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crafted home – 美しい空間のあり方(後編)<br><small>芦沢啓治さん(芦沢啓治建築設計事務所主宰)<br>川上シュンさん(artless Inc.代表)<br>加藤駿介さん(NOTA&design代表)</small>
本質に触れる |Touch the Essence

crafted home – 美しい空間のあり方(後編)
芦沢啓治さん(芦沢啓治建築設計事務所主宰)
川上シュンさん(artless Inc.代表)
加藤駿介さん(NOTA&design代表)

素材と空間からひもとくこれからの美とは(後編)

約1年の制作期間を経て出来上がったコンセプトブック『crafted home』を手元に、建築家の芦沢啓治さん、クリエイティブディレクターの川上シュンさん、NOTA_SHOPオーナーの加藤駿介さん(NOTA&design)が語り合う座談会の後編。話題は「前編」で語られた「人とモノとのコミュニケーション」「情報がないことがラグジュアリー」「この10年の価値観の変化」「ノイズが多すぎる日本」などから、クラフトを取り巻く環境、日本人の美意識、これからの豊かさの定義などに展開していく。住まい手が、クラフトに触れることで得られる精神的な喜びの実現を目指して、R100 tokyoの進むべきこれからの道とは……。(前編はこちら

Text by Hiroe Nakajima
Photographs by Satoshi Nagare
左より、芦沢啓治さん、加藤駿介さん、川上シュンさん。

道を切り開く人と仕事をしたい

2020年に拡大したコロナ禍では、消費の落ち込みが指摘された一方、不動産業界にとっては予想外の追い風もあった。戸外に出られなくなり、自分の身辺や暮らし周りのことに目を向けるようになった消費者たちが、住宅や家具を購入したり、空間をリノベーションすることに意識を高め始めたのだ。そうした意欲に押され、加藤さんがオーナーを務めるNOTA_SHOPへも遠方から足を運ぶ人が飛躍的に増えたという。

NOTA&design代表の加藤さんが手掛けるNOTA_SHOPの店内。滋賀県の信楽町にある。

川上:「NOTA_SHOP」の「ノタ」は作陶の際などに用いる、粘土をつなげる接着剤のことだそうですが、「NOT A SHOP(お店ではない)」という意味もあるんですか?

加藤:実は後から気が付いたんですよ、そのダブルミーニングに。ハッシュタグってアンダーバーを入れられないですよね。だから連続で書いたら、「NOT A SHOP(ノット・ア・ショップ)」になるなと。後からです。たまに「野田(のた)さんですか?」とか聞かれることもあります。でも最初から「単なるお店じゃない」というスタンスではやっていたので、結果的に当てはまっていました。

川上:加藤さんがもの選びで大事にしているのはどんなことですか?

加藤:作家ものでいうと、すでに売れている作家さんは扱わないです。ほかがやっているからいいと思うし、それじゃなきゃ自分がやる意味がないです。力があるものは100年後も残るので、そういうものを紹介したいです。ありものの真似じゃなくて、ちゃんと戦っている人の作品。あとは古いものでパワーがあるものも紹介していますね。

芦沢:僕らはNOTA_SHOPみたいに、そこにしかないものに触れたい。これからは、いわゆる“ジェネリックショップ”はコンビニのような店に集約されて、あとはオーナーのカラーが出ているユニークな店ばかりになればいいんじゃないかなと最近思いますよ。

信楽焼や作家の作品などが並ぶNOTA_SHOPの店内。

加藤:工芸やアートもそうですけど、本来ギャラリストって自分の審美眼やセンスで勝負するわけじゃないですか。ですが不思議なことに最近は金太郎飴状態で、「すでに認められているからこの作家を入れてみよう」っていう傾向が結構強いみたいです。「自分もこんな店をやりたい」っていうのを内装も含めてトレース状態でやる。僕としては全く意味がわからないです。都市部だったらビジネスとしてそうするしかないのかもしれないけど、田舎だったらそうでなくても戦えるのに。自分の領域だけでゆっくりやっても、だれにも迷惑をかけるわけじゃないから、かえって恵まれているといえますよ。

