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建築、インテリア、家具。二俣公一氏が目指す、<br>すべてに一貫するクオリティ。
Focus on Designer

建築、インテリア、家具。二俣公一氏が目指す、
すべてに一貫するクオリティ。

「そこは本当に心地よいのか、長く使われる空間なのか」。
領域を超えてデザインする二俣公一の真摯な問いかけ。

デザインによって「より豊かな暮らし」の実現に寄与する人物を紹介する「Focus on Designer」。11回目は、建築、インテリア、家具、プロダクトなど空間にまつわるものを幅広くデザインする二俣公一氏に話を聞く。自身をいずれかのジャンルに縛りつけることなく、それらを有機的に関連させてクリエイションを発揮するのは、彼のアプローチの大きな特徴になっている。近年はホテル、店舗、住宅などのプロジェクトを手がけるほか、海外のブランドからも家具を発表するなど評価を国際的なものにしてきた。その作風は使い手に何かを押しつけることなく、常に心地よいオープンネスとともにある。

Text by Takahiro Tsuchida
Edit by Masato Kawai(BUNDLESTUDIO)
Photographs by Yosuke Owashi

二俣公一氏は九州で生まれ育ち、福岡をベースにしながら東京にもオフィスをもつ2拠点活動を20年近く続けている。そのキャリアの初期には、制約の多い地元での内装や設計の仕事を積み重ねながら、自作したプロダクトを東京のデザインイベントに出品する時期があった。その過程で育まれた確かな地力と感性が、彼の近年の仕事では豊かに結実しているように見える。

二俣さんが1998年に発表した「コンセンツ」。住宅の中に必ずあるが、当時はデザインの対象になっていなかったコンセントに着目した。Photo by Hiroshi Mizusaki

——最近はとても忙しく仕事されている印象がありますが、デザイナーとして活動を始めてから現在までにどんな転機がありましたか。

大学を卒業してからずっと自分でやってきたので、大きな転機があったとは感じていませんが、20代前半に自分たちで製作したものを東京のデザイン展で発表したことが現在につながっている気はします。当時の作品には後に製品化された「コンセンツ」などがありました。今、考えると無謀なんですが、福岡では小さな内装の仕事しかなかった時期にも東京での展示にはできるだけ参加していて、おかげでたくさんのデザイナーやメディアの方と知り合うことができました。その頃から、プロダクトデザインや建築など何かに絞るのではなく、そのあたりのことをすべてやってみたいという気持ちがあって、それが現在まで続いています。

二俣さんが主宰する設計事務所、ケース・リアルによる「城崎の家」(2020年)。敷地が川沿いにあることから安全面も考慮して住居スペースを2階に配置した。
白とウッドを基調に、黒い椅子が空間を引き締めている「城崎の家」のキッチンとダイニングエリア。
スリット状のハイサイドライトから、1日を通して室内に柔らかい光が差し込む。白い壁面の明暗のバランスも美しい。

——領域を超えた活動が、そんな時期から意図されていたのは驚きです。

プロダクトのように小さいものは、自分たちでコントロールしながら試作して完成させられたので、それはずっとやっていましたね。同時に、もっと多くの人でチームを組んでつくっていく建築やインテリアにもまた魅力を感じていて、それはプロダクトとつながっているけれど違うところもあります。こっちがあるからこっちについて違う見方ができるという、相乗効果で視野が広がるイメージは最初からありました。ただ、集中しないからといってどこかが手薄になってはいけないという思いも同時にあって。全部やりながら、それぞれにちゃんとできなければ意味がない。時間がかかることは覚悟した上で取り組んできました。

——そんな活動のモデルになった人がいたのですか?

