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“終の棲家”と決めたのは、自分だけの「CASUALUXE」な空間
豊かな暮らしを訪ねて

“終の棲家”と決めたのは、自分だけの「CASUALUXE」な空間

終の棲家は自分のためだけに過ごす場所――「CASUALUXE」な空間で手に入れた安らぎの時間

住まいは、家族が多くの時間を過ごす場所。その時間が心地よく満たされたものであれば、人生はより豊かなものになる。私たちR100 TOKYOの企画した物件に暮らすオーナー家族は、実際どのように現在の住まいと出会い、どのような暮らしをしているのだろうか。さまざまな家族の住まいとライフスタイルをリポートする連載「豊かな暮らしを訪ねて」。3回目は、2020年4月に都内の戸建てから移り住んできた奥さまのCさんと愛犬がゆったりと暮らす住まい。カジュアルかつラグジュアリーな「CASUALUXE」をコンセプトとした空間には、良質でありながらリラックスできる素材や色調を持つインテリアが、住むものを包み込み、安らぎを与えていた。

Text by Hiroe Nakajima
Photographs by Yoichiro Kikuchi

バリアフリーで安全な住まい。予想外だった開放感

ホワイト、ブラウン、ベージュの色調で、麻の素材を基調としたリビングルーム・ダイニングルームは約40畳。
西側と北側の窓から光が差し込むリビング。窓からはルーフバルコニーに出られる。

大使館やインターナショナルスクールなどが点在し、外国人居住者も多く暮らす広尾、六本木、麻布エリア。R100 TOKYOが一棟リノベーションしたマンションの最上階に住むオーナーのCさんは、購入から約1年をかけて設計と工事を行い、より自分の好みにかなう住まいに整えた。そして昨年春、田園調布の戸建てから転居。隅々まで納得のいくこの空間を心から気に入り、日々の暮らしを満喫しているという。

「数年前からマンションへ移り住むことは考えていました。以前住んでいた3階建ての家は段差が多かったので、これからのことを思い描いたとき、フラットでバリアフリーな住まいのほうがいいだろうと思っておりました。ちょうどそんなとき、こちらの物件情報を入手して内見することに。マンションというと密閉されたイメージがあったのですが、ここは最上階ということもあり、東西南北すべての面に窓がありますし、南以外の三面にバルコニーがあってとても開放的なつくりでした。そのうえ周囲の建物との距離は十分に保たれていて、目に映る公園や林の緑が美しく、たいへん気に入ってしまいました」

ダイニングから玄関を見るとシンメトリーになっている。左右2台のグラスキャビネットは、蒐集していたバカラのグラスを収めるため特注品。

「ここを終の棲家とし最良の住まいとする」と心に決めたCさんは、段ボール約200箱分の生活用品を断捨離して移り住んだという。前の家のインテリアはクラシックなヨーロピアンスタイルだったが、今回はぐっとモダンな「CASUALUXE」スタイルに統一。内装、調度品、インテリアの一切はインテリアデザイナーのコマタトモコさんに任せた。

「実はまだリノベーションは継続中です。客室のクローゼットをドレッサーにしようと思っておりまして、コマタさんにご相談しているところです」というCさんの言葉からも、コマタさんに寄せる信頼の厚さがうかがわれる。

インテリアは木、麻、天然石などオーガニックな素材を多用

ソファのクロス、クッション、カバー、カーテンなどのファブリックには生地に麻が織り込まれているので、さらっとして肌に心地よい。
リビングのローテーブル。脚は真鍮製、テーブル部分の木材はオリーブカスティーヨを使用。

麻は、人間が初めて布をつくったときに用いられた素材であるとされており、古来日本人の生活を支えてきた。伊勢神宮の神礼の「神宮大麻」の由来となった植物で、藍、紅花とともに三草とされる神聖なもの。また麻布という地名は、麻を多く植えて布をつくっていたことに縁(ゆか)るという。そのことからもコマタさんは、麻が現代の人々の望む「CASUALUXE(カジュアルでリラックスできる良質なもの)」にかなう価値ある素材と考え、上質な麻をこの住宅の家具やファブリックに用いることを提案した。

ランプシェードは甘露寺芳子さんのブランド、パフコレクションのもの。ミニマルでスタイリッシュな空間に、女性らしさのあるこのアイテムがワンポイントになっている。

家で過ごす時間が多くなった2020年、Cさんがここでの日常をストレスフリーで送ることができたのは、約300平米という十分な面積があることだけではなく、そうした素材や意匠も影響しているのではないかと思われる。一緒に移り住んできた愛犬のトイ・プードルも当初は周辺をキョロキョロと見まわしていたが、今ではリラックスした様子で部屋を走り回ったり、ソファに寝そべったり、天気の良い日はルーフバルコニーに出たりしているそう。

