“今にも溶けてしまいそうなバターの魅力”
第1回の今回紹介するのは、今井麗の『Toast』。この夏、彼女の展覧会が渋谷のパルコミュージアムで開催されたのにあわせて購入した作品です。
2020年はオペラシティにはじまり、渋谷のnidi gallery、京都のRC HOTEL、新宿タカシマヤ、ワコールスタディホール京都のギャラリーなど、彼女の展覧会ラッシュだったのですが、立て続けに彼女の作品に触れる機会があり、その魅力の虜になりました。この年に初めて、バナナがモチーフの彼女の作品を購入し、さらに秋にはもう一点作品をお願いしました。実はうちの小屋の庭の古いハンバーガーのオブジェが、彼女の作品のモチーフになっていたりもします。
今年購入したこのトーストの作品は僕の3点めの今井麗コレクションになります。トーストは彼女の作品の代表的なモチーフのひとつで、この今にも溶けてしまいそうなバターに食欲をそそられます。
作品の中に宿る“静寂”
歳もほぼ同じで薫陶を受けてきたカルチャーなども近いことから親近感があるのはもちろんですが、実は彼女には聴力がほとんどありません。普段の彼女は、手話は使わず読唇術と通常の会話でコミュニケーションをとりますが、彼女の目に見えている音のない世界が彼女の絵には表現されています。この独特の空気感に心をぎゅっと掴まれるのです。
アーティストとも作品とも、一緒に歳を取っていけたら嬉しいなと思わせるような力があり、毎日彼女の作品に触れられるだけで、なんだか嬉しい、やさしい気持ちになります。この感覚はプライスレスとしかいいようがありません。
ちょうど先月号の『Casa BRUTUS』や『HERS』の表紙に彼女の作品が使われていたので、作品を目にしたことがあるという人もいるかもしれません。同時期に2冊の雑誌で同じアーティストの作品が使われているというのは、今まであまり聞いたことがない話で、人気っぷりに驚きました。
また、年末に第二弾が発売予定ですが、鹿児島は霧島の中村酒造場の『Amazing series』という焼酎のエチケットを彼女が描き下ろしており、去る10月にその仕込みの見学にも一緒に鹿児島の酒蔵まで行ってきたのでした。この春に発売になったこのシリーズの第一弾『Still Life 2020』は即完売になっており、第二弾の発売が楽しみです。
ちなみに彼女の夫の西村有さんも同世代のアーティストで、世界各地で展示されていますが彼の作品も実に魅力的です。遠くないうちに彼の作品も手元に置けたらと思っています。家族で子供を連れて軽井沢にも遊びにきてくれたのですが、夫婦でそれぞれ才能に満ち溢れていて、羨ましくなります。
Information
New!
スヌーピーミュージアムの新しいインスタレーション展示「ベリー・ハッピー・ホーム」に、今井麗さんの作品が展示されています。ドッグハウスの中に飾られている、スヌーピーが大切にしている絵、それが今井麗さんによる油絵です。ぜひ足をお運びください。
スヌーピーミュージアム
https://snoopymuseum.tokyo/
東京都町田市鶴間3-1-1
10:00-18:00、年中無休
profile
1981年生まれ、神戸出身。広告代理店・電通、雑誌『GQ』編集者を経て、Sumallyを設立。スマホ収納サービス『サマリーポケット』も好評。音楽、食、舞台、アートなどへの興味が強く、週末には何かしらのインプットを求めて各地を飛び回る日々。「ビジネスにおいて最も重要なものは解像度であり、高解像度なインプットこそ、高解像度なアウトプットを生む」ということを信じて人生を過ごす。
サマリーポケット
▶︎https://pocket.sumally.com/