目標とする人がいたわけではありません。ただ、高校生の時にマリオ・ボッタの本を手に取って、そこから感じたことは覚えています。彼は建築家として住宅から大きなオフィスビルまで設計していますが、家具のデザインも有名です。また舞台のデザインなども手がけているんです。こんな鋭い感性をもって幅広いことができる建築家というものにとても興味をもちました。それまで建築家というと、自宅の設計もしてくれた親戚のおじさんくらいしか知らなかったので・・・。その時に初めて建築に目覚めたのかもしれません。僕は鹿児島ではサッカー少年で、絵を描いたり何かをつくったりするのは好きでしたが、デザインや芸術との接点はほとんどなかったんです。

マリオ・ボッタについては、大学生の頃にユーズドの椅子を買いました。彼の家具は今は再評価されているけれど、当時はそれほどでもなかったから安く買えたんです。とはいえ大学生にとっては相当の出費でした。その椅子は今も自分の仕事部屋に普通に置いてあります。

二俣さんは1975年、鹿児島生まれ。高校時代まではひたすらサッカーに打ち込んでいたという。

肩書きを意識せず、それぞれのデザインのベストなあり方を考える

——ジャンルを絞らずに活動するというアプローチが周囲に認知されるまでには、苦労もあったのではないでしょうか?

いちばん困るのは、肩書きは何ですかと聞かれる時ですね(笑)。デザイナーというとファッションも入ってしまうし、インテリアデザイナーやプロダクトデザイナーというふうには限定できない。建築家は一般に最も総合的に物事を手がける職業ですが、僕は建築家の視点から家具やプロダクトを捉えることに抵抗があって、どちらの目ももちたいと思っているんです。小さいものについては、手元にある感触や間近で見る感覚を大切にする意識をもち、素材やディテールを考えるということです。建築を設計する際にそんな意識がないわけではないけれど、建築とプロダクトではスケールがあまりに違います。「建築から見ると」という考え方をしないという意識もあって、今は空間・プロダクトデザイナーと説明しています。

2022年に日本のファニチャーレーベル「E&Y」から発表した椅子「エスカー」。ディテールの曲線や曲面によって個性的な表情をつくっている。

——二俣さんの家具は、建築家が家具デザイナーとは違う視点や価値観でデザインする「建築家の家具」とは違うというのは、確かによくわかります。

すべてではありませんが、建築家による家具は建築の部品としてつくる感覚が大きいと感じています。僕も自分で設計する空間のためにドアハンドルや蝶番をデザインすることがありますが、それは建築の部品です。しかし、たとえば椅子だと、そのレベルを超えてプロダクトとしての配慮や整理が必要だと考えていて、厳密に言うと建築の延長線上だけではデザインできないと感じています。

インテリアも同様で、家具よりは建築に近いけれど、やはり違う部分があります。建築をつくる時の大きなコンセプトをインテリアにも貫くアプローチがありますが、インテリアはもっと繊細に見ていかないと何かが足りない。コンセプトが一貫していると、確かにダイナミックでおもしろいんだけど、そこは本当に心地よいのか、長く使われる空間なのか、吟味すべきだと僕は考えています。

「台北の住居」(2019年)。この住まいに合わせてダイニングテーブルをオリジナルでデザインした。
素材の選択と精度の高さが、空間のテイストを特徴づけている。
モダニズムから生まれた家具のマスターピースと、どこかアジアを感じさせる設えが調和する。
ミニマルで広々としたバスルームの空間構成に、二俣さんの世界観がにじむ。

——建築、インテリア、家具を別のものとして捉えるなら、3倍の修練が必要ということになりますね。

完璧にできているかはともかく、そういう気持ちでやっています。特に住宅を設計するときは、建築について、インテリアについて、さらに家具も一緒にデザインするならそこについても、並行して進めることになるのでかなりの作業量になってしまい大変です。ただ住宅で主軸を置くのは、内部空間に身を置いた時にどうあるかだと考えています。だから建築の外観は、その中身からスタートして最終的に統合させるようなプロセスをとることが多いんです。アクロバットな箱から住宅を発想していくことはありません。

もうすぐ竣工する住宅では、その家で使う4脚のためだけにダイニングチェアをデザインしました。空間にふさわしい精度のあるものにしようと思うと、そこまでデザインすることもあります。飲食店のデザインでも、既製品で間違いないものが見つかればそれを使いますが、そうでない時はつくるしかない。特定の空間の寸法に合い、座面の高さがちょうどよく、幅、奥行き、座り心地、雰囲気、すべてが合致するものはめったにありません。もちろん既存の椅子の選択肢は無数にあるのですが、ちょっとの違和感が空間を台無しにしてしまうケースもあります。