NOTA&design代表、デザイナーの加藤駿介さん。

芦沢:金太郎飴状態だと作家も消費されていきますね。

加藤:そういうなかでも力のある人はいいんですけどね。僕らも作家も、お金が目的なら違う仕事もあるのになって思います。まだ6、7年ですけど、徐々に作家と一緒に成長している気はするので、そういう状況は一番良いですよね。今はまだ有名じゃなくても、力があれば認知されていくので。

芦沢:それが一番豊かというか、楽しいですよね。売れているものを買って手に入れたという物欲の消費ではなくて、まだ価値は高くないかもしれないけど、自分が販売したり、手に入れたことによって認知が拡がるとか。そういうものを見つけたいですね。

加藤:僕はいろんな人と仕事をしますが、共感できる人たちは、森を切り開いて道をつくっていく人ですね。後から舗装する人には興味ないんです。世の中って舗装する人ばっかりじゃないですか。もちろんそれも必要なんですけど、開く人がいないと道はできないから。だから最初に道なき道をつくる人に、リスペクトや共感を覚えます。

川上:よくわかります。僕らも人が歩いたところは歩きたくないです。スノーボードでいうバックカントリーみたいに未開の地を行きたい。

川上シュンさん(左)、芦沢啓治さん(右)。

芦沢:時々事故っちゃったりしながらね(笑)。NOTA_SHOPの外壁なんかもカッコいいんだよね。すごく細かい木のピッチにしたために膨大な時間がかかったという話も面白いし。信楽焼ってかなり大きなものがつくれるんでしょう? あれは土の性質なんですか?

加藤:そうですね、土の可塑性が高くて、昔は甕(かめ)や大壷とかそれこそタヌキの置物で有名になりましたよね。今一番大きいのでいうと浴槽とかですかね。

芦沢:ベンチもあったでしょう。焼き物のベンチでいいものって見たことある?

川上:あまりないかな(笑)。

NOTA_SHOP外観。焼き物の工房を改装して7年前にオープンした。

芦沢:なかなか面白いものがあるし、既存のタイルを焼き直したものとか、照明器具とかいろいろつくっていらっしゃる。見ていると、この世界は僕のランゲージではないなと。ぜひ何か一緒に仕事したいと思っているんですよ。R100 tokyoが紡ぎ出した3つのキーワード「#history #craft #timeless」がNOTA_SHOPにはある。これって本来の日本の家では当たり前のことだったんだけど、今のマンションは一つもない気がするから。

川上:見事に全部ないね。

芦沢:どれか一つでも復活させたいですよね。たとえばヒストリーの部分だと、おばあちゃんからもらった家具があるとか。もっとも日本の古い家具は国内にはあまりなくて海外に流出してしまったりしてるから、なかなか持っている人は少ないか……。本来の古民家や数寄屋造りみたいなものも、あまりに高価すぎて今じゃつくれないですしね。それでも僕らのDNAとしてクラフトというものはあるから、その感覚を共有できる加藤さんのような人と組めば、まだまだ表現はできると思っているんです。

川上:そうですね。今それを改めてやろうとするのは価値のあることだと感じます。

R100 tokyoが手掛ける「crafted home」の一室より。

一過性のブームではなく

加藤:今回、一緒にコペンハーゲンに行った友人の話なんですが、彼が営む照明メーカーでは吹きガラスの照明をつくっているんです。手吹きなので気泡が少し入るんですよ。そうするとお客さんから「気泡が入っているから替えてくれ」と言われるケースがあるんですって。いやいやそういう商品だし、それが良さなんですけど……。揺らぎや雑味が持ち味なのに、逆にそれが不良品だとか、完璧なものを持ってこいと言われると、手仕事の世界は立ち行かないです。クレームに従っていたらこちらもどんどんズレていってしまう。

芦沢:そういうものを使っちゃいけないという話になるとクラフトは成立しない。クラフトって一個一個違うわけですよ。たとえばペンキ屋の腕によっても違うし、ムラが嫌なら全部壁紙にするしかない。クラフトはそういうクレームに対して異を唱えるというか、教育していく、教育し直すこともセットで考える必要があるのかもしれません。

