせて販売されていたものです。
絞問屋だったという古い日本家屋を舞台に展開された彼女のインスタレーションの内容は実に独特で、ミノムシに有松絞りの生地を与え、その生地で蓑を作ってもらうという内容でした。あわせて、ミノムシが成長し蛾になったときの翅の模様をモチーフに、新たに絞り染めの技法を考案し、その模様で団扇も制作されました。
インスタレーションの空気感が色濃く感じられるアートピース
会場で販売されていたのはそのミニ版。とはいえ、手染めなので一本一本柄が違うというある種のユニークピースで、軽井沢も割と蛾が出るので、あまり乗り気ではない部分もありながら、蛾との共生感も少しくらいはあってもいいのかもしれないと思い、団扇と思うとなかなか高額なお値段でしたが、インスタレーションの一片と思うと納得感があり、購入を決めました。うちの小屋では、LOEWEの花入れモチーフのブレスレットを小屋の中心の柱にかけて実際に花入れとして使っているのですが、そこにこの団扇を挿してみました。なかなかフィットしているのでは、と思っています。
AKI INOMATAのインスタレーションは、この何年かは21世紀美術館やMAHO KUBOTA GALLERYをはじめとして、いろんなところで観ているのですが、毎回心を惹きつけられています。やどかりや真珠貝、タコやビーバーやイモムシといった生きものの息遣いを感じられる部分があるのも、その大いなる一因なのだと思うのですが、その息遣いを静かに増幅させてアートに昇華させているような彼女の作品群の有機性には独特の立ち位置があり、自分自身が生きていることを同時にも感じさせてくれているのかもしれません。同世代の活躍に、今後もますます目が離せません。
Information
AKI INOMATAさんが参加する展覧会が森美術館で開催!
『六本木クロッシング2022展:往来オーライ! いま、日本の現代アートが映し出す、人・文化・自然のカラフルな交差』
会期:2022年12月1日(木)〜2023年3月26日(日)
会場:森美術館
休館日:会期中無休
開館時間:10:00〜22:00(火曜日のみ17:00まで。ただし1月3日(火)、3月21日(火・祝)は22:00まで。入館は閉館の30分前まで)
※その他チケットなど詳細は展覧会公式サイトをご覧ください
▶︎https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2022/index.html