東京・渋谷のミュージック&ワインバー「スタジオ ミュール」のインテリアは、落ち着きと個性が共存している。椅子は店名の頭文字「M」をモチーフに二俣さんがデザインした。

——そのようなアプローチでデザインすることにより、二俣さんの独特の雰囲気や居心地をもつ空間が生まれていくんですね。

家具のデザインが空間のデザインのコンセプトに合っているほうがいいというのもありますが、それ以上にいかに人がくつろげる場所をつくれるかを考えているんです。その場所のオーナー、使う人、介在する人、すべてにとって、ですね。住宅や店舗であれば、その持ち主に似合っている空間がいちばんだと思います。住空間については相手とのコミュニケーションに特に時間をかけていますし、そのほうが結果として長く使ってもらえるはずだと考えています。

たとえば「スタジオ ミュール」は小さなバーで、音楽レーベルのオーナーである施主が「ここは自分の店であり居場所」と思える空間になったと思っています。彼自身の考え方や哲学が、空間のすべてから伝わるといいと考えました。設計の過程で相手と話し、接してきて感じたいろんなものをひっくるめてデザインしたんです。空間に関する希望を教えてもらい、それだけを手がかりにできたものではありません。

既存のホテルをリノベーションした東京・日本橋馬喰町の「DDD HOTEL」(2019年)。
光によって色合いを変化させるモスグリーンを採用した「DDD HOTEL」の客室フロア。
現代に必要とされるビジネスホテルのあり方をチームで考え、従来のホテルにない設えが採用された。
2階のカフェ&バーは、このホテルに集まる人々の交流の場としての機能をそなえる。

条件や制約をすべて受け入れてから、作品としてのレベルを目指す

——一方でホテルのような公共施設は、そこで過ごす人が特定されるわけではありませんよね。こうした物件ではどんな考え方に基づいてデザインするんですか?

オーナーや運営に関わる人たちの話を徹底的に聞いてそこから糸口を探していきますが、同時に今までの経験をぶつけるところも大きいですね。たとえば「DDD HOTEL」はオーナーも若く、いろんなチャレンジをしたいということだったので、そこから客層を意識しました。ただ、そこに合わせにいくだけでなく、その施設として望ましいと思う形を、自分の得意なところをストレートに生かしながら提示しました。僕よりも若い人たちが、そこに触れて刺激を得られたらいちばんいいと思うんです。

2021年竣工の「葉山の家」は、高台の好立地にある平家建て。
天井がいちばん高い場所で4mあることから、一部を2層にして半個室のような小さなリビングスペースを設けた。
住居スペースの中心にキッチンがあるのは、施主の希望だったという。キッチンの仕上げには防水性のある左官材を使用した。

——そのような意味で、二俣さんらしい空間とは、どんな空間でしょうか。

予算の制約もなく、完全に自由に作品のような空間をつくってほしいと言われたら、何もつくれないでしょうね(笑)。僕は能動的にデザインをしている感覚がなくて、いい言い方ではないかもしれませんが、受け身なんです。すべてを受けて、そこから抽出して、切り捨てて、自分たちの美意識とミックスしながら、いいものにしていく。その過程で今できるベストを考え、新しい何かを切り拓きたいと思っています。

それはもちろん、相手に言われたことをそのままやるということではありません。ただ、意見を戦わせることはなくて、全部受け入れてからその先を考えていくタイプかなと。それと同時に、最終的に自分たちの作品だと言えない仕事はしたくないし、それにふさわしいだけの手間と時間をかけて考えるようにしています。

1970年代に建てられた集合住宅の1階にある「アーツ&サイエンス福岡」(2021年)。既存の開口部を生かしてエントランスを設けた。
赤茶色のタイルやその貼り方は、近隣の福岡市美術館のディテールを参照したもの。この美術館はル・コルビュジエに師事した前川國男が設計している。
二俣さんは、タイルの工芸的な美しさはアーツ&サイエンスの考え方と相性がいいと考えたという。
現代的でありながらタイムレスな感覚を兼ねそなえるアーツ&サイエンスの店内。

