インタビュー

調和と再発見

心の琴線に触れる美しい手仕事がやどる家
[インテリアスタイリング:バンドルスタジオ]

“日本の住宅文化を牽引する先見性”の具現化をコンセプトとするオパス有栖川プロジェクト。その先見性を表現する手法の一つとして、今回の専有部では“美しい手仕事がやどる家”を提唱します。このコンセプトルームのインテリアスタイリングを担当したバンドルスタジオのお二人に、お話をうかがいました。

コンセプトルーム「調和と再発見」(2020年12月撮影)

環境・建物・部屋が一体となり、
住み手の潜在的な美意識を呼び覚ます。

「賑わう交差点から一歩「オパス有栖川」へと足を踏み入れると、静謐な石畳の「道行き」を樹木が彩り、どこからか水の落ちる音が聴こえてきます。エントランスを抜けてからも廊下の随所で中庭の緑が感じられ、それらを眺めているうちに気持ちが外から内へと切り替わるのです。そして部屋に入ると有栖川宮記念公園近くの閑静な邸宅街が窓外に広がります。初めてここを訪れた際、「ずっといられる感覚」を持ちました。それは築100年を超えた日本家屋に身を置いたときと同じ感覚に思えました。」

建物エントランスへのアプローチ(2019年7月撮影)

「決して華美ではなく、素朴だからこそ美しく、飽きることなく永遠に見ていられるもの。オパス有栖川からはそんな揺るぎない価値を感じました。そして、それは私たちがこれまでに強く魅せられてきた「ハンドクラフテッドモダン」と呼ばれる世界の手仕事が持つ価値と共通するものがありました。ですからここで、現代のライフスタイルに美しい手仕事を調和させた空間を実現しようと考えたのです。」

コンセプトルーム「調和と再発見」(2020年12月撮影)

「ベースとなる空間は使いやすくプレーンで、左官仕上げの壁など手仕事の魅力に意識を持って設計されています。この壁を背景に、今回は身近な日本の手仕事を合わせることで、その素晴らしさを再発見してもらえたらと考えました。」

左官仕上げの壁

「ダイニングセットは、佐賀県諸岡町にて世界中から集まったデザイナーと地元の職人が共同生活をしながら生み出したものです。造成で伐採せざるを得なかった木や倒木を生まれ変わらせた彫刻家・西村浩幸氏によるシェルフや、原料の栽培から手掛ける手漉き和紙職人・ハタノワタル氏によるアートも選びました。」

ダイニングセット

「さらに「伊達ゲラ」と呼ばれる青森県の蓑は、立体物として空間に個性を与えます。蓑は日本の生活道具である民芸品ですが、日本人独自の「見立てる」発想でアートのように飾りました。一方で現代の暮らしを紡いでいくため、イタリアの家具ブランドやデンマークのファブリックブランドも取り入れてバランスを図っています。全体として、主に木や革といった素材そのもののナチュラルな色を用い、差し色の黒で引き締めてまとまりを出しました。」

青森県の蓑「伊達ゲラ」

「新しいものと古いものの時間軸を織り交ぜることで生まれる、時代を超越した空間。これが私たちが表現したい「調和」です。そしてもう一つは「再発見」。旅をして異国の文化に触れることがコロナ渦で少なくなった今、感性を刺激される機会も減ったように思えます。しかし、今まで気づいていなかった些細な「変化」や「煌めき」は日常にこそあるはずなのです。実は身近にある素晴らしい手仕事や意志を持って丁寧に作られたものを目にすることで、その価値や自分が潜在的に持っている美意識、感受性などを再発見するきっかけになればと思います。この部屋で、旅をするのと同じような有意義な暮らしを実現していただけたらと願っています。」

コンセプトルーム「調和と再発見」(2020年12月撮影)