建築家インタビュー

日本の美意識に基づいて奏でる、色彩と質感のハーモニー。
[ 室内設計:横堀建築設計事務所 ]

“日本の住宅文化を牽引する先見性”の具現化をコンセプトとするオパス有栖川プロジェクト。その先見性を表現する手法の一つとして、今回の専有部では“アートのある暮らし”を提唱します。このコンセプトルームの設計を担当したのは横堀建築設計事務所。「アートを飾ること」は特別なことではなく住まう人のパーソナリティを表現することである…という想いをこめ、インテリアとアートが響き合う空間です。

コマタトモコ氏 横堀健一氏

十数年前、ここオパス有栖川をつくりあげた設計者や各種職人たちの思想と情熱。その中に息づく日本の美意識は、住まう方の心の在り様を整え、現在も穏やかで豊かな暮らしをもたらしています。今回、「春秋」「冬夏」という2つの専有部分のリノベーションを手掛けた建築家の横堀健一さんとインテリアデザイナーのコマタトモコさん夫妻に、多くのアートとともに暮らす事務所兼自宅にて、住まいのデザインについてお話を伺いました。

日本の美意識に基づいて奏でる、色彩と質感のハーモニー

「都心にいることを忘れさせるような、豊かな自然に恵まれた立地。そして、石や水、緑といった自然界を構成する要素が大胆かつ繊細に織り込まれた建築。「オパス有栖川」を訪れると、建物そのものは人工物であるはずなのに、強い自然の力を感じさせられます。外と内が一体となる設計に、自然とともに暮らし季節の移ろいを楽しむ日本人ならではの感性が表れているのです。私たちはそんな建物のメッセージを引き継ぎ、室内においても「自然」や「日本の美意識」を表現したいと考えました。今回、二つの部屋の室内設計を担当しましたが、日本の四季からインスピレーションを得て、それぞれ「春秋」と「冬夏」をテーマにインテリアの素材や色を選んでいます。」(※「春秋」は販売終了しております。)

建物エントランスへのアプローチ(2019年7月撮影)

「「冬夏」をテーマとした部屋は子育てを終えた夫婦二人の暮らしを想定し、寒色を用いて落ち着いたシックなイメージで構成しました。フローリングは同じ浮造りでもダークなナラ材を用い、壁紙にはイタリアのファッションブランド、アルマーニによるシャイニーな質感のグリーングレーを選んでいます。「春秋」と比べるとモダンですが、和洋の融合という意味では共通します。ソファやダイニングテーブルもアルマーニのものですが、同ブランドは日本文化に強く影響を受けているため、その佇まいからはやはりどこか和の要素が感じられます。この部屋でも多くのオリジナル家具をデザインして「冬夏」らしさを表現しています。」

職人技術が生きた素材で空間に深みを

「プランニングは、できる限り行き止まりがないようにしています。自然界のなかに行き止まりはなく、人間は本能的に行き止まりがないことで開放感が得られます。一方でパブリックとプライベートの関係性は二つの部屋で対照的になっています。夫婦二人で暮らすイメージを膨らませた「冬夏」ではホテルのスイートルームをイメージしてLDKと主寝室を隣接させ、その間を行き来する途中に書斎を設けました。必要な機能をある程度凝縮したコンパクトな動線が、快適な暮らしをもたらすと考えています。」

「ここに住まう方にはぜひ暮らしのなかでアートを楽しんでいただきたいと考え、LDKのメインウォールや、エントランスや廊下などの視線がぶつかる場所にアートを飾ることを想定しました。今回、空間を構成する素材一つひとつも職人技術が生きた個性的で素晴らしいものですが、そこにアートが入ったときに主張しすぎず調和するものを選んでいます。住まいにおいては、インテリアとアートのどちらかが際立つのではなく、相乗効果で空間の質を高めることができればと思うのです。なにより、住まいの主役は空間ではなく住み手です。住み手のパーソナリティを表現できるアートを取り入れ、自分らしい住まいを実現していただければうれしいです。」