芦沢:このオパス有栖川の住まいをデザインしながら、カリモク家具とともにチャレンジしたことがたくさんあります。空間をつくる上でベストだと思ったものは、まずは試してみようと相談していきました。わがままもたくさん聞いてもらったけれど、相思相愛のつもりでいます。
加藤:相思相愛なのは事実です(笑)。私たち家具メーカーは、家具のことばかり考えて、暮らしに役立つものをつくるという本来の目的を離れてしまうことがあります。だからもっと社会を俯瞰して、この都市、この建物、この部屋に住む人に、こんな時間を過ごしてほしいという視点をもっていたい。芦沢さんのような建築家の視点はとても重要なんです。
芦沢:今回、新しく一緒に取り組んだものに内窓の窓枠がありました。おかげで窓と室内のトーンをきれいに合わせることができています。家具、窓枠、キッチンなどは通常は別々のメーカーがつくりますが、インテリアにおいては等価に扱うべき。それぞれがどんなに高価でも、インテリアと釣り合っていないとノイズになってしまいます。プロポーションが正しく、リズムがあり、トーンやテクスチャーが揃うことで、そこに暮らす人も魅力的に見えます。住宅は、特にそういうものです。
加藤:窓枠の大切さは、芦沢さんと出会った数年前から話に出ていました。実はカリモク家具の工場に、窓枠を製造するヨーロッパ製の工作機械をアレンジして家具に使っているものがあり、この機械で窓枠をつくることができました。ヨーロッパでは窓枠のシェアの約30%は木製で、さらに増加しているそうです。また窓枠は光を取り入れるために欠かせないもので、ともにカリモクケーススタディを手がける芦沢さんとデンマークのノーム・アーキテクツは、光についてとても繊細です。そんな共通性はありますが、芦沢さんのキーワードは「正直なデザイン」。どこか凛とした日本的な佇まいを感じています。一方、ノーム・アーキテクツは自分たちを「ソフト・ミニマリズム」と形容しているけれど、北欧的な温もりがあります。
芦沢:僕と彼らは建築家同士でアイデアを共有しているんです。オパス有栖川でも、ノーム・アーキテクツがデザインした家具をもとに、この空間に合わせてディテールを変えて使ったものがあります。そして彼らも自分たちの物件で同じようなことをしている。こうした強い信頼関係がある一方、もともとのバックグラウンドは違うし、僕は日本的なものにしっかり向き合わなければならないとも感じています。
加藤:窓枠の大切さは、芦沢さんと出会った数年前から話に出ていました。実はカリモク家具の工場に、窓枠を製造するヨーロッパ製の工作機械をアレンジして家具に使っているものがあり、この機械で窓枠をつくることができました。ヨーロッパでは窓枠のシェアの約30%は木製で、さらに増加しているそうです。また窓枠は光を取り入れるために欠かせないもので、ともにカリモクケーススタディを手がける芦沢さんとデンマークのノーム・アーキテクツは、光についてとても繊細です。そんな共通性はありますが、芦沢さんのキーワードは「正直なデザイン」。どこか凛とした日本的な佇まいを感じています。一方、ノーム・アーキテクツは自分たちを「ソフト・ミニマリズム」と形容しているけれど、北欧的な温もりがあります。
芦沢:僕と彼らは建築家同士でアイデアを共有しているんです。オパス有栖川でも、ノーム・アーキテクツがデザインした家具をもとに、この空間に合わせてディテールを変えて使ったものがあります。そして彼らも自分たちの物件で同じようなことをしている。こうした強い信頼関係がある一方、もともとのバックグラウンドは違うし、僕は日本的なものにしっかり向き合わなければならないとも感じています。
加藤:今回の芦沢さんの仕事は、日本で育まれてきたクラフトの感覚が生かされていますよね。ある特定の空間のためだけに、手を抜くことなく徹底的に丁寧にものをつくることの意義は、我々がメーカーとして見落としがちなもの。マーケティングや効率のよさとは必ずしも一致しないからです。でも社内で多少の摩擦が生じても、つくる側の思いは突き詰めると同じだから、結局は丸く収まっていきます。芦沢さんと一緒にピュアな気持ちでつくり込んでいくうちに、ものづくりの本質というか、真理が見える気がしました。
芦沢:空間とは、ここまで丁寧につくることができるんですよね。そんなプロセスを経て生まれるものこそ、僕は本当の意味でのラグジュアリーであり、プレミアムになっていくと考えています。高級なものをスタイリングして空間をつくる手段もあるけれど、そうでないラグジュアリーもありうる。今回は、それが実現できたことを実感しています。