川上:クラフト運動的な話にも通じるね。

芦沢:R100 tokyoの物件でもたとえば無垢材のフローリングなどを使うことは多いですが、自然素材のものは常に変化します。お客様には経年で反りや縮みが出る可能性があることを念入りに伝えていると聞いています。そうしたクラフトを介する供給側と需要側のコミュニケーションも欠くことができないですよね。双方がその心得を持っていることが大切なんじゃないでしょうか。

川上:R100 tokyoはだいぶレアケースだと思います。ほかのレジデンス案件を見ると、みんな最初からか途中からか諦めちゃっていますよ。大量につくらなきゃいけないからクラフトは無理だよねって。でもクラフトの良さは必ずあるから、きちんと付加価値をつけて価格に乗せないといけないし、社会的な価値としても認知させなくてはいけない。全体的な諦めをどうやったら止められるのかなって僕は課題に思っています。

住宅の資産価値の考え方には、日本と海外で大きな違いがあり、住宅のつくり方や流通における制度にもそれは表れている。たとえばアメリカやイギリスでは、住宅を売却する際に、売り手が自分でインスペクションをして建物の状態の証明を行う。この制度も「価値」を維持し引き継いでいくことの一つの方法である。新築よりも中古に信頼度がおかれるのは、こうした価値の循環と視える化が積み重ねられてきた歴史と文化があるからだ。日本でもクラフテッドなものをきちんとつくり、その資産価値が継承できる仕組み、価値観が根付いた状態をつくり出すことを、R100 tokyoは目指している。

加藤:消費者の意識を鍛えることはセットですね。芦沢さんもおっしゃるように、怖いのは一過性のトレンドになること。クラフテッド・ホームを表面のマテリアルトーンだけとって、安い素材でつくってしまうところも出てくると思いますよ。焼き物も同様で、色と形だけ真似してつくれてしまう。でも本当のところ、実際に手にしていない人がつくったものは、器の底(高台)の部分が違うんです。ネットやインスタだとなかなか裏側からの写真を見ることはないじゃないですか。だから実は全く別物。やはり本物を見ていかないといけないですよね。リテラシーの高い人はどちらがフェイクかすぐわかるんですが、マジョリティーにもわかってもらえるよう育てていかないと、いたちごっこだなって思っています。

芦沢:トレンドって表面だけをさらっていきますからね。最近「Japandi(ジャパンディ)」ってあるでしょ。日本(和/Japan)と北欧スタイル(Scandinavian)を掛け合わせたインテリアスタイル。それをスクラップしてインスタグラムなんかに、R100 tokyoでつくった部屋がたくさん出ている。もっと調べると、Japandiのカラーパレットなるものも出てくる。これが独り歩きしているんですね。僕はいろんな地域に、いろんな時代の建築を見に行くことが大事だと思うんだけど、それを見て感動したり体験することが大事なのであって、写真を撮ってインスタに上げるのが大事なんじゃないんです。

川上:良いアングルを見つけて写真を撮って帰ってくるだけなら、実際にその場所に行く意味はないですよね。本来はディテールに気が付くことが大事。

芦沢:良い建築は数多くの素晴らしいディテールが集まって、空間全体に広がっているんですよね。と同時にヨーロッパに行くと強く感じるのは、建築の公共性です。たとえば、類似のドアハンドルやレバーが街の随所にある。デンマークだと、アルネ・ヤコブセンなどがデザインした昔のプロダクトが至るところにあるし、同じ系統の真鍮のものがいろいろなところにあるわけです。

川上:歴史を踏襲しているんですよね。

芦沢:車でも日本は、車種のシリーズごとにいろんな名前をつけるけど、ヨーロッパ車ってナンバーで示すじゃないですか。あれは住所と一緒でしょ。街や車に住所があっても気にならないけど、そこに急に意味があるもの、たとえば「LOVE」なんて書いてあったら気になりますよね。それは僕らにとってはノイズだから、そういうものがないのはいいですよね。