——受け身とは言っても、二俣さんの手がける空間には独特の好みというか、共通したものを感じることがあります。それはひとつには、素材とその仕上げから来ているように思うのですが。

確かに、全体のコンセプトを決めた後は、スタッフと一緒に素材とその収め方などのディテールを詰める作業を延々と続けたりします。それによって雰囲気をコントロールするというよりは、単に癖かもしれない(笑)。どんなにいい材料でもきちっと収まっていないと使う意味がないと思っているんです。特に注目している素材があるわけではなく、周囲の文脈や条件によって決まっていきます。

去年オープンした「アーツ&サイエンス福岡」は、福岡でセントラルパークのように親しまれている大濠公園のそばにあり、この公園には前川國男が設計して1979年に竣工した福岡市美術館が立っています。アーツ&サイエンス 福岡の壁面に赤茶色のタイルを使ったのは、このタイルを見ると福岡の人があの美術館をすぐ連想するからでした。その空気感を引っ張ってこれる要素を考えた時、あのタイルのイメージが浮かんだんです。施主も打ち合わせの中で、九州に初出店するアーツ&サイエンスが地場に根づいていくことを強く意識されていました。

内装に使ったタイルは福岡市美術館とまったく同じではないのですが、四半目地といってタイルを45度傾けて貼り、美術館のディテールを踏襲しました。エレガントに見える貼り方なので、アーツ&サイエンスのイメージにもよく合っています。コーナー部分を立体的に仕上げるのがとても難しく、そこは苦労しましたが、施工者やタイルメーカーとも打ち合わせを重ね、時間をかけて解決しました。店舗が入っているのは築40年以上の古いマンションで、特徴的な開口部があるのでそれを生かしてデザインしています。

僕はディテールが空間をつくることもあると思っています。大きなコンセプトでつくる作品に対して、当たり前のディテールをきっちり考えて積み重ねていく「作品」の成り立ち方もあるはずなんです。

福岡と東京の2拠点生活を長年続ける二俣さん。移動は楽とは言えないが、どちらにも愛着があるという。

——ニュートラルな中にも地域や歴史と結びついた要素があり、特にディテールにおいてその感覚が反映されている。そして瞬間的な驚きよりも、長く過ごすことで実感できる居心地を大切にする。そんなアプローチが、二俣さんがつくる空間の豊かさをつくり出しているんでしょうね。二俣さん自身は、豊かな空間、豊かな暮らしというものにどんなイメージをもっていますか。

使う人の生活に馴染んでいる感じが、いちばん豊かではないでしょうか。気を使ってきれいに住む家よりも、使いつぶしているくらいが僕個人としては好きです。それは空間も家具も同じですね。デザインする立場としては緻密につくっていますが、住む人がそれに縛られすぎることはありません。豊かかどうかわからないけど、リラックスして過ごす時間が好きなんです。

自分の家も、そうですね。約3年前に福岡に建てた家は、それなりにものも置いていて、とてもラフに使っています。同じ敷地に妻の両親の家も建てたので、集まって住む感じも気に入っています。もともと敷地にあって両親が商売していた八百屋のイメージや、そこに生えていた大きな黒柿の木など、この場所がもっていた雰囲気も意識したところがあります。これからも長く住み続けて、この場所により馴染んだ家になっていくといいなと思っています。

profile

二俣公一

空間・プロダクトデザイナー。福岡と東京を拠点に、空間デザインを軸とする「ケース・リアル」と、 プロダクトに特化する「二俣スタジオ」を主宰。 インテリア、建築、家具、プロダクトと多岐にわたるデザインを手がける。主な空間作品に、「アーツ&サイエンス福岡店」、 香川県「海のレストラン」、日本橋馬喰町「DDD HOTEL」、 オーストラリア発のスキンケアブランド「イソップ」との店舗など。フィンランドの「アルテック」や日本の「天童木工」はじめ国内外の家具ブランドとも恊働している。

▶︎ http://www.casereal.com
▶︎ http://www.futatsumata.com/ja/

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