愛犬のトイ・プードルは10歳。今でも遊ぶのが好きで散歩も大好き。ここでの暮らしを気に入っている様子。

「近くには緑豊かな公園もありますし、この子にとっても毎日の散歩が楽しみのようですよ。田園調布の住まいのそばには大きな街道が通っていたので、かえってこちらのほうが静かな印象があります。歩いて15分程度のところにカフェやお店があるので便利ですが、今はお友達とお茶をするのもランチをするのも我が家のバルコニーでどうかしら? という感じで、お家時間を堪能しております。外出してもすぐに帰宅したくなるほどです(笑)」

リビングから寝室などへ通じる廊下はギャラリーのようになっている。壁紙にも麻が織り込まれている。
廊下の途中にソファを置いたスペースがあり、パーティなどの際にはちょっとした休憩所になる。

誰にも気兼ねせず、自分だけの時間を楽しむ

ゴールドが入ったこのバカラのシリーズは現在では生産されていない稀少なもの。

数年前に夫を見送り、2人のお子さんも既に家庭を持つCさんにとって、ここは誰に気兼ねすることもなく、自分だけの豊かな時間を過ごすための住まいなのだ。コレクションしていたゴールドのバカラもこの家に来てからは、ディスプレイするだけではなく使用することに決めた。「昨年の誕生日のとき、実際にシャンパンをいただきました。残りの人生は、そのように楽しんでいきたいと思っております」とCさんは語る。

家の中でお気に入りの空間はいくつかあるが、朝はキッチン奥の西向きの小部屋で朝食をとるのが常とのこと。

「朝9時頃から1時間ほどかけて、この小部屋でゆっくりと朝食をいただくんです。お向かいのマンションに当たる朝の光を眺めながら過ごす時間帯は何ものにも代えられません。とても落ち着きますし、一日の始まりに心身をリセットできる心地がいたします」

キッチン奥の西向きの小部屋。6畳間くらいだが、1人で朝食をとるには十分なスペース。
キッチン奥の西向きの小部屋。6畳間くらいだが、1人で朝食をとるには十分なスペース。

このエリアには縁を沿うように古川が流れており、この川により山と谷、高台と低地が形成され起伏のある地形となっている。それゆえにCさんの住まいのある高台からの眺望は変化に富んでいて、目に映る木々も季節によって表情を変える。「今度の春にはまたどの方向に桜の木が見えるかしらと楽しみにしています」とCさんは言う。

さらに好天の日は、窓から東京タワーが望めるバスルームもCさんの好きなポイントだそうだ。

シンクの水栓金具はドイツのドンブラハ製。壁はエイ革のガルーシャ柄の壁紙にガラスを貼った特注素材。
バスルームの窓からは東京タワーが見えることも。

「アロマキャンドルをたいてゆっくりとお湯につかるバスタイムもリフレッシュできる時間です。東京タワーのあかりを見ながら、いろいろなことに思いを巡らせる日もあります。昨年は娘や孫たちになかなか会えなかったのですが、夏にようやく次女家族が帰国して家に泊まってもらうことができました。孫たちもこの住まいを気に入ったようです」

帰国の際に娘さん夫妻が休む寝室にはシャワールームが付いているので、外国人のお婿さんも喜んでいるそうだ。

客室のツインベッドのリネンにも麻やシルクが用いられている。
シャワールームも併設されておりホテルライクな設備。

ホスピタリティを備えた家。でも今は一人時間を満喫

以前はリビングでソファとして使っていたものをエントランスのベンチに。薄いオニキスの板の裏側から照明で照らすことで、光の演出になっている。
シューズボックスやクロークルームの扉には、ホテルのベッドヘッドなどにも用いられ、吸音効果もある「どんす張り」を採用。麻の素材感が柔らかい印象を与える。

エントランスは大理石とオニキスに彩られ、人を迎えるのには十分なスペース。どんす張りの仕切りも優しい雰囲気だ。もともと交友関係の多いCさんは、この場所に親しい人々が集う日を心待ちにしているという。

「お天気が良ければルーフバルコニーでバーベキューをすることもできます。家族や友人を新居に招いて楽しい時間を共有できればどんなにいいだろうと思いますが、今は“一人時間”を充実させています。今年、六本木の国立新美術館で、趣味である書道の個展をするため、バルコニーで大きな作品に取り組むこともあります。そのように私が心地よい“お家時間”を過ごしていることが、娘たちにとっては最も喜ばしいことであり、安心できることのようです」

晴れた日のルーフバルコニー。ティータイムやランチタイムにはご友人とここでゆったり過ごす日もあるというCさん。
夜は港区周辺の夜景を独り占めすることができる。六本木方面には東京タワーも見える。

整えられ、手入れされた家は良い空気に満ち、そこに住む人に物理的な充足感だけではなく、精神的な安らぎも与えてくれる。またCさんのように年齢にとらわれず、自ら決断し、新たな暮らしをスタートさせた人はいつまでも若々しく瑞々しい。豊かな暮らしを約束してくれる住まいは、きっと出会ったときが「その時」なのだ。

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