川上:ヨーロッパとアジアではパブリックへの意識がやはり違いますね。

芦沢:この情報のノイジーな感じが、実は住宅の中にもずいぶんあります。僕は電源やスイッチは数を減らすほどラグジュアリーだと思うんです。たとえば日本の住宅ってどこでもテレビを見られるようにするとか、携帯を充電できるようにするじゃないですか。その選択肢必要?って思うことは多い。どこかに一カ所テレビを繋ぐ場所を用意したら、他では見ないでほしいです(笑)。いろんな選択肢があることが供給する側のサービスだと思い込んでいる。

経年変化の美を知る日本人

川上:あえてまた問うけれど、どれくらい揺り戻しがあるのかな。プラスチックはSDGs的な点からもトレンドアウトしましたけど、最近、バイオプラスチックなども出てきている。バイオなら少しテックがある感じがするから、またツルッとしたものが流行になるのかなと。ザラつきからツル・ピカへ戻るのだろうかと、ウォッチャーとして動向を気にしているんです。

加藤:ザラつきはザラつきのまま行く気がしますね。もっと掘っていく感じになると思う。

芦沢:バイオプラスチックやリサイクルされた素材は、最近ものすごい勢いで出ているけど、それって逆に何年持つの?って根本的な疑問が生じますね。老舗のメーカーでもそういう材料を使って天板などをつくっているけど、多分木製の天板のほうが長持ちしますよ。エコロジーの観点から言うと、最も大事なのはつくったものが長くもつということですよね。一時リサイクルってよく言ったけど、元の素材から別の何かをつくるということは、エコからは遠いんです。それよりも長く使える素材であること。クラフトは多分そういうものだから、その意味でも見直されていくと思いますよ。

川上:長く使って、しかも直しながら使える感じがしますね。木は汚れたら削ればいいし。

加藤:経年変化が楽しめるものですよね。経年変化が楽しめない素材はやっぱり人とモノとの間に距離感が出ちゃいますね。

川上:結局消費しちゃうみたいなことはありますね。

芦沢:最初から良い家は時間が経つほど心地いいし、実際長く使えるし、使い手のちょっとしたイノベーションが入ったとしても、より良い家になるので。そういう素地がある家をつくることができればいいかなと思っています。

加藤:器や家具も全く同じで、経年変化することで魅力を増すものが本物です。たとえば朝鮮半島から来た粉引きの器は、白さを出すために色のついた土の上に白化粧土が塗られています。その製作の過程上、層になっているので汚れてくるものが多い。逆にそれを価値として捉えるのは、日本人特有の美意識とも言えます。揺らぎやちょっとしたノイズ、混じりけを良しとする文化がもともと日本人にはあったはずだし、今でも経年変化を楽しむ情緒はあるはずなんです。面白い話があって、日本にはジュエリーの歴史って全然ないらしいんです。飛鳥時代の後一度消えて、明治くらいまでないんですって。奈良・平安時代になると着物や十二単の世界になるから、装飾品はいらなくなる。

芦沢:ジュエリーは変化しないから面白くなかったということなのかな。

加藤:もしかするとそういうことかもしれません。日本以外では途絶えずジュエリーの文化があって、経済的価値を持ったわけですが、日本の場合は室町時代などになると茶器がものすごい価値を持ち、コミュニケーションツールになったというのは、他国からするとあまり考えられないことだったかもしれませんよね。汚れたり割れたりするはかないもので取引するなんて。

川上:でもそれは日本独特のいい価値観だよね。四季の変化とも関係しているのかもしれないし。日本および東洋のほうが自然とともに共生し、自然を尊ぶアニミズム的な概念がある。一方西洋はどちらかというと自然を統制する文化。ガーデニングだとわかりやすいけど、四角く木を切ってしまう西洋的なガーデンと、自然美をそのまま見せる東洋的な庭というのは、価値観が大きく違う。マインドフルネスって日本には昔からあったでしょうっていう話だし。そういうのを大切にしながらやっていくと、結局日本の良さが世界に広まっていくのかなと思います。それを大事に今後もモノづくりをしたらいいんですよ。

