建築とインテリアを一緒に発想する
「こんな住まいに暮らしたい」とイメージする時、建築だけでなく家具や照明、カーテンなどのインテリアにも思いを巡らせるもの。好きなインテリアと暮らすことは、住まいづくりの醍醐味の一つだ。心地よい住まいはロケーションや建築の魅力と、家具をはじめとしたインテリアが響き合って生まれる。
欧米では、建築家が空間だけでなく家具や照明までトータルでデザインすることが珍しくないが、日本ではインテリアは建築と分けて考えるケースが一般的だ。いざ空間を手に入れてから、「どんな家具を置こう」と悩んだ経験がある人も多いだろう。
インテリアを後回しにすると空間と調和させるのが難しくなるだけでなく、家具のサイズによってはうまくレイアウトできない、納期が間に合わない、照明を置きたい場所にコンセントがない……といった困りごとも起きてしまう。インテリアと建築を一緒にプランすれば、空間に対する家具の配置やボリューム感も検討した上で、美しく快適な空間が叶うのだ。
「家具とR100 TOKYO」とは
豊かな暮らしを生む空間は、建築とインテリアを一体で考えてこそ実現するもの。「R100 TOKYO」が設立時から大切にしてきた考え方にフォーカスし、より身近に、より分かりやすく展開していくプロジェクトが「家具とR100 TOKYO」だ。リノベーション設計の初期段階から家具などのインテリアをプロフェッショナルが計画し、トータルで完成度の高い空間を作り出す。家具や照明込みで購入するかは選択可能で、自分で選んだ家具とミックスしても楽しめる。
「R100 TOKYO」の企画を担当する斎藤 渉、木村 文両氏は、プロジェクト誕生の経緯を
「『R100TOKYO』が提供するのは、東京23区全体の新築マンション分譲戸数の中の約1%程度と希少な100㎡以上の物件です。広さのある空間だからこそインテリアの重要性は高く、選択肢もたくさんあります。実際にお客様から『家具の相談にも乗ってほしい』とご相談を受けることも増えていますね。また、ある物件で家具と一体でコーディネートされた空間を見たお客様は、『この世界観は、自分では作れない』と購入を決めてくださいました。
建築だけでは実現できない豊かさ、インテリアを身近に感じる暮らしを実現していただきたいと、『家具とR100TOKYO』を立ち上げました」
と語る。
「R100TOKYO」のコンセプトの一つは、「永く住み継ぐ価値のある、暮らしを豊かにする立地」。伝統ある緑豊かな邸宅地の低層物件のみを提供している。設計や内装も、それぞれの場所性にふさわしいデザインを大切にしているのが特徴だ。空間と一体で考える家具も同じように、その場所だからこそ説得力を持つアイテムをセレクトしている。
先に述べたように、日本では建築空間が決まってからインテリアを考えることが多いが、「家具とR100 TOKYO」では、計画の初期段階から建築・インテリアそれぞれのスペシャリストと対話を重ねながら、ひとつの空間をかたちにするというプロセス踏んでいる。これにより、建築とインテリアに自然な一体感が生まれ、より完成された空間となる。さらに、住まい手の独自性を家具などで表現することができるようになるため、入居後も家具を追加・変更することで空間の変化を楽しむことができる。
「家具とR100 TOKYO」のシリーズで家具を身近に感じ、住まい手の独自性を持った空間を家具でデザインする暮らしを楽しんでほしい。
一番町2パークマンションのコンセプトは
「as it is × タイムレス」
古くから高級住宅街として人気が高く、多くの文化人が暮らした千代田区番町エリア。そこに建つ「一番町2パークマンション」の一室は、リノベーション設計を須川ラボ建築設計事務所、LDKの家具セレクトを五割一分(ごわりいちぶ)が担当した。設計の初期段階から空間コンセプトや素材感、色味などを共有し、協業でデザインを進行。空間に合わせて家具を発想するだけでなくインテリアの視点から内装素材を提案するなど、互いに刺激を受けながらデザインを完成させた。
コンセプトは「as it is(ありのまま)×タイムレス」。一番町という伝統と品格を持つロケーションに似合う天然木や左官材といった上質な素材感、時代を超えて変わらない価値を持つ空間を目指した。隣接するイギリス大使館の豊かな緑を眺める約30畳のLDKは、さまざまなライフスタイルを受け止めるシンプルな空間。チーク材フローリングや左官仕上げの壁など豊かな素材と開放的なビューが響き合い、上質な空気を作り出している。
家具も素材感にこだわり、洋の東西を超えた普遍的な名作と現代のものをミックス。広さを活かしてL字型ソファをゆったりと置いたリビングと、外の緑を眺めるダイニングをゆるやかにつなぐようにレイアウトした。
丸テーブルに合わせたダイニングチェアは1955年にポール・ケアホルムが発表した「PK1」。スチールとフラッグハリヤードを合わせたミニマルなフォルムと快適な座り心地は、職人の高い技術を感じさせる。モダンにもクラシカルにも似合う普遍的なマスターピースだ。
LDKの中央に置いたベンチはピエール・ジャンヌレが1950年代にインドの「M.L.A ホステル」のためにデザインした「PHANTOM HANDS – PH33」。座ったり物を置いたりするだけでなく、空間をゆるやかに区切る役割も兼ねる。チークと籐の軽やかな素材は、経年とともに味わいある色に変化していくのが楽しみだ。
さらに日本が誇る木製家具メーカー・カリモクのシンプルなソファ、イサム・ノグチによるコーヒーテーブルなど、ストーリーのあるデザインと素材感を楽しめる家具が、流行にとらわれない心地よい空気を生み出している。
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設計/須川ラボ建築設計事務所
この物件にお住まいいただく方の暮らしを想像し、家具や照明の配置も五割一分さんと会話しながらプランニングしました。
既存の躯体から取り出した曲面のRC壁から導かれるように続く、大使館の緑に浮かぶLDK。家族の集う中心にキッチンを据え、パブリック/プライベートをあけながら、回遊性を持たせ、広がりを最大限に感じられるプランとしました。
チークの床材を中心に、経年変化を楽しむことのできる本物の素材を配することで、素材感を肌で感じながら安らぎと豊かな時間を過ごせる場を作りました。
家具/五割一分(ゴワリイチブ)
プランニング当初より須川ラボさんと打ち合わせを重ね、設計意図や空間を構成する素材感や色味を共有いただきました。
まず第1に、それらの素材で構成された空間と調和する素材感と色味、デザインを考慮して、それぞれのアイテムを選定いたしました。
そして第2には、立地です。イギリス大使館が望めるお部屋でしたので、雰囲気の中に少し「イギリス」な感じが演出できればと思いました。モノトーン寄りな色味をベースに、しかしクラシックに寄りすぎない、ほんの少しだけカジュアルな感じが出るように、カーフ柄のラグと藤座面のベンチを差し込んでいます。
午後の日当たりがとても良いお部屋でした。円卓のエリアとソファーのエリアを区切るでもなく緩やかに繋いだ家具の配置で、リビング、ダイニングのどこにいても心地よいアフタヌーンティーの時間が流れるようにイメージしながらコーディネートさせていただきました。
理想通りの物件に出会うことができても、インテリア選びに迷うこともある。プロフェッショナルにトータルで依頼することは、豊かな住まいへの一つのアプローチになるだろう。