加藤:ある時期まではよかったんでしょうね。バブルの少し前くらいから、何をつくっても売れる時代を経験しておかしくなってしまった。それ以前をもう一度取り戻すというのは大変ですね。

芦沢:その間に良いものをつくれる人がいなくなっちゃうからね。

加藤:それはありますね。

芦沢:建設会社が開いている大工館に行くと、昔の大工さんが持っていた道具が200点ほど並んでいる。とんでもない数の道具で家をつくっていたんですよね。今の大工さんが腰につけている道具はせいぜい10分の1くらい。クラフトは道具がなくなると取り戻せないんじゃないかと思っています。

加藤:今は過渡期ですね。原材料も道具も。職人がいても原材料や道具をつくる人がいないとモノづくりは途絶えてしまう。今のうちに行動しないと、多分20年後にはもう……。

芦沢:和紙やタイルもそうです。とにかく廃番も増えているし。

加藤:昔は大判タイルをつくるところが日本中にあったけど、もうかなり限られてきましたよね。そういうことがいっぱい出てくる。

芦沢:本当におっしゃる通り。

川上:日本は伝統や技術が大切に保存されている気がしますけど、このままだと消えていきますよね。本質的な美しさやその土地の滋味のようなもの。僕らから見ると貴重な価値を感じ、よほどラグジュアリーだなと地方での伝統的技術や美しさに出会うと感じます。

加藤:そうはいっても、地方は圧倒的にデザインが足りていないなと思います。店舗なんかも20年前の内装?みたいな感じですし。新しくオープンしたのに数年前に流行したスタイルだったり……。

芦沢:そこは育てないといけないところですよね。アイデアや理想があっても、それを実現するノウハウがないということもあるし。デザインはすごく重要なんですよね。

川上:デザインは大事ですね。全国でこれだけ多くのデザイナーが生まれているはずなのに足りていないっていうのは不思議だよね。

芦沢:それぞれの感性や感度を上げたいですよね。リビタさんとの仕事でも、最初は結構苦労したんですよ。一つは担当者によっても変わってくるから。R100 tokyoが出来てからはブランドとして思想が統一されてレベルが整ってきたけど。今後「クラフテッド・ホーム」というものに対して、担い手がどこまで一定の水準以上のクオリティと責任を負うことができるかも課題ですね。

アイデンティティ×クリエイティビティ

川上:クリエイター側から言うと、やはりアイデンティティとクリエイティビティの掛け算がないと良いものって絶対生まれないですよね。どちらも欠けちゃダメなんですよ。アイデンティティには哲学や価値観が必須。それがないとデザインが表層的になるし、ただカッコいいだけのものになってしまう。クリエイティビティにはスキルやテクニック、発想などが必要。それらがないと表現や実現ができない。最終的にこの両方がないとうまくいかないんじゃないかというのが最近考えていることです。

加藤:「自己実現しろ」とだけ言われても今の若い子は戸惑いますよ。理想と現実のギャップでやられてしまう。たしかに両輪必要です。

川上:どちらも鍛えることが必要で、その掛け算が生まれると良い発想や良いもの、良い場所が生まれるんだろうなと思います。その点でいっても、R100 tokyoは非常に良いブランドだと思いますよ。僕が関わる以前から、通常ではできないような取り組みを丁寧に積み重ねていて、すごく頑張っているので。事業としても先見性があるし、関わっている人たちがプライドを持っている。働いている人たちのQOLが高いことは重要で、自分の仕事に価値を感じていれば、その結果、業績も伸びていくと僕は思っています。

芦沢:惑わされずにいくことでしょうね。自分の行く道はこの方向だと。もちろん少子高齢化で住宅も購買数が減っているし、家を買わない時代になっているとも言えるけど、伝わる人には伝わるはずなので、コミュニケーションを取り続けることですね。

加藤:20代~30代の若い世代に、自分にとって心地よい住み方や暮らし方をもっと探求してほしいと思いますね。僕らのお客さんでも、以前はそういうことに関心がなかったけど、うちへ来てから興味を持つようになったとか、モノづくりをするようになったという人もいるので、そういう役割はまだ絶対にあると思っています。もう少し頑張れそうだなと。

川上:そうした若い世代にとって、それでも買いたい家があるかどうかですね。だから住宅を販売した段階でコミュニケーションが終わるのではなく、「その場所でどのような経験をしたいか」「どうしたら快適に過ごせるか」などを共に考え、関係を続けていくことが、R100 tokyoの目指す「ライフスタイルビスポーク」であり、それぞれの住まい手の「QOL(Quiddity of Life)=本質的な価値観が表現される暮らし」を実現していく道だと思いますね。

芦沢:そこが重要だよね。やはり住まいはベースだから。今回この本ができたことで、R100 tokyoというブランドのストーリーをより明確に伝えられるようになったと思うんです。ストーリーだから人の心に響くということもあるし。

川上:ぜひマーケティングチームの方々にも頑張ってほしいです。本当に自信の持てるものを提供しているという矜持を携えて。

「renovation(リノベーション)」「circular market(サーキュラーマーケット)」、「community(コミュニティ)」という3つの要素が交わる地点において、住まいづくりを提案するR100 tokyo。リノベーションはサーキュラーマーケットの一端を担い、リノベーションによる価値循環と、より環境へ配慮した素材選定も意識してつくるクラフテッド・ホームは、循環型社会の理念に適うものである。そしてその恩恵は、住む人だけに留まらず、やがて地域、社会、世界と、より大きなコミュニティへ波及してゆくはずだ。

共に「本質的な美」を追求する仲間と、時間と労力を注ぎ、愚直にモノづくりを続けるR100 tokyoは、未来への創造に向けて、今、新しい局面を迎えている。

profile

芦沢啓治

横浜国立大学建築学科卒。1996年に設計事務所にてキャリアをスタート。2002年に特注スチール家具工房「super robot」に正式参画し、オリジナル家具や照明器具を手掛ける。2005年より「芦沢啓治建築設計事務所」主宰。「正直なデザイン/Honest Design」をモットーに、クラフトを重視しながら建築、インテリア、家具などトータルにデザイン。国内外の多様なプロジェクトや家具メーカーの仕事を手掛けるほか、東日本大震災から生まれた「石巻工房」の代表も務める。

▶︎http://www.keijidesign.com/
▶︎http://ishinomaki-lab.org/

profile

川上シュン

1977年東京都生まれ。独学でデザインとアートを学び、2001年artlessを設立。グローバルとローカルの融合的視点を軸にヴィジョンやアイデンティティ構築からデザイン、そして、建築やランドスケープまで包括的なブランディングとアートディレクションを行っている。NY ADC、ONE SHOW、D&AD、RED DOT、IF Design Award、DFA: Design for Asia Awards など、多数の国際アワードを受賞。また、グラフィックアーティストとしても作品を発表するなど、その活動は多岐にわたる。

▶︎http://www.artless.co.jp/

profile

加藤駿介

1984年滋賀県信楽町生まれ。大学在学中にロンドンにデザインを学ぶために留学。東京の広告制作会社に勤務後、地元である信楽に戻り陶器のデザイン、制作に従事。2017年に「NOTA&design」「NOTA_SHOP」を設立。「NOTA&design」は自社スタジオにて陶器のデザインと制作を中心にグラフィック、プロダクト、美術展示設計、インテリア設計、スタイリング、ブランディングなどを行う。「NOTA_SHOP」ではギャラリー&ショップとして、工芸、アート、デザインを分け隔てずに各種作家やものを紹介している。

▶︎https://nota-and.com

Infomation

R100 tokyo の2冊のコンセプトブックはこちらからダウンロードでご覧いただけます。

vision
▶︎https://r100tokyo.com/brand/asset/pdf/r100_vb-digital_230330.pdf
crafted home
▶︎https://r100tokyo.com/brand/asset/pdf/r100_craft-digital-book-design_230602.pdf

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